02

これが日常。

雲雀恭弥は腐れ縁でありライバルである。
そんな彼の活動を手伝い始めたのは中学に上がってからだ。なぜ手伝っているのかというと、今まで借りていた貸しを返すためである。決してストレス発散のために手伝っているわけではない。大事なことなのでもう一度言う。これはストレス発散のためではない。

委員会の手伝いは町内の見回りやそれについての報告するだけで終わり、運が悪いと喧嘩を売ってきた奴等の相手をしたりする。

諦めが悪く、喧嘩を売る奴等はいつもコテンパンにされているのに何度も吹っ掛けてきて、ここ最近は何個かのグループが徒党を組み雲雀に、そしてなぜか私にも勝負を挑んできた。

今日はそんな彼らとの総力戦。今度こそぶっ潰してやると時間と場所を指定され、おまけに二人一緒に来いと書かれた手紙が雲雀に届けられたようだ。無視してもいいのに、変に律儀な彼は早く来ないと咬み殺すと物騒な伝言を桃に託す。
それを走りながら聞かされ、急いで帰り、着替えて彼と合流すると遅いと睨まれた。危うく彼の得物の餌食になりそうな所に桃の制止が入ったが険悪な状態は変わらなかった。あと少しで一対一対その他大勢という人数構成のおかしい三つ巴の戦いが始まる程に。

結果は当たり前というか、私達の勝ちで、私はほぼ手を出さず、おもに雲雀による一方的な殺戮が終われば物陰に隠れていた桃が救急車を呼ぶ。桃は救急隊員を案内するべく離れた。

「君が大人しいなんて珍しいね。」

「あのね、そもそも私並中生じゃないし、ましてや風紀委員じゃないの。見回りだけならともかく、こんなことしてたら私の体裁が悪くなるんだけど。」

「君が気にするとは思えないけど。」

「そうだけどさ、さすがに土日まで拘束されるのはね。貴重な休みを二日とも捧げるつもりはないの。せめて一日ぐらい休みが欲しいのよ。」

「君に拒否権があるとでも?」

「いや、だから力尽くで取りに行こうかなと。」

にやりと笑えば彼も猟奇的な笑みを浮かべた。
数瞬睨み合えばあちらから仕掛けてくる。負け確とはいえこっちも素手じゃないんだ。何年経っても埋まらない差に歯痒い思いをするのはごめんだ。せめて少しでも長く相手に出来たら、そんな風に始まった争いは最長時間を記録した辺りでスズに止められた。そして、

「あんたこれ絶対ワザとやったでしょ!!バカバカバカバカ!何してんのよっ!!」

「いひゃいれす。手をはにゃ…クシュッ!!はにゃして…」

伸ばしがいのある頬を引っ張れば面白いぐらい伸びる。両手首を掴み離そうと足掻くスズはくしゃみのせいで力が入らずなかなか抜け出せずにいた。

「まーまーナオちゃん、そこらにしてあげなよ。涼花ちゃん風邪引いちゃうよ?」

莉桜と不破さんが引き剥がすと、スズは赤くなった頬を擦りながら恨みがましい視線を送った。

「奈々緒、帰らなくていいの?早くしないと涼花さん本トに風邪引くよ。」

「帰るよ。行くよスズって、なんで当然のようにあんた達が着いてくるのよ。」

「え?俺達も奈々緒の家に行くからだけど?」

「来んな!!」

吠えると莉桜はいいのかな〜と悪どい笑みでスズを引き寄せた。

「私達も一緒に連れていかないと涼花ちゃんが風邪引くよ〜?」

「そうですよ。私が風邪を引いてしまう前に早く行きましょう!」

「お前もう風邪引けばぁ?」

「まあまあ、いいよ?奈々緒は帰っても。でもそうしたら殺せんせーにこの写真送っちゃうけどいい?」

「よーしカルマ、今すぐそれ寄越せ。叩き壊してやる。」

不良が死屍累々としている写真を見せ脅しに入るカルマ。それを木刀で壊そうと考える私の背を莉桜が押した。

「よーしそれじゃあ奈々緒ちゃんの家に行くよー!!んで、肝心の家はどこにあるのかな?」

「こっちですよー。」

「あ"ーもうっ!!勝手にしろっ!!」

笑顔になる彼らを背に、親友を殴りたい衝動を抑え家の方角へと足を向けた。