後日談6
練習試合の帰り道。
一緒に帰っていた真ちゃんが突然立ち止まった。
「どしたの、真ちゃん」
「おい、高尾。あれは何だ」
「は?あー。しずくちゃんと誠凛バスケ部の1年の皆さん、みたいな?」
真ちゃんと俺の視線の先には、マジバでしずくちゃんを囲んで何かしている様子の誠凛の1年生の姿。恐る恐る真ちゃんのほうを見れば分かりやすいくらい不機嫌そうな顔をしていた。頼むから俺に八つ当たりなんかしないでくれよ、なんて思いながら店のほうに視線を戻す。あいつら、本当に何やってるんだ?しずくちゃんを囲んで何をしているのか気になって、俺と真ちゃんは見つからないようにしゃがんだり、背伸びしたりと体勢を変えたりしながら様子を見ようとした。よく考えると、俺達ってすごい怪しい2人組だな。ようやく、いいポジションを見つけて観察開始。
「あいつら、本気で何してんだ?」
真ん中に座るしずくちゃんの横で、黒子がしずくちゃんの髪を結んでいて、正面の火神がポテトをしずくちゃんが食べ終わるのを見計らいながら食べさせ、(あー、なんて名前だっけ。大会のパンフで見たんだけどな。少年Fでいっか)少年Fがしずくちゃんの手を取って何かしていた。残りの2人はそれを興味深そうにじっと見ている。というよりも見守っている。時々、会話が俺たちのところにまで聞こえてきた。
「おい、藍原。お前もっと食べないとぶっ倒れるぞ」
『火神くん、もう無理!お腹いっぱい』
「藍原さん、動かないでください。いい感じで編み込みできそうなので」
『あ、ごめんね。というか、みんな急にどうしたの?』
なぜこんなことになっているのか全く理解できていない様子のしずくちゃん。あいつら、随分楽しそうにしてんな。それよりも、しずくちゃんはなんであんなにおめかしさせられてんだ?うーん、とひとりで考えているとずっと隣で無言だった真ちゃんがふらっ動き出した。
「ちょっ、真ちゃん!?」
「もう我慢ならないのだよ」
止めることも出来ず、俺は腕を伸ばしたまま真ちゃんの後ろ姿を見送った。まぁ、真ちゃんのことだから喧嘩にはならないから大丈夫か。
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しばらく店の外で待ってると、しずくちゃんを引っ張って真ちゃんが出てきた。
『し、真太郎くん!』
しずくちゃんは何が何やら分からないといった様子で今にも泣き出しそうだ。真ちゃんは前を歩いているから気がついていないんだろうな。急いで俺もふたりを追いかけて、しずくちゃんの隣を歩く。しずくちゃんが俺に気がついたとき、やっぱり泣きそうな顔をしていた。
『高尾くん。わたし、真太郎くんに何かしちゃったのかな』
「いや、しずくちゃんは何も悪くないと思うぜ。つーか、真ちゃんが勝手に嫉妬しただけだから」
ねー、真ちゃん!って大声で呼びかけたら真っ赤な顔をした真ちゃんが振り返った。え、まさか自分が嫉妬してたのに今更気がついた感じ?やべ、今の真ちゃんの顔おもしろ!写メ撮りてーわ。
「俺がいつ嫉妬したのだよ」
「嫌だったんじゃないの?しずくちゃんがあんな風に囲まれてんの」
素直になれよー、と言いながら後ろ手で起動しておいたケータイのカメラ機能のシャッターをきる。
お、なかなかいい感じで撮れてんな。宮地さんと木村さんに送るか。メール送信の準備をしてると、突然、俺の上に影がかかった。ギギギという効果音が付きそうな感じで顔をあげると視線の先には真ちゃん。何故か眼鏡が反射していて、恐ろしい雰囲気を醸し出している。
「あはは、真ちゃん落ち着けって。な?」
想定外の威圧感にゆっくり一歩ずつあとずさる。真ちゃんからの恐ろしい仕返しを思い出した俺は、自分の身を守るために今までにないくらい全力で走って逃げた。「高尾ぉぉぉぉぉぉ!」と真ちゃんが叫んでいるのが聞こえたけど追いかけてくる気配はなかった。たぶんしずくちゃんのおかげだろう。
「てか、真ちゃんがしずくちゃんになんて説明するか気になるんだけど」
自分が嫉妬したことをあの真ちゃんが素直に言うとは思えない。明日、質問攻めにしたときの真ちゃんの反応を想像しながら俺は久々にひとりでのんびり家に帰った。
日常ラバーズ
『真太郎くん、嫉妬してくれたの?』
「しずくが他の男に触られるのは嫌だっただけなのだよ」
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