02

少しずつ動き出す。

新居についてまず荷解きをしたいところだが予定があって私だけ外に出た。
待ち合わせの場所に着くと黒塗りの車が一台止まっていてそこから男の人が出てくる。

「防衛省の…いや、今度から君の教師になる烏間だ。」

「藤塚涼花です。」

「日本についたばかりですまないが着いてきてくれるか?」

烏間さんの車に乗りどこかの建物へと連れていかれる。
案内されて入った部屋で彼はさてと話した。

・ ・ ・

「…事情は今説明した通りだ。もしこの秘密を漏らせば記憶消去の治療を受けてもらうことになる。」

「信じられない話ですね…わかりました。精一杯頑張ります!」

「よろしく頼む。それとこれが今月の予定表と制服、教科書は登校予定の明後日迄には準備できるだろう。」

「よろしくお願いします。」

「ああ、藤塚さんは体が弱いと聞いた。無理をしろとは言わない。自分ができる範囲でやってくれ。」

「はい!体は弱いですが腕っ節には自信があります。任せてください!」

「…あまり無理をしないでくれるか。」

私の返答に呆れたような困ったような顔をする烏間先生。

そうやって話したのが昨日の事。そして貰った予定表を確認してとんでもないことに気付いたのが今。

「ほ、本当に今から行くんですか!?登校するのは明日からだと…」

「うん。だってもうすぐ中間テストがあるんだよ?私勉強なんて全然やってないから心配なの。」

今日は全校集会があるらしい。そしてその数日後に中間テストと書かれていた。昨日確認してから帰るんだったと後悔した。初歩的なミスをして恥ずかしい。

「いやいや、高等教育以上受けた人が何言ってるんですか。」

「それは!確かにそうだけど…でもそれってかなり前の話だし…」

とりあえず自信がない。不安しかない。

「私たちは問題ありませんが…本当に大丈夫ですか?昨日の今日で疲れが溜まってるはずです。本来なら一週間前に着いて体調を調える予定でしたのに…」

「体調は問題ないよ。疲れも、こんなの日常茶飯事でしょ?」

「まあそうですが…」

シャオイェンとそんなやり取りをしてから数十分後。私は椚ヶ丘中学校に来ていた。もちろん。今日からここに通うため。確か今は休み時間のはず。あと少しで休み時間が終わるからか生徒の姿は見えない。校門をくぐり案内板に従って旧校舎へと向かった。

「あれ?おかしいな…」

旧校舎に着いたが人が誰もいない。窓から中を覗いても空っぽの教室が見えるだけ。
新調したスマホの電源を点けシャオイェンに電話をかける。そこでふと彼女は日用品などを買いに行っている事を思い出した。

(う〜ん…邪魔しちゃ悪いしやっぱりここは…)

少し考えて他の人にかける。数コール後聞こえたのは伸びやかな声。ロイだ。

『もしもーしお嬢忘れ物ですか〜?』

「ううん違うよ。学校に着いたのはいいけど教室に誰もいないからさ…今日って何かあったのかな〜と思って…」

『んーちょっと待ってくださいね…今日は…全校集会がありますね。』

「うん。それは知ってるよ。」

『もしかして全校集会って朝じゃなくて昼にあるんじゃないですか?』

「あ、そうか。てっきり朝にやるものだと…」

『まあわかりませんがね。とりあえず中に入って待っとけばいいんじゃないですか。』

「山の上の校舎と言ってもさすがに戸締まりはするでしょ。」

試しに玄関の扉を押してみる。すると扉は何の抵抗もなく開いた。

「えっ…嘘!?開いた!!」

『防犯意識ひっくいですねー。』

下駄箱に靴を納め教室へ向かう。まさかと思いながら扉を横に引くとガチャンと金属の鳴る音がした。扉は開かない。

「あ、良かった。教室はちゃんと閉まってる。」

『ありゃりゃ、教室も開いたら沢田お嬢さんの席に悪戯できるのにね〜。』

「ロイ…あなた一体何を考えてるの?」

『お嬢のしそうな「しません!!!!」…え〜。』

それからロイと取り留めのない会話をして電話を切った。教室の扉に背を預け鞄から本を取りだし読む。何ページか読み進めると外から複数の気配が近付いてくるのを感じた。

「あれ?君は…」

声をかけられたことで初めて本から顔を上げる。目の前には数人の男女の姿。私に声をかけたのは髪の毛が触覚のように跳ねている男の子だった。