突然鳴った電話は親友からのものだった。改まった声でお願いがあるんですと言われ緊張気味に聞いた話は驚くべきもの。もちろん断る訳もなく承諾する。そして…
いつもより早く出た。重たい瞼を擦りながら待ち合わせの場所へ行くと相手は私に気付くとナオちゃん!と駆け寄ってきた。
「おはよう。今日からよろしくね。」
「はい!よろしくお願いします。」
じゃあ行こっかと歩き出す。待ち合わせの場所から学校まではそう離れていない。校門を通り旧校舎に着くまでそう時間はかからなかった。早い時間と言うだけあって他の生徒がいる気配はない。どうやら一番乗りのようだ。
教室に入ると不思議な物体が出迎えた。入り口から対角線上、黒く細長い長方形の箱のようなもの。それは異様な雰囲気を醸し出していた。
「…何これ?」
「さあ?なんでしょうか?」
二人で近付くと箱の上部分が光る。どうやらモニターになっているようで、そこに女の子の顔が映る。
「おはようございます。今日から転校してきました。"自律思考固定砲台"と申します。よろしくお願いします。」
「…しゃ、べった?」
なにか大切なことを言っていた気がするが今起こったことに寝惚けた頭が着いていかなかった。さっきの言葉を反芻する。それより先にふぉ〜おなんて間の抜けた声が聞こえて何を考えていたのか忘れた。
「ねね!今の見た?聞いた?新しい転校生ってこの子なんだね!」
目を輝かせて箱の周りをぐるぐると回り出す姿に呆れていると後ろでドアが開く音が聞こえた。
「さーて来てっかな転校生?」
朝から元気だな〜なんて思ってたらまた箱のモニターが点き言葉を発す。
「お、おい、なんだこれ!可愛い女子どうした?!」
「…そう来たか。」
「…ん?あーこれが転校生ね。」
やっと覚めてきた頭でさっきの言葉を理解した。後ろから気付くの遅っ!と三人の息が合った突っ込みをもらった。
「仕方ないでしょ…朝は苦手なんだよ。」
大きな欠伸を一つ。別に朝が弱くて起きれない訳ではない。起きてから一定時間経たないと頭がまともに働かないのだ。
視線を感じたから振り向くと岡島がガン見していて、
「何?」
「…いや、前から思ってたが沢田お前キャラ変えすぎじゃないか?」
「は?」
「だってお前涼花さんが来るまでずっとなに考えてるかわからない無表情で何かあっても全然表情動かなかったぞ!!」
修学旅行の時だって!と騒ぐ岡島に渚がそうかな?と言う。
「沢田さん結構表情豊かだと思うけど?」
「それは渚が相手だからじゃないか?」
渚の言葉に杉野が微妙な面持ちで言う。まあ確かに修学旅行のはびっくりした。あーあれはな〜なんて会話する三人。
「なんだっていいでしょ。スズと約束もしちゃったし、女に二言はないよ。」
「それ男の間違いな。」
あれ沢田ってこんなやつだっけ?と杉野、岡島はひそひそと声を潜め話す。奈々緒はそれを気に止めていないのか転校生の周りをぐるぐると回る彼女の襟首を引っ張った。
「あ、まだ駄目です!!もうちょっとだけ…」
「気持ちは…まあなんとなく察してあげるから落ち着け。」
「なんとなくって酷い…あんなにおも…素晴らしい方がいるのに…」
「今面白いって言いかけたよね?」
「こ、言葉の綾ですよ…」
目を泳がせる彼女に溜息一つ。
その後も目を離せば転校生の元へ行こうとするので襟首は掴んだまま。登校した生徒はその光景と転校生を何度見もした所でHRが始まった。
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