後日談5
「高尾、今日は緑間と一緒じゃないのか?」
「なんか今日は先に行ってろって言われたんっすよ」
「珍しいな」
「たしか電話で、ラッキーアイテムがなんとかなんとかって言ってました」
「なんだそりゃ」
ちゃんと聞いておけよ、と宮地サンが呆れたように言う。部室の時計を見れば、あと少しで練習を開始する時間だ。真ちゃん、大丈夫かなーなんて思いながらケータイを確認しようとしたとき、部室の扉が開いた。そっちを見ればいつもと変わらぬ真ちゃんの姿。
「真ちゃん、おは...」
おはよーと続けるはずの言葉が驚きのあまりに出てこなかった。それは部室にいた大坪さん、木村さん、宮地サンも同じだったらしい。目の前の状況に誰もが驚いた。
「しずくちゃん!?」
『お、おはようございます?』
何故か真ちゃんがしずくちゃんをお姫様抱っこしていた。どこか満足そうな顔している真ちゃんに対して、しずくちゃんは何が何だかわからないといった顔をしている。
「真ちゃん、しずくちゃん連れてきてどうしたの」
「今日のラッキーパーソンなのだよ」
「は?」
「ラッキーアイテムじゃないか?」
大坪さんが尋ねる。そう、それが気になったんっすよ!さすが大坪さんだと心の中で拍手を送った。真ちゃんの話によると、どうやら今日はラッキーアイテムではなくラッキーパーソンが発表されたらしい。おは朝ってそんな日もあるのか。
「ねぇ、真ちゃん。ベンチにしずくちゃん連れ込んじゃう感じ?」
『へっ!?真太郎くん、冗談だよね?』
「そのつもりだが」
目を見開いて驚くしずくちゃん。本当に何の説明もなしに連れてこられたのか。
『帰る!』
「させないのだよ」
『他校のわたしがベンチにいるのは変だよ』
「そんなことは気にしなくていいのだよ」
帰ろうとするしずくちゃんを真ちゃんが後ろから抱きしめるかたちで阻止する。本人たちは必死に言い争いをしているのだろうが、俺達にはいちゃついているようにしか見えない。羨ましいやら、腹が立つやら。現に、キレかけている宮地サンが木村さんに軽トラを要請している。ため息をつきながら、2人の言い争いの行方を暖かく見守る。
しずくちゃんが真ちゃんに負けて、誠凛の制服の上に秀徳ジャージを着たのはそれからしばらくしてからのことだった。
制服のマネキン
「しずくちゃん、秀徳ジャージ似合うね」
『真太郎くんのだからかなり大きいけどね』
「しずくが似合わないはずがないのだよ」
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