感情論
『一緒に来るかい―――?』鼻をつく焦げた臭い。
跡形もなく破壊されたあの場所。
夕日を背に笑う貴方だけが、切り取られたように酷く目についていた。
差し出された手を取ったあの時から、私には"ひとり"ではなくなった。
「・・・・少佐、」
「っと、どうしたんだい?」
瞬間移動で少佐の膝の上に現れた私を、少佐の驚いた目が捕らえる。
それも一瞬のことだけで、「部屋に入る時はドアから。あと、入る前に名乗らないとダメだよ。」と読みかけの本を傍に置いて苦笑いしたけど。
そのままギュッと抱き着いたら抱きしめ返してくれた。
少佐の、匂いがする。
「・・・女の子は簡単に男の膝に乗ったりとか、抱きついたりしたらダメって言っただろ?」
「・・・・・・ごめん、なさい。」
そう言えば少佐は「仕方ないな、」って私の頭を優しく撫でてくれる。
少佐にこうしてもらうと、胸の奥が暖かくなる。
「それはねぇ、「好き」って気持ちだよ。」
「すき?」
「「安心する」にも似てるかな・・・、近くにいると胸が暖かくなる気持ちだよ。」
「好き」・・・これが「好き」なんだ。
宇津見さんに借りた本にも書いてあったやつ。
「そう。もう一度言ってごらん名前。」
「好き。」
「そう。」
たくさん言ったら少佐が笑顔になる。
「笑顔」は「嬉しい」時にするものだって、前に言ってたから、少佐は今「嬉しい」んだきっと。
「嬉しい」のは「良いこと」だって、少佐が言ってたし、少佐が笑うのは「好き」。
「少佐!好きです!」
「うん、知ってる。」
「好き!好き!」
「・・・・・・何をしてるんですか。」
部屋の入り口に立っている真木さん。
少佐が小さく舌打ちをした。
舌打ちは、「怒って」いる時にするやつだけど、少佐はどうして「怒った」のかな。
「あぁ、名前は気にしなくていいよ。別に怒っているわけじゃない。」
少佐の手が私の頭の上に乗せられる。
何度されてもくすぐったくて慣れない。
「・・・・はあ。」
「真木さん?」
「ため息」をする時は「気分が良くない」時。
真木さんいつも「ため息」ばかりだから、真木さんはいつも「気分が良くない」のかな。
真木さんの「笑顔」見たことない。
少佐と同じことしたら、「笑顔」になるかな?
「真木さん!真木さん!」
「なんだ。」
「好き!」
「!?」
「なっ!?」
「真木さん好き!好き好き!」
「!!!」
あれ、真木さんの顔が真っ赤になってる。
顔が赤いのは熱の時だよね?
大変だ!
「真木さん、熱あるんじゃ・・・「なんでもないっ!!」
おでこに触って熱測ろうとしたら、真木さんが猛スピードで部屋から出ていった。
やっぱり体調悪かったのかな。
「ぶふっ!はははは!!」
「少佐?」
「真木のやつ・・・っ!!ははははははっ!!」
少佐が「笑ってる」。
「涙」が出てるけど、「笑ってる」。
・・・やっぱり感情ってよくわからない。
「あぁ、後名前、僕以外に簡単に「好き」って言ったらダメだからね。」
「?はい。」
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3周年のリクエストです
みちる様より
「常識や情緒を教育されていない研究所にいた高超度エスパーと少佐夢」でした!
リクエストありがとうございました!