「お前に何がわかるっ!!」
テストを回収している時に外から沢田さんの叫ぶ声が聞こえた。
「一体何事ですか?」
「俺達は何も...」
「渚は何か知ってる?」
殺せんせーは手を止めて僕らを見た。磯貝君が答えると他のみんなもさあと、首を傾げた。茅野が僕に質問するとみんなの視線が集まる。
確かに沢田さんとカルマ君、両者と関わりがあるのは僕だけだけど僕もそんなに知ってわけじゃない。
「多分...て言うか今のはカルマ君が沢田さんを怒らせたんだよ。」
「まあそんな感じだよな〜やっぱり。」
「それで二人はどういう関係で?」
「あ、それ俺らも気になる。」
「付き合ってるわけじゃないんだよね〜。」
僕の答えにそうだよなと一旦外れた視線。ホッとしたのも束の間、殺せんせーの声でまた視線が集まった。
「う〜ん...カルマ君が一方的にちょっかいかけて沢田さんに嫌われてる...?」
みんなにそれは見てわかると、即答された。いやだから、僕だってそんなに詳しくないんだって...
「渚でも二人のことわからないの?」
「うん。カルマ君はわかるけど沢田さんはそんなに...」
「まあ沢田はなー...」
「そうだね...沢田さんは...」
「沢田さんひどいですよね...先生、空気読めないふざけた奴って言われました。」
遠い目をした僕らは先生の言葉でそれは先生が悪いと、心を一つにして言った。
「渚はさ、沢田さんについて何か知ってることある?」
「例えば俺らに素っ気ない態度しかとらない訳とか。」
「それは知らないけど...えーっと弟がいるって話は聞いたことあるよ。」
ふと二年前沢田さんに話されたことを思い出したが、それは誰にも言うなと、言われているので答えることができない。代わりに今までの会話で家族について話したことがあったのでそれを教えると沢田って渚にだけは優しいよなと、ぽつりと誰かがそんなことを言った。それに頷くみんなはだからか〜と納得した。
「入学してしばらくは別に普通だった気がするんだけどな〜...やっぱあれ以来か。」
「あー例の...」
やっぱりあれからか〜と、頷き合うみんなにそれを知らない先生は詳しく!と、猛り立った。
「実は掘田君って子がいるんだけど彼が...ね。」
野次馬根性を発揮する先生に簡単に説明するとだ。
僕らの中では堀田君事件と呼ばれているそれは有名な話で、今やサッカー部のエースである彼が入学式の時沢田さんに一目惚れしたことから始まる。その後彼は沢田さんに猛アタック。沢田さんはそれを全て断っていたが諦めの悪い彼にしばらくするとこれは全て幻聴だと、彼の話をガン無視し始めた。
それが悪かったんだろうけどそれが何日か続いたある日、沢田さんが先生に呼ばれて席を立った時事件は起こった。堀田君は沢田さんの腕を掴むと...
「いつまで僕を焦らせれば気がすむんだい。」
と、沢田さんに言った。実は堀田君、ナルシストな上にかなりの自信家で自分を好きにならない女性はいないと、思っているらしく、沢田さんが恥ずかしがって喋らないと勘違いしていたらしい。だからそう行動に出たのだ。
「そしたら沢田さん、堀田君に肘鉄喰らわせた後に彼を背負い投げで投げ飛ばしたんだよね...」
そして親指を立て首を切って下を指す有名(?)なジェスチャーをすると死ねと、一言言って教室を出た。投げ飛ばされた堀田君はと言うと白目向いて気絶していた。それから彼は沢田さんを見ると悲鳴を上げて逃げるようになった。
「それは...鳥肌モノですね。ですが今の話とその事件との関係性があると思えませんが...」
「あーまあな。でもそれからよく沢田が暴力事件を起こすようになってさ、ま、沢田と同小の奴の話だと地元じゃ沢田には逆らうなって有名だったみたいだけど。」
「つまり今まで表立たなかったことが表面化した...と言うことですか。」
「あとヤバめな噂が流れたんだよな。」
曰く、沢田奈々緒は人殺しであると。
「人殺し...ですか。」
「人殺してそうな目はするけど、なんであんなデマ流れたかな。」
腕組みをする前原。でも火の無いところに煙は立たない。そう言う話が出るような事件が合ったのではないかと言うのが僕らの考えだ。
「惜しいよな〜俺、目つけてたのに...」
前原は一度痛い目にあった方がいいんじゃないだろうか、僕らが呆れていると不破さんが声を上げた。
「あ!そう言えば沢田さんって下級生には優しいって話があったような...確かテスト前に下級生に勉強教えてたって目撃情報があるんだよね。そっか、弟がいたから...」
また僕に注目が集まった。
「なんでみんなその話になると僕を見るの?!」
「いやなんか、さ...」
「大丈夫!渚もいつか大きくなれる日がくるよ。」
「止めてよその目!!」
なんで僕だけ可哀想な目で見られるの?!
閑話
赤い色も危険。