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少しずつ動き出す。

みんなこの時間が来るのを待ってたと思う。だって授業が終わると帰りの準備もしないでみんな涼花さんの所に集まったんだから。
彼女は驚いていた。そして誰かを──と言っても一人しかいないけど──を探して周りをきょろきょろと見渡した。

「ナオちゃんは…」

「沢田ならさっさと帰ったぜ。」

それより俺は涼花さんと話したいなと前原が言ったがそう言い切る前に彼女は人の壁を掻き分けて沢田さんを追いかけた。

「行っちゃった…」

「…それにしても今日の沢田さんにはびっくりしたね。」

「ねー。私沢田さんが笑うところ初めて見たよ。」

「笑ってる沢田さん可愛かったな〜。」

「沢田ってあんな風に笑うんだな。」

「泣いてる顔も良かったよな。」

涼花さんを見送った後片岡、倉橋の話でみんな口々と感想を話した。ちょっと違うものが混じってたけど。

「なんか今日初めて沢田さんを知ったって感じがする。上手く言えないけど一歩近付けたと言うか…」

「じゃあもっと近付いちゃいましょう!」

「「「「涼花さん!!!」」」」

片岡がみんなの気持ちを代弁したところで涼花さんは戻ってきた。いや戻ってきたと言うよりはむしろタイミングを計って待ってたと言うべきだろう。驚く僕達を他所に輪の後ろで悪戯が成功した子どものように無邪気に笑っていた。

「そう言えば涼花さんって沢田さんと知り合いなんだよね。」

「はい!ナオは私の親友です。」

「親友か〜なんか沢田に似合わないな、そう言うの。」

「似合わないなんて失礼な!ナオちゃんは友達思いの良い子なんです!!」

「ますます似合わねー。」

「そうよ!だって沢田さんと言ったら…あ、私不破優月。名前で呼んでね!よろしく。」

拳を握り熱弁する涼花さんには申し訳ないが僕達が沢田さんに抱くイメージは誰とも馴れ合わない一匹狼みたいなものだ。
不破さんは今まで流れた噂や堀田君事件、沢田さんに関するあらゆる話を涼花さんに聞かせた。

「でもそれって、ただ皆さんが噂に流されているだけでちゃんとナオと接してないです!!」

「「「「!!」」」」

頬を膨らませる涼花さん。僕達は彼女の言葉に強い衝撃を覚えた。確かに僕達は沢田さんを避けているだけで禄に知り合おうともしてなかった。するとここで初めてカルマ君が口を開いた。

「でもさぁ、奈々緒も奈々緒で俺達と関わる気0なんだけど。」

「それはカルマさんがナオにちょっかいばっか出すからです!」

「「「「確かに。」」」」

「えー俺のせい?」

「カルマさんはしつこ過ぎるんです。ナオは馴れ馴れしくする人、苦手ですから。」

「じゃあ涼花さんは?」

「私はナオの親友なので。」

腰に手を当てて自慢する彼女にカルマ君は理由になってないよと溢す。

「ナオはあまり人付き合いが得意ではないです。それにさっき優月さんが話してくれた噂、他人にどう思われても気にしない質なので、傷付くことはあってもそれを表に出すことなんてないんです。自分は自分、他人は他人。そういう風に区切りをつけているので…」

「傷付く沢田さんって想像できないな〜。」

「だよねぇ。なんで涼花さんは奈々緒の事そういう風に言い切れるの?」

だって十年振りに会うんでしょ。お互い変わってるはずだよとカルマ君は言う。それに対し涼花さんは胸に手を当ててこう答えた。

「わかりますよ、ナオの事ならなんでも。例え離れ離れであっても、どんなに変わってしまっても、私達はお互いのことがわかるんです。言葉で表すのは難しいですけどこう…私達は根っこで繋がってる…みたいな。それにナオちゃんは昔と全然変わってなかった。」

天井を見上げる涼花さんの目にどこか昔の懐かしい風景を見た気がした。

「機会があったらナオちゃんに話しかけてみてください。ちゃんと応えてくれますから…あ、でもカルマさんみたいに強引にいったら駄目ですよ。」

「そうね、そうしてみる。」

「はい!それにナオちゃんは強いから。きっと皆さんの心強い味方になってくれます。」

もちろん私も強いですよ。そう言って力瘤を作ってみせる涼花さん。僕達は容姿に見合わないその姿に大笑いをした。