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不可能ではない。

ぴりぴりと緊張感が漂う校舎。廊下を歩く私達に侮蔑と嘲笑が向けられる。

「…嫌な感じですね。」

「ここはそういうとこだよ。…にしてもさっきから視線がうざいったらありゃしない。」

A組からC組までの教室を通ったが侮蔑と嘲笑以外に好奇の目も向けられている。それは全てスズに向けられているもの。彼女がそういうものに曝されていること事態気に喰わないこと甚だしい。それを知ってか知らずかスズはクスッと笑った。

「このぐらい気にすることありませんよ。なんならナオに私が兄様から頂いたありがたい言葉を送ります。『カス共のくだらん戯言に耳を傾けるな。』まあこの場合は視線になりますけどね。」

「言うねぇ。」

「ええ。それに昔っからその手には覚えがありますから大丈夫です。」

テスト頑張りましょうね。と拳を握りしめ彼女は言う。当たり前だ。なにせこっちには成さなきゃいけないことがある。

◆  ◇  ◆

鐘が鳴れば試合テストは始まる。

紙を捲る音がすれば後はひたすら静寂の中にカリカリと文字を書く音が響くのみ。あるクラスだけ例外的に咳払いや教卓を爪先で叩く音が聞こえてくるがその他は基本静かだ。

はっきり言ってうちの学校のテストは難しい。都内有数の進学校ということだけはある。しかもテスト初っぱなは私の苦手な数学。ここ数日ほぼ毎日数学漬けだったためそろそろ数字がゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。

(…にしてもこの間のは一体なんだったんだ?)

最初に行われたテスト対策からしばらくして。更に分身を増やしました。と先生。先生のキャラが崩壊しながらも増えた分、より綿密に各自の苦手対策授業が行われた。
授業後、息も絶え絶えな先生は下らない願望を言っていたがなんであんなにやる気になったのか…

(…と集中集中。)

テスト中に何を考えてるんだ私は。計算で時間が取られるのにこれじゃ見直しの時間が確保できない。

それじゃなくても今回第二の刃を示すため全員50番以内を目指せと言われたのだ──私は諸事情により15番以内だが──その為に全神経をテストに向けなければならない。

(残り時間はもう半分もない。ペースアップしないと。)

急いで問題に目を通し要点を掴んで解く。計算ミスのないように細心の注意を払う。

(よし!あともう少し。)

やっと問い十まで終わらせて残り一題。問題用紙を見つめた目はそこに書かれた問題に釘付けにされた。

(この問題…なんで?!)

最後の問題に到達したクラスメイトたちも同じ様に感じたことだろう。教室に流れる戸惑いが少しずつ濃くなっていく。

「明日の中間テスト。クラス全員50位以内を取りなさい。」

先生の昨日の言葉が頭に響いた。全員50位以内…先生の教え方なら可能だと言われたそれは…

理事長の妨害により呆気なく砕けたのだった。