01

赤い色も危険。

「今日から奴に代わって体育を担当することになった。改めて、よろしく頼む。」

そう言って彼、烏間惟臣は丁寧にお辞儀をした。
数人の女生徒が嬉しそうに声を上げる。そう言う私も喜んでたりする。なぜなら前の担当、今烏間先生の後ろで不貞腐れてる殺せんせーは反復横跳びと言う名の視覚分身をやらせようとするふざけた奴だったからだ。

彼の授業はわかりやすくとてもためになる授業だった。終わるのが惜しい思えるほど。とは言っても私たちは受験生だ。体育ばかりしている訳にはいかない。

着替えに戻る私は顔を上げて後悔する。そこに見たくない相手の姿があった。

「カルマ君...帰ってきてたんだ。」

少し後ろで渚の驚いた声が聞こえ、彼の声を聞きつけその人物はこっちにやって来た。

「よー渚君久しぶり。奈々緒も元気にしてた?」

「ちっ...ウザいのが帰ってきた。」

馴れ馴れしく肩を組もうとする奴の手を払い、思いっきり顔を顰めた。彼はそれを見てあははと愉快そうに笑う。

「そんなこと言わないで、また同じクラスになったんだからさ、仲良くしようよ?」

「い・や。」

「まだこの前のこと怒ってるの?奈々緒は停学になってないからいいじゃん。停学中ずっと暇だったんだよ?」

ねーとしつこく絡んでくる彼にふつふつと殴りたいという感情が芽生えるがぐっと我慢する。

赤羽カルマ。不本意だが彼も渚と同じように三年間同じクラスだ。一年の頃からことあるごとに絡んできては私の神経を逆撫でするようなことばかりをする嫌な奴。

彼に言われ思い出すのは二年の出来事。私が彼のうざ絡みから逃げている時にたまたまE組の先輩がいじめられているの現場に遭遇した。すると彼は私を無理矢理引っ張り三年の先輩をボコりにいった。

いじめていたのは三年で成績トップの優等生。その時の担任は今まで庇っていたのが嘘のように、掌を返してカルマをE組に落とした。私もその時一緒に居たのに止めなかったことと、今までの暴力沙汰が原因でE組行きが決まった。
ちなみに私が停学にならなかったのはコネがある影響が大きい。

「まあ、巻きこんだのは悪いと思ってるよ。」

全然反省してない顔でそう言うと殺せんせーに近づいた。カルマは挨拶をし、柄にもなく握手をしようと手を差し出した。

「こちらこそ、楽しい一年にしていきましょう。」

(あーあ、油断したね。先生。)

この場合彼の人となりを知っていなければ当然か。
私は先生が手を握る瞬間をちゃんと見ていた。思った通りカルマの手を握った先生の手は溶けた。驚く彼らを尻目に彼はもう片方の手に隠したナイフで先生を刺す。

「...へー、本トに速いし本トに効くんだ対先生ナイフ。細かく切って貼っつけてみたんだけど...でもさぁ、先生。こんな単純な「手」に引っかかるとか...しかもそんなとこまで飛び退くなんてビビり過ぎじゃね?

殺せないから「殺せんせー」って聞いたけど...あッれェ、せんせーひょっとしてチョロいひと?」

先生を挑発するカルマの目を見てまた面倒臭いことになるのかと一人嘆息した。