夏合宿編4
オレの機嫌は朝から悪かった。
まさか黒子と火神に会うことになると思わなかった。しかも、同じところに泊まっているときた。これだけでもオレの気分を損ねるには十分であったが、今回はそれだけではない。あの二人と一緒に、ここにいるはずのないしずくがいたのだ。(しかも、エプロン姿で)頻繁にしずくと連絡をとるようにしていたが、合宿の手伝いをするなんてことは一言も聞いていなかった。とにかく今のオレはいらいらしていた。


***


「今日から体育館練習は予定変更で、秀徳高校と合同練習よ!」

リコ先輩の一言に誠凛、秀徳両校の部員は驚いた表情をするしかなかった。もちろんわたしも、まさかのことに驚いている。

『(あ。でも、緑間くんがバスケしてる姿を近くで見れるのは、ひさびさかもしれない)』

しかし、予定が変更されてもわたしのやるべき仕事は変わらない。少しでも彼がプレーする姿が見れたらいいなと思いながら、体育館の入り口を目指していると秀徳の監督さん(以前、何度かお話ししたことがあった)に呼び止められた。少し話をしたあと、分かりましたと返事をしてわたしはそっと体育館をあとにした。


***


「いいなー、誠凛。オレもしずくちゃんからドリンク渡してもらいたい。真ちゃんもそう思うだろ」
「高尾、お前はオレを怒らせたいのか」

こいつは更にオレの機嫌を悪くさせたいらしい。
何が面白くて自分の恋人が敵チームの手伝いをしている姿を見なければいけないのだよ。
ちらっとしずくのほうを見れば、忙しいそうに一人一人にあの可愛らしい笑顔でドリンクやらタオルやらを渡している。何を思ったのか先輩たちは、オレに向かって哀れみの声をかける始末だ。中学校の頃、何度が桃井に頼まれてしずくが手伝いをしたことがあった。あの時はしずくが同じベンチにいてくれたことがたまらなく嬉しかったのに、今ではすべてが逆だ。学校が違うことをこれほど後悔したことはない。思わずため息をついていると、ふと差し出されたタオルとドリンク。礼を言ってそれらを受け取る。

『緑間くん、なにか悩み事?』
「あぁ、少しな‥ってしずく!?」
『うん。わたしだよ』
「なんでこっちにいるのだよ!?」
『秀徳の監督さんに頼まれたんだよ。合同練習の間は、わたしが秀徳さんの分もドリンクとかタオルの管理をさせてもらうことになったの』

少し恥ずかしそうに言う姿は、中学校の頃の彼女と被る部分もあり、懐かしかった。そして、しずくの笑った顔を見てさっきまでのモヤモヤとした感情がいつの間にか消えていた。後ろで高尾がニヤニヤしていたしていたのが気に食わなかったが、今回は見逃してやろう。


を1番綺麗に笑わせることができるのは僕だけ


「よかったじゃん、真ちゃん」
「あぁ」
「それにしてもさっきの真ちゃんの驚いた顔は傑作だったぜ。あと、にやけた顔も」
「おい、高尾。ちょっと来るのだよ」
「ちょっ!真ちゃん、たんまってぎゃぁぁあ」
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