JGプラスまとめ
『怖い夢を見たんです。波多野さんがある日突然いなくなってしまう夢です』
「それで眠れなくなって俺のところまで来たってことね」
『はい。波多野さん、』
「何?」
『ぎゅってして下さい。私がさっきの夢を忘れるくらい』
「…今回だけ特別だから」
『ふふ。波多野さん、大好きです』
**********************
『い、意外です』
「何が?」
『波多野さんが思ったよりも安全運転だったので』
「はぁ?俺、お前の中でどんな運転する奴だと思われてたわけ?」
『す…スピード狂だと思ってました』
「まぁ、時と場合によっては飛ばすけど。助手席にあんたを乗せてる時くらいは安全運転するし」
**********************
「夜ご飯何?」
『今晩は肉じゃがですよ』
「味、大丈夫?」
『だ、大丈夫です!福本さんがレシピを置いていって下さったので』
「へー。味見していい?」
『いいですけど…特別ですよ波多野さん』
「あーん」
『へ!?』
「はやく」
『は、はい!』
「…うん。味は大丈夫そうだね。ご馳走様」
**********************
『雨…』
窓の外を見ればぽつぽつと雨が降り出していた
『傘、持って行ったかしら?』
夜の街に出掛けて行った彼の後ろ姿を思い浮かべる
『あはは…私が心配する必要ないか』
きっと彼は今夜は帰ってこない
『田崎さん、』
今夜は厚い雲で月が見えないことだし、雨に紛れてひとり泣こうか
**********************
『起こしちゃいましたか?』
「…あれ。俺も寝てた?」
『はい。エマちゃんと一緒にぐっすりでした』
「このままもう一回寝ようかな」
『ふふ。たまにはいいんじゃないですか』
「…もし、よかったら」
『?』
「俺とエマと一緒にお昼寝なんていかがですか?お嬢さん」
『よ、よろこんで』
三好「まるで親子のようですね」
波多野「写真でも撮っとく?あとで何かの役に立つかもしれないし」
実井「神永さん。写真撮れますよね?お願いします」
**********************
『三好さんの手は冷たいですね』
「そうですか?普通だと思いますけど」
『あ、三好さんの方が少しだけ大きい』
「人の話を聞いてます?」
『聞いてますよ。…三好さん、』
「何ですか?」
『このまま朝が来なければいいのにと思うのは私だけですか?』
「…今日だけは、貴女と同意見です」
**********************
「違う本でも持ってくるか」
熱を出して寝ている彼女の髪をそっと撫でて、ベットから離れようとすれば服を何かに引っ張られるような感覚
『波多野さん…行っちゃ嫌、です』
「…はぁ。分かったよ。ちゃんとここに居てやるから」
『本当ですか?』
「本当。だから早く治しなよ」
**********************
田崎パパと子供の会話
「パパ、何作ってるの?」
「ん?ママが元気になるものだよ」
「ママにはやく元気になってほしいから僕も作りたい!」
「しーっ。大きい声出すとママが起きちゃう」
「あ、ごめんなさい」
「ママに気づかれないようにこっそり作ろうね」
「うん!」
**********************
「また怖い夢?」
『はい…朝、起きたら波多野さんが隣にいない夢でした』
「ベッドから落ちてたのかもね」
『波多野さんってよく落ちるんですか?』
「落ちたことはない…と思う」
『ふふ。波多野さん、』
「何?」
『手を握ってもいいですか?そうすれば眠れる気がします』
「はいはい」
**********************
「いつまで木の上にいるつもりですか」
『だって…』
「だってじゃありません。ほら、受け止めてあげますから」
『絶対無理です。三好さんが折れる』
「折れません」
『あー、もう!』
勇気を出して飛び降りて、恐る恐る顔を上げれば
「ほらね。ちゃんと受け止めたでしょう?」と微笑む彼
**********************
「いつまで泣いているんですか」
『泣いてません』
「それなら瞳から溢れるこれは何ですか?」
『これは…三好さんのことが大好きすぎて、好きが溢れているんです』
「…はぁ。本当意地っ張りですね」
『う、煩いです』
「ここには僕と貴女しかいません。気が済むまで泣いていいんですよ」
**********************
運転する彼の横顔をずっと見ていたら、突然彼と目が合った
「なに?」
『え、いや…何でもない、です』
「すごく気になるんだけど。言って、というか言え」
『あ…はい。真面目に運転する波多野さんがかっこいいなって思いまして、わっ!?波多野さん?』
「お前な…あとで覚えてろよ」
**********************
『じ、実井さん!』
「何ですか?」
『あの…できれば見えないところだけにして欲しいです』
「何故です?」
『…え?』
「見えるところにキスマークをつけなければ意味がないじゃないですか。これは印です。貴女が僕のものだという大切な印なので、その御要望にはお答えできません」
**********************
彼の帰りが待ち遠しくて玄関で待っていると外から聞き慣れた足音が。
『おかえりなさい!ヨハン』
扉が開くと同時に抱きつけば驚いた表情の彼
『びっくりした?』
「び、びっくりしました。あ…こんなに頬を冷たくして。まさかずっとここに居たんですか?」
『うん。早く貴方に会いたくて』
**********************
普段は私の方から彼に抱きつくのだけど、今日は珍しく彼の方から抱きついてきた
『ヨハン?何かありました?』
「今日は大佐にいつも以上にたくさん怒られてへこみました」
『そんな日もありますよ』
「…我儘を言ってもいいですか?」
『もちろん』
「もう少しこのままでいさせて下さい」
**********************
ダンスパーティー会場で少しの間とはいえ1人にさせてしまった彼女の元へ急いで戻れば、隅にしゃがみ込んで拗ねていた
「ごめん。今戻った」
『遅いです。私が踊れる曲、終わっちゃったじゃないですか』
「他の奴と踊っててよかったのに」
『波多野さんと一緒じゃないと意味がないです』
**********************
『…ご馳走様でした』
「あまり食べていないようだが、体調が優れないのか?」
『いや、違うんです。実は福本さんの美味しいお料理を毎日頂いていたら体重が増えてしまいまして』
「そういう事か」
『はい』
「俺は、」
『?』
「美味そうに食べてくれるお前の方が好きだが?」
『食べます』
**********************
『本当に、ごめんなさい…』
「僕は大丈夫ですよ。今日の晩御飯のことは気にしないで下さい。ね?」
『うぅ…ヨハン、ごめんなさい。美味しいご飯食べさせてあげたかっただけなの』
「ちゃんと分かってますよ」
帰宅早々抱きついてきた奥様(又は恋人)を慰めるバウアー中尉
**********************
2人で映画を見に行った時に暗闇に紛れてキスしてくるのが田崎さん。
映画じゃなくて彼女さんの方を頬杖つきながらずっと見てるのが甘利さん。
途中から恋人つなぎしてくるのが神永さん。
波多野さんも、映画から目を離さないけど彼女さんの手を探し出して恋人つなぎしてくれそうな気がする。
隣を見る度に何故か目が合うのが三好さん。
実井さんは目が合うと「どうかしました?」って首を傾げて上目遣いで聞いてきそう。
福本さんは1度目が合うと何故か目を反らせなくて映画が終わるまで見つめ合ってそう。
小田切さんは最初から最後まで真面目に映画を見てる。
**********************
『今、この手と手で掴めるものが大切なもの2つだけだとします。三好さんは何を掴みますか?』
「そうですね。ひとつは決まっているんですけど」
『何ですか?』
「貴女の手、ですよ。あぁ、そうだ。どうせなら貴女の両手を掴めばいい。そうすれば貴女は僕から逃げられないでしょう?」
**********************
「体調はどうですか?」
『三好さんが側にいてくれるので元気です』
「嘘ばっかり。ほら、まだこんなに熱が高い。本当は辛いんじゃないですか?」
『えへへ。三好さんがいつもより優しい』
「一応、貴女は病人ですからね」
『たくさん甘えてもいいですか?』
「今だけですよ」
**********************
また1人また1人と知らぬ間に任務へと旅立ってしまった為に、賑わっていたこの部屋も静かになってしまった
『波多野さん』
「何?」
『波多野さんがここを離れる時は教えて下さいね。お見送りくらいはしたいので』
「嫌」
『え?』
「 一緒に連れて行きそうになるから絶対に教えない」
**********************
「わっ、三好さん!待って下さい」
「…はぁ。貴女は何歳ですか…ほら、手を繋ぎますよ」
『いいんですか?』
「構いませんよ。貴女がこの祭の人混みの中で迷子になられると困るので」
『ありがとうございます。ふふ、何だか恋仲みたいですね』
「みたいじゃなくて、恋仲ですからね」
**********************
『…ヨハンの馬鹿。タイミング悪すぎだよ。どうして今日に限って早く帰ってきちゃうかな。本当は誕生日ケーキも焼いて驚かせようと思ってたのに』
「すみません。貴女に早く逢いたくて頑張りすぎました」
『そんなこと言われたら許すしかないじゃない』
**********************
彼が任務へ旅立ってから数ヶ月。食材を抱えていつもの道を帰っていると、どこか彼に似た人が前方からやって来た
『実井、さん?』
「え?」
すれ違いざまに感じた彼の香りに思わず相手の服の裾を掴めば、相手は困ったような表情
「あの?僕は森島なのですが」
『す、すみませんでした 』
**********************
『お魚はもう少し焼いて…後は副菜を』
「ねぇ。鍋、吹きこぼれてるけど?」
『わぁ、大変!』
「魚も焦げてきてるかもね」
『え?…はぁ。焦げちゃった。もう!波多野さん!見てないで手伝って下さいよ』
「やだ。あんたがそうやってバタバタしてるのを見てる時が幸せなんだよね」
**********************
『実井さん?』
私の両手首を掴んで壁に押し付けている張本人に声を掛けると、彼はゆっくり顔を上げた
「貴女は僕にこんな想いをさせて…どうしたいんですか?」
『え?』
「貴女が他の男と話したり笑いかけるだけですごくイライラするんです」
『それって』
「責任取ってくれますよね?」
**********************
『もう!上着を忘れるなんて信じられない!』
「ごめんごめん。じゃあ、行ってきます」
『行ってらっしゃい』
「…あ、」
玄関を出てすぐ、何かを思い出したように急いで戻ってくる神永さん
『忘れ物ですか?』
「うん。すごく大切な忘れ物」
そう言って彼は私の額にそっと唇を落とした
**********************
窓辺に座って星空を見上げていた彼女がふと呟いた
『月は好きだけど、やっぱり太陽は嫌いです』
「何故です?」
『月は今夜みたいに三好さんを私の所に連れて来てくれるでしょう?それなのに太陽は私から三好さんを奪っていくから嫌いです』
「貴女のそういう考えは嫌いじゃないですよ」
**********************
これも彼の仕事だと頭では分かっているのだけど、彼が私以外の女の子に笑いかける姿を見るだけでこんなに苦しくなるなんて思っていなかった
『早く帰って来ないと浮気してやるんだから』
「それは困るな」
『田崎さん!?お仕事は?』
「泣きそうな顔してたからそれどころじゃなくなった」
**********************
「…まだですか」
『もう少し、です』
「そんなに僕の背中にひっついて何が楽しいんですか」
『別に楽しくてくっついているわけじゃないです。なんというか…安心するんです。くっついた時に心臓の音が聞こえると、三好さんはここに居て、ちゃんと生きてるんだって実感できるから』
**********************
私の水着姿を見た途端。彼はあっという間に私に持っていたパーカーを着せ、ご丁寧にファスナーまで閉めてくれた
『あの…波多野さん?私には似合わなかったでしょうか?この水着』
「…似合ってた」
『え?』
「似合ってた。だから、誰にも見せたくてこうしてんの。少しは察しろ馬鹿」
**********************
カーテンの隙間から溢れる光で目が覚めて、いつも癖で隣を見るけれどそこに貴方はいない。
『三好、おはよう』
貴方の温もりが、声が恋しくて何度も呟くけれど返事なんて返ってくるはずもなく。
私の呼吸も、
言葉も、
涙も、
全てが冷たいシーツへ吸い込まれていった。
**********************
冬の寒さで冷え切った彼女の手を引き寄せて口元で温めれば恥ずかしそうに笑う彼女
「こんなに冷たくなるまで外で待つなんて…貴女は馬鹿ですか?」
『仕方ないじゃないですか。はやく三好さんに会いたかったんですから』
額を合わせて微笑み合う僕達はちゃんと恋人に見えているだろうか
**********************
『…指輪してなかった』
「ごめん。昨日は仕事でどうしても外さないといけなくて」
『神永さんのお仕事の事は理解しているつもりです。でも、指輪がないと神永さんが何処かへ行ってしまうような気がして…って、なんでそんな嬉しそうな顔してるんですか』
「ん?愛されてるなって思って」
**********************
ラジオから流れてくる声で目が覚めて、美味しそうな匂いに誘われてキッチンに向かうとそこにはエプロン姿の彼
『…ヨハン?』
「おはようございます。今日も眠そうですね」
『うん。眠い』
「あ、立ったまま寝ないで下さい。今日は久しぶりにデートに出掛けるのでしょう?」
『うん』
**********************
私の両手首をシーツに押し付ける彼は今日も冷たい眼差しで私を見下ろす
『実井さん…家に帰して下さい』
「貴女はそればかりですね。では、帰りたいなら何故逃げないのですか?僕が扉に鍵を掛けていないのは知っているでしょう?」
『それは、』
「さぁ。今夜も2人で楽しみましょう?」
**********************
「なっ!?貴女は何をしているんですか!」
『へ?今日はいい天気だから外に洗濯物を干そうかな、と思って』
「貸して下さい。そんな重いものを持って、転んだりなんかしたらどうするんですか」
『ふふ、』
「どうして笑うんですか」
『だって。ヨハンってばあまりにも過保護なんだもの』
**********************
「パパを起こしてくる!」
そう意気込んで息子がキッチンを飛び出してから、かなり時間が経ったので様子を見に行けば仲良く寝ている2人の姿
『酷い人…この子が出掛けるのを楽しみにしていたのを知ってる癖に』
「起きているのに気がつくとは流石、俺の奥様」
『当たり前でしょう?』
**********************
きっと、彼とこうして出掛けられるのも最後。
私の手を握り、少し前を歩く彼の背中を見ながらそんなことを思う
「次は冬になったらまた、一緒に観に行きたいね」
『そうですね。きっと綺麗だと思います』
神永さんの嘘つき。次なんてないくせに。
貴方の言葉は時に甘く、時に残酷だ
**********************
「こっちの靴なんてどう?今日のワンピースに合うと思うんだけど」
『あの…神永さん』
「ん?」
『既にこんなに服を買って頂いたのでもうこれ以上は』
「気にしないで。俺が好きでやってる事だから」
『でも!』
「そんな顔しないで?好きな子を自分好みにしていくのって結構楽しいんだよ」
**********************
彼女が指でちぎった花びらが一枚、また一枚と風に乗って飛んでいく
「何してんの?」
『波多野さんが私の事をどう思っているか占ってます』
「本人に聞けば?ここにいるんだし」
『真正面から嫌いって言われたら流石の私でも落ち込みます』
「そんな事言うわけないじゃん」
『え?』
「あ、」
**********************
『あの…実は、ネックレスが上手く着けられなくて…お願いできますか?』
「構いませんよ。髪を上げておいてもらえますか?」
『あ、はい…ひゃっ!?じ、実井さん?今、何を』
「貴女の首筋から香水の香りがしたので噛み付いて欲しいのかと思いまして」
『そんなこと思ってません!』
**********************
『神永さんは突然いなくなったりしませんよね?』
ぎゅっと俺のシャツを握り、腕の中から見上げてくる彼女
「大丈夫。君を置いていなくなったりしないから」
髪をゆっくり撫でながらそう言うと、彼女は安心したように眠りについた。
ごめんね。君につく嘘は、これが最初で最後にするから
**********************
「ただいま戻りました」
『三好、さん?』
さっきまで手に持っていた洗濯カゴがガタンと音を立てて落ちたけれど、そんなことは気にしてられない
『本当に、三好さん?』
「えぇ。僕以外の誰に見えるんですか」
そう言って私の頭を撫でる彼から聞こえてくる心臓の音に、少し泣きたくなった
**********************
「ちゃんと戻ってきますよ。だから、そんな泣きそうな顔をしないで下さい」
私の頬を撫でる三好さんの手は、雪のように冷たい
「貴女なら、いい子で待っていられますよね?」
こんな時に困った表情をするなんて、彼は狡いと思う
『ちゃんといい子で待ってます。だから、』
貴方も私のところに必ず戻ってきて
**********************
『三好さん!この格好は如何です!?今回は結構自信あるんですけど、』
「60点。そんな格好で僕の隣を歩けるとでも?」
『うぅ…もう一度!もう一度だけチャンスを下さい』
「…はぁ。ご自由にどうぞ」
『はい!』
「…あの子の格好、普通に可愛かったと思うけど?厳しくない?」
**********************
かつて彼が使っていた机の引き出しを開ければ、そこには小さな箱と私宛の手紙がぽつんと置かれていた。恐る恐る箱を開けた後、急いで手紙に目を通す。
「三好さん…貴方っていう人は、」
本当に狡い人。
"僕は貴女を愛していました"だなんて。できることなら貴方から直接聞きたかった
**********************
「…0.9」
『っ、(ギクッ!!)』
「体重増えましたよね?」
『ふ、増えてないです』
「増えた」
『増えてません!』
「それなら、今すぐに体重計に乗れますよね?」
『三好さん、ごめんなさい!それだけは勘弁してください!』
「はぁ…僕の隣に居たいのなら、せいぜい頑張って下さいね」
**********************
『あ、あの!田崎さん!』
「ん?」
『荷物、私にも持たせて下さい。全部私の買い物なのに…田崎さんに持って頂くなんて申し訳ないです』
「なんだ、そんなことか。君は気にしなくていいんだよ。俺が好きでやってることだし」
『でも!』
「ほら、俺が荷物持ちしてると新婚みたいじゃない?」
『新婚!?』
**********************
台所入ってすぐ目に飛び込んで来たのは椅子の上に立って何かを取ろうとしている彼女の姿
『あ…お、おはようございます。甘利さん』
「おはよう。ところで君は今、何をしてたのかな?」
『あ、あはは』
「笑って誤魔化さない。全く…今は君ひとりの身体じゃないんだから心配させないでよ」
**********************
「「パパ、うるさい!」って言われた…うるさいって、」
『あー、よしよし。泣かないで下さい、神永さん。タイミングが悪かったんですよ』
「久しぶりの休みだから一緒に遊ぼうと思っただけなのに、」
『勉強が終わったら遊んであげて下さい。喜ぶと思いますよ』
「…そうする」
**********************
「君はここに来るまでに何人の男を魅了してきたのかな?」
突然の長く深いキスからやっと解放されたと思えば、すぐに耳元で囁かれる言葉
『あ、甘利さん?…な、何の事ですか』
「無自覚?それは厄介だなぁ」
私の紅い唇の上に乗せられた彼の指がゆっくりと移動する
「君に魅了されるのは僕だけで十分だよ」
離れていく彼の指には、昨日新しく買った口紅の色
「この口紅は没収。いいね?」
『あ、いつの間に…』
「返事は?」
『…はい』
私の返事を聞いた彼は満足そうに微笑んだ
大きな子供がここにひとり
**********************
「一曲だけでも」
『あ、その…』
初めて舞踏会に参加した私が、いくら断ってもダンスを申し込んでくる人の対処法なんて知るはずもなく。困っていると突然引き寄せられる肩
『波多野さん!』
「俺の妻に何か用でも?」
彼の言葉は効果抜群だったようで、男は真っ青な顔をして走り去った
**********************
差し入れに貰ったポッキーを咥えながらキーボードを叩いていると誰かに声を掛けられた。誰だこの忙しい時に。睨みつける勢いで振り返ると、突然目の前に現れた甘利さんの顔
『んな!?』
「あれ?遠回しにやって欲しいって言ってるのかと思ったんだけど違った?」
にやりと笑う確信犯
**********************
ひょんな事から小さな男の子と仲良くなった
「お姉ちゃんは結婚してるの?」
『ん?してないよ』
「じゃあ、大きくなったら僕と結婚してくれる?」
『そうだなぁ…』
いいよと続くはずだった言葉は
「ごめんね。お姉ちゃんは俺と結婚する予定なんだ」
『…え?』
田崎さんの言葉に遮られた
**********************
どうかしたんですか?と聞いたところで、彼から返ってくるのはいつも「なんでもないですよ」の言葉だけ。私がどれだけ心配したって、彼は彼が抱えすぎている荷物を私に分けようとはしてくれない
「どうして、貴女が泣いているんですか」
『っ、三好さんの所為です』
何も共有させてくれない、貴方の所為
**********************
貴方が隣にいてくれたから、少しずつ好きになった冬がまた今年もやってくる。それなのに
『どうして隣にいてくれないんですか…三好さん、』
私の目からこぼれ落ちた雫は、頬を伝って黒い地面にぽつりぽつりと落ちては吸い込まれていく
『貴方がいてくれなくちゃ、意味がないのに』
冬が嫌いな私に逆戻り
**********************
吐き出した息は白く、暖めようと口元に寄せた指先は冷たい。寒がりな私は、冬があまり得意ではないけれど
『お帰りなさい。波多野さん、』
「…はぁ。また寒そうな格好して、」
首にふわりと回される彼のマフラー
「ほら、帰るよ」
『はい』
彼の体温を感じやすい、この季節が好きだ
**********************
『田崎さん?眠いんですか?』
とんっ、と衝撃を感じて隣を見れば、私の肩に頭を預ける彼の姿。彼の瞳は珍しく閉じられている
「少し、」
『寝ても大丈夫ですよ。駅が近づいたら起こしますから』
「じゃあ、お言葉に甘えて」
『はい。おやすみなさい』
少しでも、彼に安らかな時間を
***
彼女の体温と香りが心地良くて、気がつけば彼女の肩に頭を預けていた。彼女の髪から俺が使っているものと同じ香りがする。彼女は自分が少しずつ、俺によって塗り替えられている事に気がついているだろうか。
気づかなくていいよ
全てが、塗り替えられるまで
**********************
『礼二さん、』
時々、彼女は任務で使った偽名で俺を呼ぶことがある。彼女曰く、長い間その名前を呼んでいた所為で癖になってしまったらしい。彼女の腰を引き寄せ、彼女の耳元に顔を寄せる
「その癖、そろそろ治さないとね」
以前使っていた偽名であるとは言え、他の男の名前を君の口から聞きたくない
**********************
料理をする福本さんをカウンター席に座りながら観察していたらふと目があった。すると彼は何を思ったのか私の口に何かを押し込んだ
『んん!?これ…金平糖ですか?』
「料理が出来るまでもう少し、それで我慢してくれ」
口に広がる金平糖の味。それは普段よりも、ひどく甘い気がした
**********************
遠くから聞こえる電話のベルが鳴り止まない。その所為で、俺の下で蕩けた表情をしていた彼女が一気に現実に引き戻されてしまった。
『…ん、神永さん。電話が』
彼女の視線が俺から電話のある方へと向けられる。
あぁ、気に食わない
「ダメ。今は、俺だけを見て」
余所見なんて許さない
**********************
6/9
▲ ▼
△