次の授業では先程の話を念頭に班別行動時のコース決めがあるのだが、その前にと先生に辞書よりも厚い修学旅行のしおりが手渡される。クラス中から上がる不満の声を他所にたかがしおりがここまで厚くなった理由が気になりページを捲ると修学旅行の日程、滞在先の情報の他におすすめの観光地や人気お土産ランキングなど、知ってたら少し得する豆知識の他に事件事故に巻き込まれた時の対処の仕方などが地図などの付録なども合わさり数百ページと続いていた。
恐ろしくマメに対策されているそれらを流し見て
こうしちゃいられない。おもむろに席を立ち向かうはスズとその班員のもと、おもに女子にスズが迷惑かけることを予め謝っておく。そうしてスズ達と別れて自分の班員を探すと茅野ちゃんがこっちだよーと手を振った。
「ごめん待たせた?」
「ちょうどさっきみんな集まったところだから大丈夫だよ。」
茅野ちゃんが用意してくれた席に座り班員に向き合うと杉野と茅野ちゃんを中心にまずは各々の行きたい場所をあげていく。
「私はお土産が買える場所ならどこでもいいよ。」
大切な家族に渡すお土産を買える場所。それに下手に候補をあげて他の班員が行きたかった場所に行けないと悪いしと内心で呟く。逆に京都でお土産買えない場所ってどこだよと杉野が呆れる。
「じゃあカルマは?」
「ん?俺はねー」
いくつか候補が上がりある程度の骨組みができたところで話されるのはどうやって先生を暗殺するかということ。
「沢田さんはどうやって決めたらいいと思う?」
「......いくら調べてもネットや本の情報と現地で得られる情報ってかなり差があると思うから一度下見して適した場所を見つけるべきじゃないかな。」
茅野ちゃんから急に話を振られて当たり障りない言葉を返すと彼女はそっかーそうだよねーと返して他の班員に声掛ける。その後も暗殺予定地について話を詰めそれぞれ自宅で情報収集をしてまた集まることになりその日は解散となった。
修学旅行のコース決めのために同じ班の人たちと集まったところでナオちゃんが来た。どうしたの?と聞くとちょっと挨拶にと言う。挨拶?と首を傾げていると彼女は他の方に私をよろしくと頭を下げた。
「こいつ目を離したらすぐどっか行くし面倒事引っさげて帰ってくるから気をつけてね。何かあったら私が面倒見るから首根っこ掴んで引きずって来て。」
主にスミレちゃんと狭間さんに言いたいことだけ言い、その言葉に恥ずかしくて真っ赤になっている顔を隠すように両頬に手を当てる私にあまり迷惑かけないようにねと言って去ってしまう。狭間さんが意外ねと呟いた。
「あの沢田が頭を下げるなんて、あなた何したの?」
「べ、別に何もしてないですよ?」
目を泳がせてしどろもどろになる私の姿に説得力ないよとスミレちゃんが言う。六対の残念な子を見るような呆れる視線を受け観念して素直に話すことにした。
「えっとですね、実は日本にいた頃は野山を駆け回る野生児のような生活を送っておりまして...その時にナオちゃんには多大なご迷惑をおかけしてまして...」
昔はスズ姉と呼び慕う可愛い妹弟子といろんなところに赴いたものだ。道無き道を突き進んでいる時に手を離してしまい遭難させたり、興味本位で蜂の巣をつついて追いかけられたり、修行中に師匠が仕掛けた罠に嵌めてしまったりなどなど...大小問わず私が引き起こした厄介事のトバッチリを受けるのはいつもナオちゃんだった。
「ナオちゃんは究極の巻き込まれ体質だからいつも大変な目に合わせてしまっていて......」
「それでよく互いに大切な親友なんて言い合えるわね...」
「そこは思い出補正...的な?」
カルマさんに巻き込まれる形でE組に落ちたというナオちゃんが実は幼少の頃からトラブルに巻き込まれやすい質であったことに同情し、そんな人生を送ってるなら人と関わりたくなくなるわなと誰かが呟いた言葉に皆さんが一斉に頷いた。
「私たちにはお手柔らかにねスズちゃん。」
「ぜ、善処します。」
「これは駄目なやつね。」
不名誉なことに、この日の集まりは殺せんせーの暗殺計画ではなく如何にして私から目を離さないようにするかを焦点に話し合われた。
投稿日:2018 / 02 / 09
最終更新日:2026 / 10 / 17