夏合宿編7
「誠凛は、明日で合宿終わりか」
『うん。なんだか寂しいな』
隣に並ぶしずくが困ったように笑う。それを見て、繋いでいる左手に少し力を込めてみれば小さな手で握り返された。たしかに、最初はしずくがいたことに驚いたりもしたが、今となってはここに来てからの時間はかなり貴重なものだった。自分から誘っておいて、話す話題がなかなか浮かばない。黄瀬や高尾あたりならぽんぽんといろいろな話が出てくるのだろなと頭の中で思う。
『緑間くん、緑間くん!海だよ』
そう言って駆け出そうとする彼女。自分の手から小さな彼女の手がするりと離れそうになり、彼女がまた自分の手の届かない遠くに行ってしまうのではないか、そんな考えが過ぎり、とっさにその手を掴んで自分に引き寄せた。突然のことに、しずくは腕の中から不思議そうにオレを見上げてくる。
「しばらく‥このままでいてほしいのだよ」
オレの腕の中にすっぽりと収まった小さな身体を抱きしめる。暖かな体温が伝わってきて、しずくがここにいるのだと実感できた。
『緑間くん、苦しいよ』
「すまないのだよ」
名残惜しいがしぶしぶ彼女を抱きしめる力を緩めると、しずくは目を閉じるように言った。理由を聞いても同じことしか言わないので諦めて目を閉じる。
『ちゃんと目閉じた?』
「あぁ、」
閉じたのだよ、そう言おうとしたが言うことが出来なかった。口元に感じたのは確かに暖かな温度。まさかの事に彼女の名前を呼ぶことしかできない。
「しずく‥?」
『大好きだよ、緑間くん』
いたずらが成功した子供のように笑う彼女が可愛いくて、仕返しとばかりに今度はオレがしずくの唇を奪ってやった。やっぱりしずくには、オレの手の届く範囲にいてほしいのだよ。
愛しい君に、口づけを
『(緑間くんの唇奪っちゃった!リコ先輩、ミッションクリアです)』
「(まさかしずくに先越されるとは)」
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