03

少しずつ動き出す。

最初の生徒を皮切りにぞくぞくと帰ってくる。私を見た人は皆、一様に同じ反応を示した。

「全校集会は昼休み後にあるんだよ。」

「そうなんですね。てっきり朝にあるものだと…」

遠巻きに見る生徒、近くに来て話しかけてくれる生徒、変わらないのは私に向ける好奇の目。あまり慣れない種類のそれに少し戸惑いながらも答える。見知った顔はまだいない。

結局、彼女は一番最後に来た。姿を見るなり駆け寄ると彼女は目を真ん丸にして私の名を呟いた。その目から大きな涙の粒が溢れる。まさかそうなるとは思ってなくて…驚いてどうしたのと声をかけると相手も茫然としていた。
手に付いた滴を見て彼女は笑う。そしておかえりと昔より大人びた顔で微笑んだ。真っ直ぐこちらを見つめる瞳。今までの悩みが嘘のように一掃された。

・ ・ ・

ちょっとした騒ぎの後、初めて暗殺対象に出会う。話に聞いたものと自分の目で見たものとではやはりズレがあり、一目見たその姿の大きさに驚いて彼女の背中に隠れた。
取って喰ったりはしないよと彼女は言う。その言葉に彼は傷付いたようだ。

教室に戻った後、事情説明として予定表の中間テストの話をした。納得して貰った所でその前にとチョークを渡される。少し緊張したが自己紹介は上手くできたと思う。

自己紹介の後は席決めだ。私の席はどこだろう。彼女の隣がいいな。と考えていたら後ろから赤髪の男の子が空いている席を指した。彼女の隣とは別の席。最初は嫌だったが彼の話で考えが変わった。

「藤塚…涼花さんは奈々緒がクラスで孤立してること知ってる?そこでさ、提案なんだけど俺の隣に来ない?奈々緒の隣にいったら奈々緒は涼花さんとばっか喋って更にクラスに馴染まないような気がするんだ。」

断る訳がなかった。せっかく私が帰ってきたんだ。彼女か今まで強いられてきたことたちを払拭できるなら、私はそれに快く協力しよう。

自分の席に行き両隣によろしくお願いしますと言う。左隣は先程話した赤羽カルマさんでよろしく〜と明るく返してくれた。右隣の方は素っ気なく、こちらに見向きもしないので少し残念だと思った。後で聞いたが彼の名前は寺坂竜馬と言うらしい。

さてここからが本題だ。殺せんせーの分身と中間テストへ向けた勉強会。机に積まれた教科書を捲ると一応全て習った覚えがあった。それを伝えると今回のテスト範囲の基礎問題だけを集めたプリントが渡される。いよいよだ。

「自分のペースで解いてください。涼花さんの苦手を洗い出しましょう。」

今までで一番緊張した。時間はかかったがなんとか全て解くことができたのでちゃんと覚えていたことを勉強を教えてくれた家族に自慢したくなった。

授業が終われば後は自由。私の周りにまた人が集まった。
その前に彼女に話しておきたいことがあったので彼女の方を向くと彼女の姿はもうすでになかった。急いで追いかけてなんとか玄関で捕まえた。

他の子と話しなよと言う彼女にさっき言い忘れた“ただいま”を言うとそれだけのためにと言われた。それだけのことだがそれは私にとって掛け替えのない言葉。ちゃんと言わないと。それに、

「私、ナオに話したいことがいっぱいあるんだ。今まであったこと、イタリアで出会った大好きな家族のこと、他にも、たくさん。」

本当にたくさんあるんだ。楽しかったこと、辛かったこ、ずっとこうあるべきだと考えてきた馬鹿な考えも、私が見てきた景色を少しでも多く親友と共有したい。それを受けて彼女も私もだと返した。

すぐ話してしまいたいが今の時間だけでは足りない。それに二人きりじゃないと話せないこともたくさんある。それを話すのは今じゃない。それは相手もわかっていた。

だから落ち着いたら話すことを約束した。
また明日。そう言い合って教室へ戻る。その途中で授業中に聞こえた彼女と先生の話をする。

私だってナオちゃんの事が心配なんだよ。泣き虫なのに負けず嫌いで意地っ張りで、いつも周りを見てて自分より他人の心配をする優しいナオちゃんが。