*凛ちゃんからの素敵な頂き物!
最初は列車事故に巻き込まれての死。
D機関としては、これ以上にない最期だったと、聞いている。
それでも、彼と過ごす内に芽生えた、彼に生きて貰いたいという願い。
私ならできる。
彼をあの冷たい柩から、出すことができる。
それは。
彼が¨三好¨たる意味を失ってしまうかもしれないけれど。
奇跡でも起きない限り不可能かもしれないけれど。
その結果、私がこの世界から消えてしまうかもしれないけれど。
黒戸萌音なら、それくらいできて当然です。
「誰かの確固たる意思で、世界が歪んでいたとしたら、どうなると思われます?」
例えばの話ですけれど、と、切り出された話に、一瞬姿勢を正した。
動揺が、彼らと肩を並べられる彼女に気付かれないよう願いながら。
「驚きました。そういう夢物語が好きだなんて」
「えぇ、好きですわ。あの機関では、現実主義者ばかりでそういうお話はできませんから、退屈していたくらいですもの」
うふふ。と、彼女、籠原さんは、意味深い笑いを含めた。
私は、人の内側を視てくる彼女が苦手だ。探偵である以上、私も同じことをしているのだろうけれど。
「これは私の推測ですが、誰かが世界の形を歪めているとしたら、世界は本来の形を取り戻そうとするのではないでしょうか」
「…っ」
「自然の理を変えるだなんて、人々が言う神様くらいにしかできないのでなくて?」
心臓が、彼女に気付かれるんじゃないかと云うくらいの大きな音を立てた。
今にも破裂して、花が咲きそうだ。
最初は列車事故に巻き込まれて。
その運命を変えたくて、始まったこの真っ暗な孤独しかない戦いに身を投げたけれど。
二度目は任務からの帰国中の列車事故で。
覚えている範囲の最期は、空爆に巻き込まれて。
何回変えても、今の彼女の様に嘲り笑う運命と云うものは。
―まさか。まさか。
心臓が煩い。
お願いだから、嗤わないで。
「ねぇ、萌音さん」
彼女は、とても可愛らしい笑みで。指を絡ませて首を傾けてとても愛らしい仕草で。
「三好さんの柩に蓋をしているのは、貴女自身でなくて?」
意図も容易く、楽しそうに絶望を宣言した。
彼女に指摘される前から、彼の死は避けられないものなんだと、薄々は気付いていた。
それでも、諦め切れなかった。
彼が囚われた運命を回避できるなら、それだけで良かった。
―だけど、彼を何度も柩に閉じ込めていたのは、私自身…。
「僕に囚われてどうすんですか」
いつの間にか、いつもの甘味処に来ていたらしい。
彼は、はぁ…とため息と皮肉気な笑みを浮かべながら、私の前に立っていた。
「真木…、いえ、三好さん」
「この機関での信条は知っているでしょう」
「死ぬな、殺すな、囚われるな。そうですよね」
「そうです。貴女は今まで自分で自分を殺そうとしていただけでなく、僕に囚われている。自分の意思なだけ、トートロジーではないですが」
そんな人に助けを請うほど、僕は弱くない。
僕は三好なのだから。
私も彼が¨自分と血の繋がる人¨ではなく、¨三好¨であることを思い出す。
今ある状況を一瞬で判断し、自力で全て解決する。
それが、彼が¨三好¨と呼ばれる所以。
彼は、一瞬だけ、いつものニヤニヤした方ではなく、口端を上げた。
「貴様と云うほんの少しの希望が見えた。餞にはそれだけで十分だ」
だから、貴様は貴様の道を生きろ。
黒戸萌音なら、三好と云う人間の血と意思を継いだ貴様なら、それぐらいできて当然だろう。
トンと、背後から肩を押され、意識が遠退く。
ここにきた時と同じ感覚。
あぁ、私は元いた時間へと、戻るのだ。
意識が戻って最初に、感じたのは違和感。
その箇所に手をやれば、彼が愛用していた帽子が被されていた。
成程。格好付けたがり屋の彼らしい餞別だ。
私は、その帽子を撫で。
「貴方の意思は、私が引き継ぎます」
だから、今をしっかり生きます。
黒戸萌音には、これくらいできて当然です。
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凛ちゃん!本当に素敵なお話をありがとうございます。
籠原ちゃんの可愛くて優雅な仕草と話し方に私は読む度にうっとりさせられております(*´*`*)
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