ねえ 僕はここだよ
外にでてしまっただろうか。そんなことを考えながら俺は静まり返った通路を進んでいた。
『緑間くん、大好きだよ』
注意していなければ聞き逃してしまいそうなほど小さい声。暗い通路の向こうを見れば、壁に寄り掛かってしゃがみ込んでいるしずくの姿。この後のことはよく覚えていない。気がつけば俺はしずくを後ろから抱きしめていた。
「しずく、」
『み、どりま…くん』
最後に抱きしめたのはいつだっただろうか。彼女の体温や香りがひどく久しぶりで、安心させられる
『緑間くん、試合は…』
「ちゃんと勝ったのだよ」
それからどちらも話さなくて、無言になってしまう。だけど、ここで俺が話さなければ再び彼女がいなくなってしまう気がした。
「すまなかったのだよ」
『え?』
驚いたようにこちらを振り返りながら見上げるしずく。ようやく顔を見せてくれたことにほっとする。
「黒子から、何があったのか少しだが聞いたのだよ。気がつけなくてすまなかった」
『ち、違うよ!緑間くんが悪いんじゃない。むしろ、謝るのは私のほうだよ。突然、いなくなってごめんなさい』
うつむく彼女の頭にを自分のほうに引き寄せる。
「まったく、本当にあの時は驚いたのだよ。」
あんな思いはもう二度としたくないのだよ。
「突然居なくなったことは、もう許すのだよ。その代わり…」
俺が言葉をそこで止めたことで、しずくが不安そうにこちらを見上げる。
「俺のところに戻ってきて、ほしいのだよ」
しずくが再び大きく目を見開いたかと思えば、だんだん目が涙で溢れていく
『緑間くんのところに、戻ってもいいの?』
「そもそも俺は、しずくと別れた覚えもないのだよ」
だから、もう一度戻ってくるのだよ。
この想いが少しでも伝わるようにと願いながら、しずくを抱きしめる力を強める。
『わたし、緑間くんのところに戻ってもいいですか?』
おずおずと尋ねてくる彼女。そんな心配しなくても答えは決まっているのだよ
「あぁ、戻ってくるのだよ」
ようやく君を捕まえられた
ねえ、僕はここだよ
つかんだ手をもう、離さないで
11/34
▲ ▼
△