きみは笑顔ではぐらかした
「シェリーはどうして訓練兵団に入ろうと思ったんですか?」
『へ?』

夕食を同じテーブルで食べていたサシャが僕の隣に座るシェリーに尋ねた。突然の質問に驚いたのかシェリーは、気の抜けたような声を出した。それから、持っていたパンをゆっくりと皿の上に置く。その様子を僕は横目でちらりと見ていたのだが、そのときのシェリーの目はどこか悲しそうだった。
しかし、それは一瞬だけで視線を戻したシェリーはいつも通り。そして質問の答えも以前、エレンが聞いたときと同じものだった。

『内緒なの。ごめんね』

えー、と拗ねるサシャにパンをあげるから許して?とシェリーは宥める。当初、シェリーが僕たちと一緒に訓練兵になるなんてことは、僕もエレンもミカサも予想外のことだった。シェリーは、身体のこともあったから尚更。どうしてシェリーが訓練兵団に入ったのかを考えていると目の前でひらひらと手を振られているのに気がついた。

『おーい、アルミン。大丈夫?』
「ごめん!ぼーっとしてた」

アルミンがぼーっするなんて珍しいね、とシェリーがほわっと笑う。それは、人が次々と死んでいくこの場所には似合わないほど優しくて、綺麗な笑い方だった。

「シェリーは、どうして訓練兵団に入ろうと思ったの?」

自分でも何を言っているんだろうと思った。さっきもサシャが聞いた質問を繰り返すなんて。
でも、気づいた時にはもう口に出していたのだ。

「ご、ごめん。今のは」

気にしないで、と続けようとしたのだがシェリーの言葉に掻き消された。

『忘れ物を、』

必死に言葉を紡ごうとするシェリーの瞳は今にも涙があふれそうだった。

『忘れ物をね、取りに行きたいの。』
「忘れ物?」
『そう。とっても大切なものなんだ』

シェリーが命を懸けてまで取り戻したいものは何なのだろうか。
恐る恐る尋ねてみたけれど、


きみはではぐらかした


『忘れ物を取り戻せたときは、最初にアルミンに見せてあげるね』
「約束だよ」
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