僕の全て




戦時、「そのときの僕」の世界はとても狭くて。

目に見える物だけが世界で、全てだった。













「京介くーん?きょーすけくーん?」




壁に反響して自分の声が戻ってきます。

いつもなら不二子お姉様か京介くんが居るからお屋敷がこんなに静かなはずはないのですが。




「居ないのでしょうか・・・、透視たら見つかるかもしれません。」




適当な所で大丈夫だと思います。
この壁でも多分。




「お仕事、でしょうか。」




不二子お姉様も居ないみたいだから、恐らくそうなのでしょう。

お屋敷からは気配が感じませんでした。
思念波も感じません。




「そういえば今日は、良い空ですね。」




窓から見える空。
雲など一つも無く、澄み渡っています。

京介くんは今頃どこか、この空の延長線上で不二子お姉様と飛んでいるのでしょうか。

名前には、念動力というものがないのでお二人が羨ましいです。




「早く帰ってきたらいいのに、」

「名前ーっ!!」

「!京介くんっ!」




背後から響いた声に、私は思いっきり振り返りました。

途端にぎゅうと首がきつくなります。

息の乱れた京介くん。
密着しているので通常よりも速い鼓動が聞こえます。




「・・・お帰りなさい、京介くん。」

「・・・・ただいま、名前。」




京介くんの声に、私の心臓がひとわき大きく跳ね上がりました。

ほわほわと体中を巡るこの気持ちはなんでしょう。




「ねぇ、名前。」

「はい。」

「空を飛ばないか?」




名前の首に回していた腕をほどきました。

そして京介くんは綺麗に笑ってから、側にあった窓へ掌をかざします。

途端に勢いよく開いた窓へと京介くんは身を乗り出しました。

しっかりと名前の手を握りしめて。




「さぁ、」

「あ、!」




突風が名前を撫でてゆきました。

目の前に広がるのは、青く。
広く澄み渡る空。




「す、ごい・・・・!!」

「・・・・名前は念動力が使えないだろう?だから、僕が空を飛ぶことに慣れたら一緒に飛ぼうと思ってたんだ。」




嬉しそうに笑う京介くん。

よくわかりませんが恥ずかしくなって、顔を下へ向けました。

足元には支えがありませんが、体が下へと引っ張られる感覚はありません。

おそらく京介くんのお陰。

それでも少しだけ恐くなって京介くんにしがみつきました。




「・・・京介くん、」

「なんだい?」

「ありがとう」




真っ直ぐ目を見て名前は京介くんに言いました。

この胸の中にある暖かく大きなものが伝わるように。

京介くんは、少しだけ目を見開き顔を赤らめてから、ぽつりと零しました。




「ずっとずっと君と一緒に飛びたかったんだ。」

「・・・うん、これからも、何回かお願いしていい?」

「もちろんだよ。」




照れているように笑う京介くん。

ずっとずっと、名前は貴方の側に居たいんです。





『愛してるよ』


『愛してます』





今だけは、ただこの暖かさに酔いしれていたいのです。






――――――――――――――――



以上みちる様のリクエストでした!


きっと少年の頃の少佐は純情で、
ブライドも素直な子なんじゃないかなと。

まさに青春という感じではないのでしょうか。

全然甘くないのはやっぱり
二人だからということで。←


それではこれからも
マリオネットと失った花嫁を
よろしくお願い致します。

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