昔話1
放課後。
写真部の僕は、外から聴こえてくる野球部やテニス部の声。そしてどこかから聴こえてくる楽器の音を聴きながら、昼間とは少し違った雰囲気を持つ校舎の中を歩きまわっていた。今度のコンクールに応募する写真はどうしようか。青春がテーマになっているが、僕にしてみれば何を撮ればいいのかまったくアイディアが浮かばない。写真部の部員が各々、撮影に向かった中で僕はとにかく何を撮ればいいかもわからずに学校の中をふらふらしていた。階段でも撮ろうか。それとも、吹奏楽部あたりの練習風景をこっそり撮らせてもらおうか。そんなことを考えながら、教室をひとつひとつ覗きながらゆっくり歩いているとある教室の前で足が止まった。

夕方の日の光が差し込む教室にいたのは、女の子と男の子のふたり。あ、男の子のほうは緑間くんか。彼と僕は同じクラスだから彼のことは知っている。話したことはあまりないけど。女の子が一生懸命に何かを書いていて、緑間くんが時々何かを指摘している様子から勉強をしているようだ。

『せっかくのオフなのにごめんね』
「構わないのだよ。一緒にいれるだけで十分だ」

女の子が書くのをやめて申し訳なさそうに謝る。

そんな女の子を緑間くんは教室では見たことがない優しい目で見ていた。廊下から見ていた僕は、会話のすべてを聞き取ることは出来ない。けれども、ふたりの雰囲気から彼らがただのお友達でないことくらいは僕でもわかった。街中にいる甘々カップルの出すような嫌悪感などこの空間にはなく、むしろ居心地がよかった。
気がつけば僕は、無意識のうちに手に持っていたカメラのシャッターを切っていた。シャッターの音に気がついてしまったかだろうかと不安に思ったが、吹奏楽部やテニス部、野球部のおかげでふたりには気がつかれなかったらしい。ほっと胸を撫で下ろし、今撮った写真を確認しようと画面を見る。画面の中には夕陽が差し込む幻想的な教室で女の子が可愛らしい笑顔で緑間くんを見上げ、緑間くんが優しい眼差しで彼女を見ている。自分にしてはなかなかいい写真が撮れた。思わず笑みがこぼれる。この写真をコンクールに出すのはなんだかもったいないな。
教室の中では、ふたりが帰る仕度を始めていた。僕は彼らに気がつかれないようにそっとその場を離れる。今日はなんだかこれ以上いい写真が撮れる気がしない。そのまま部室に戻り、しばらく先程の写真を眺めることにした。


せのお裾分け


「ただいまって、わあ!すごい綺麗なの撮ったのね」
「部長、おかえりなさい。ですよね!自分でもなかなかいいのが撮れたと思ったんですよ」
「これをコンクールに出すの?」
「迷っているんです。それに、ふたりには何も言わないで撮ってしまったので…」
「バスケ部の緑間くんとしずくちゃんでしょ?わたしが赤司くんにお願いしてみるから大丈夫よ」
「部長、赤司くんと仲良いんですか?」
「ん?あー。まぁね」
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