01

彼は何でもお見通し。

玄関を開けてただいま。と言うと上からドタドタと数人の足音が響いた。すぐに目の前の踊り場から頭が三つ出てくる。

「ナオ姉!お帰りなさい!」

「お帰りなさい!!」

「ガハハーッ!ナオが帰って来たもんねー。」

「フゥ太にイーピンにランボ!ただいま!」

そう応える間に彼らは階段を降りて飛び付いてきた。

「こらこら、まだ手洗ってないんだからくっつかないの。汚いバイ菌が付いちゃうよ?」

手を三人の前に出し意地悪く笑えばフゥ太以外の二人はサッと顔を青褪めて廊下の奥へ走って逃げた。
それを追うわけではないが洗面所があるのは同じく奥。私が歩いて近付けばまた逃げた。

「ありゃ、脅かしすぎたかな。」

台所からこちらを伺う二人に思わず苦笑する。手を洗っていると一緒にいたフゥ太がねえねえと制服を引っ張った。

「今日は何して遊ぶの?」

「んー何して遊ぼうか...フゥ太は何がしたい?」

「僕は...昨日やったゲームの続きがしたい!」

「ん、じゃあご飯食べてからだね。それまでに宿題終わらせちゃうから待ってられる?」

「うん!僕ママンの手伝いしてくるね!!」

偉いねと頭を撫でると目を細めてはにかむ。その姿を見ると自然と笑顔になれる。

この三人が私の家に居候中の子ども達だ。
フゥ太は人をランキングするのが大好きな男の子。よく私やお母さんの手伝いをしてくれるとても優しい子だ。
イーピンは細目に中華服、髪形は辮髪だがシャイな5歳の女の子。最初は中国語しか話せなかったが少しずつ日本語を覚えて話せるようになってきた。
ランボもイーピンと同い年。少しうるさいが聞き分けの良い男の子だ。いつも牛柄の服と牛の角の形をしたアクセサリーを着けている。
この他にあと二人。そして私とお母さんと弟の計八人が今の沢田家のメンバーだ。

台所に行くフゥ太と別れて二階へ上がった。弟にただいまを言いに行こうと思ったが部屋からドカンと何かが爆発する音と弟の悲鳴が聞こえたのでスルー。最初は驚いて部屋に飛びこんだりもしたが今はもう慣れてああまたかと受け流すまでにまで成長した。嫌なことである。

部屋に入りラフな格好に着替えた。制服をハンガーにかけ軽く伸びをして脇にあるベッドに倒れ込む。

「何の用?」

ニヤリとベッドの備え付けの棚の上で赤子は笑った。