戀という字を分析すれば いとしいとしと言う心 1
懐かしい夢を見た。
彼女がまだ小さい頃の夢を。僕の手を握って少し前を歩く彼女が、あの時僕に何かを言っていた気がするのだけど思い出せない。他愛もない会話だったような気もするし、大切な話だったような気もする。
なんとなく、部屋の外に目を向ければ日が昇り始めたのか少しずつ明るくなってきていた。
「後で本人に聞いてみるか」
そんな言葉を合図に、僕はゆっくりと布団から起き上がった。
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AM7:35
本丸中に悲鳴が響き渡る。それから少しして、ドスドスという音を立てて近づいてくる足音が聞こえたかと思えば、スパーンと勢いよく障子が開けられた。
『ひどい!歌仙ってば、また起こしてくれなかったでしょ!』
「何度も起こしたさ。君が『あと5分したら起きる』と言ったから、僕はその言葉を信用したまでだよ。それより早く学校へ行く準備をしたらどうだい?」
『嘘!?もうこんな時間なの!?』
はやく食べなきゃ、と言って箸を手に取る彼女。いつから彼女はこんなに食い意地を張るようになってしまったのか。心の中でひとつ、ため息をつきながら彼女の後ろに腰を下ろし、艶やかな黒髪に触れる。
「今日は昨日と同じでいいかい?」
『お願します』
慣れとは恐ろしいものだ。昔は見るも無残な出来だったのに、今となっては数分と掛からず彼女の髪を結えるようになったのだから。
「出来たよ」
我ながら今日も完璧な仕上がりだ。
『ありがとう、歌仙』
そう言って振り返る彼女と、今日夢で見た小さい頃の彼女の姿が重なる。人の成長はあっという間。まさにその通りだ。この前までよちよち歩きをしていたかと思っていたのに、ふと気がつけばこんなに成長していたのだから。
『いってきます!』
新しい制服に身を包み、桜の花弁が舞う中で手を振る君。
近くにいた刀剣達は「いってらっしゃい」と彼女を見送っている。
時々、思うことがある。
このまま時が止まってしまえばいい、と。この穏やかな日々が続けばいい、と。このことを彼女の母親である主に話した際に、笑われたのはつい最近の事だ。もしかしたら、僕は彼女のそばに長く居すぎたのかもしれない。彼女に対するこの気持ちは、家族への愛なんだ。
だから、これはきっと戀ではない。
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