02

嫌な記憶ほど唐突に思い出す。

ようやく終わった授業。カルマは尽く返り討ちにあっているので相当ストレスが溜まっているようだ。触らぬカルマになんとやら、鞄に荷物をしまいそそくさと帰った私は教室にスマホを忘れたことに気付き校舎に戻った。
正直、カルマがまだ残ってそうなので戻りたくないがあれが見つかったら厄介だ。

急いで坂道を登っていると上から人の声が聞こえた。

(なんであいつがあんな所にいるの...)

崖の上から飛び出した木に座っているカルマ。彼は誰かと話しているようだ。

変なことに巻き込まれる前にさっさと通ってしまおうとしたその時だった。

「あの馬鹿っ!!」

木の上に立ったと思ったらそのまま落ちた。事故じゃない。彼は自分の意思でそうしたのだ。

ズキッと頭に激痛が走った。思い出したくもない記憶が頭に流れる。

この距離なら走ればまだ間に合う。急げ。
全速力で彼が落ちるであろう場所へ走る。

彼を見る目はそのまま、精一杯走った。すると黄色い何かが彼を包んだ。崖上から数メートル下。先生が蜘蛛の巣状になった触手で彼を支えていた。

「どうしましたか沢田さん。」

「先生...私も上に連れていってくれませんか?」

カルマが崖に登ったあと先生が来たので上まで運んでもらった。

「...カルマ君平然と無理したね。」

「別にぃ...」

「.........何があったの?」

崖下を見る渚、その顔は少し青い。殴りたい衝動を抑えカルマに話を聞くと思った通り、この馬鹿は先生を殺すために崖から飛び降りたらしい。

(やっぱりね...)

「何?心配してくれるの?」

その言葉にカッと目の前が赤く染まる。そして響くのは鈍い音。

「...ざけんな。自分が何したかわかってんの?!先生がいたから助かったのよ?なんで笑っていられるの...死んだらどうすんのよ!!!」

殴った、そこそこ手加減して。頬を押さえて呆然とするカルマに怒鳴る。
こんなやつ知るかと踵を返そうとした時先生が独特な笑い声で笑った。

「沢田さんはそれほどカルマ君のことが心配だったのですね。」

「は?」

ニヤニヤと笑うその顔は緑と黄色の縞模様。おちょくっている時の先生だ。

「だってそうでしょう。関心のない人に怒る人は普通いません。沢田さんはカルマ君が心配で、そして死んでいたかもしれない状況で平然とする彼に怒っているんですよね。」

「奈々緒...俺の事心配してくれてたの?」

さっき殴ったばかりなのに、彼はニヤニヤと気持ち悪い笑み浮かべていた。

「ふー...」

「ぐっ...」

息を吐きもう一回、今度は鳩尾を殴る。
腹を押さえて崩れ落ちる彼にハッと馬鹿にしたように鼻で笑ってその場を去った。

・ ・ ・

帰り道。左腕を襲う痛みで顔が歪む。人目につかない場所まで行き袖を捲るとそこは黒くアザになっていた。

「やっぱツイてない。病院行こ、治療費は奴持ちにしてやる。」

骨は折れてないだろうけど治るまで時間がかかりそうだ。彼女は頭をガリガリ掻いてから足を動かした。