昔話2
雲ひとつない爽やかなお天気の今日。
わたしたちは海に来ていた。
「しずくちゃん、はやく行こうよ」
『むむむ、無理』
女子更衣室で水着に着替えたわたしとさつきちゃん。しかし、わたしはそこから出ようとしなかった。というのも、あんなにセクシーで可愛いさつきちゃんの水着姿を見たあとに自分の姿を見たら、自分の体が貧相すぎてみんなの所にいく自信を完全に失ったからだ。
「大丈夫だよ!しずくちゃんの水着姿、可愛いもん」
『本当に無理だよ。恥ずかしすぎて死んじゃう』
「向こうでみどりんも待ってるよ?」
『尚更行けないよ。緑間くんにこんな姿見せられない』
本気で更衣室の入り口から離れようとしないわたしを見て、さつきちゃんはやれやれとため息をつく。なんでこんな大人っぽい水着を買っちゃったんだろうと激しく後悔していると、遠くから聞き覚えのある声がたくさん聞こえた。
そっと見てみると、カラフルな色の集団がこちらに向かって来ていた。そして、その集団の先頭をさつきちゃんが歩いているではないか。
「(さつきちゃん、なんてことを!)」
まさか、みんなを連れてきてしまうとは。わたしは見つからないように、その場にしゃがんで体育座りをして小さくなる。どどど、どうしよう。慌てているとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。
「藍原、」
『は、はい!』
この声の主は赤司くんだ。赤司くんに手間をかけさせてしまっまていることに気がついて、わたしは真っ青になる。
「頭のいい君なら、どう行動すべきか分かっているだろう?」
『も、もちろん!』
勢い良く立ち上がり、恐る恐るみんなの前に出て行く。
あー、もう泣きそうだ。
みんなからの反応が欲しかったわけではないのだけど、誰も反応してくれなくて本当に泣きたくなる。どうせさつきちゃんみたいにスタイル良くないですよ、なんて不貞腐れながらゆっくりと顔を挙げようとしたとき、突然誰かに抱きしめられた。
「これを、着るのだよ」
『へ?』
わたしを抱きしめたのはもちろん緑間くん。彼はわたしの肩にかなり大きめのパーカーを掛けた。そんなにわたしの水着姿は酷かったのだろうか。不安になって緑間くんの顔を見ようとするけれど、頭を抑えられてそれは叶わない。
「誰にも、」
わたしの首元に顔を埋めながら緑間くんが小さな声で話す。
「誰にもしずくの水着姿を見せたくないのだよ」
そう言ってわたしから離れた緑間くんの顔は真っ赤で、思わず笑ってしまった。
真夏の蜃気楼
『緑間くん、顔が赤いよ?』
「う、うるさいのだよ!」
「藍原っちと緑間っち!公共の場でラブラブしないでくださいッスよ」
「そう言う黄瀬くんは、後ろのファンの人たちをどうにかしてください」
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