02

彼は何でもお見通し。

いつからいたのかわからない。ただ着替えてる途中からいたのはわかる。まるで元からそこにあったかのように何の違和感もなく彼は座っていた。

なんだ。気付いてたのかと彼はニヤリと笑った。
おおよそ赤子とは思えない流暢な喋り方。端から見ると人畜無害な可愛らしい姿だがその見た目に騙されてはいけない。こう見えて彼は裏社会で有名なヒットマンであり弟の家庭教師だ。

「今、何か失礼なこと考えただろ。」

「リボーン君てさ、黙ってたらすごーく可愛いよね。」

「馬鹿にしてんのか。」

身を起こしながらそう言うと銃口を額に突き付けられた。

「短気。」

「お前が人に言えるのか?」

「まあね。それは言えてる。ところでいつからそこにいたの?」

「最初っからだぞ。」

「私が部屋に入る前?」

「そうだ。」

さも当然とばかりに彼は答えた。
と言うことはだ。つまり全て見られていた。

「変態。」

今までもこういう事はあった。その度に苦言を呈しているが直す見込みが一向にない。そもそも彼に対して私がそこまで気にしていないがとりあえず、侮蔑を込めて言った。
すると彼はハッと鼻で笑って、

「出るとこ出してから言ってみろ。」

とのたまった。
私は幼少期から道場に通っている。だからか贅肉の付かない体をしている。そう贅肉がない。いや少しはあるよ、少しは。まあつまり悪く言って...うん。そこは十二分に理解している。でも私は大きいか小さいかなんて気にしない。あればいいなとは思うけど、ただそれを勝手に部屋に入る彼には言われたくなかった。

手近にあったクッションを投げるとひらりと軽い身のこなしで避けられる。クッションはボフッと壁に当たって落ちた。

「ちょっと避けないでよ。」

「避けるに決まってるだろ。」

まあそうだけど。でもそこは何かバチが当たってもいいじゃないか、むくれる私の顔を見てまた彼は笑う。

「ま、俺に当てたいならもっと鍛えるんだな。最近弛んでるぞ。修業が足りないんじゃねーか?」

とんとんと頬を叩く。それは勿論、私の頬の怪我を指している。

「う゛...わかってるよ。二度とあんなヘマしない。そうよ。あんなヘマ、二度と...」

そう言っていて昨日の出来事が浮かんだ。自分の失態を思い出しベッドに顔を埋める。

「あーなんであんなとこに缶が落ちてたかなあ!!あれがなかったら!あれがなかったら!!!!」

「ちゃんと周囲を確認してたら防げたな。雲雀に助けられて…プッ、ダッセー。」

「笑うなっ!!!!」

いい勝負をしてたと思ってる。得物なしに雲雀と渡り合った事を褒めて欲しいくらいだ。

でも長く続かなかった。足元に空き缶が落ちていて、私はそれに気付かなかった。後退しようと足を後ろにやった瞬間、景色がぐるっと反転して...

「雲雀がトンファーの軌道を無茶してまで変えなかったら今の何倍も酷い怪我してたな。入院確定だ。流石に今問題を起こすのは不味いもんな。」

「多分あれで手を痛めたと思うんだよね...喧嘩売ってきたのはあっちだけど理由が理由だから...」

これに託つけてまた何か頼まれるんだろうなーと遠い目をした私はリボーン君の発言にん?と首を傾げる。

「問題起こすのなんて今更じゃん。」

自慢じゃないけど私は今まで相当な数の問題を起こしてきた学校の鼻摘まみ者だ。でもこれだけは言わせてほしい。殆どが不可抗力で起きたもので私は悪くないと。
そうは言ってもあれだけ多くやらかしていたら普通なら退学──流石に中学ではないか──あるいは停学等なんらかの罰則があるものだが私は一切受けていない。ぶっちゃけて言うとコネがあるから。学校関係者に知り合いがいるからお咎めなしで済んでいるのだ。

「清々しいほどのクズっぷりだな。」

「私は与えられたものを使っただけだよ。本当なら跳ね返す所だけどそうしなきゃ今までやってこれなかったからね...」

それを考えると雲雀と知り合えたことは僥倖だった。あいつと関わるのなんてめっぽうご免だがそういう面では感謝している。

「ふっ...お前らしくていいじゃねーか。そういうところ俺は好きだぞ。」

「あら、リボーン君にそう言われるなんて嬉しい限りだ。」

彼と同じようにニヤリと嫌らしい笑みを浮かべる。
話が一段落したのでそろそろ勉強でもしようと立ち上がった時だった。

「ま、そうは問屋が卸さないってな。これを見てみろ。」

そう言って出したのは数枚の紙と一枚の写真。
写っているのは黄色い色をした球体。見慣れてきた先生ターゲットの顔だった。