ピピピピという音で目が覚めた。手探りで音源を探し止めてからベットの中で伸びを一つ。起き上がってカーテンを開ければ眠気で少ししか開いていない瞼の中に眩しい日差しが差し込んだ。何度か深呼吸をして卓上カレンダーを手に取ると今日の日付の下に赤ペンで予定が書きこまれている。
「あーそっか、今日だっけ...」
赤字を目で追いながらそんな約束もしていたなぁと考える。まあとりあえず、
「朝ご飯でも食べるか。」
部屋に漂ってきた匂いにお腹がくぅとなった。
その2時間後...
「もう十分だと思うんだけど...」
うんざりとした声で言うと後ろからまだまだよ、との声。鏡越しにお母さんがああでもないこうでもない、と髪を結っている。朝食を食べて出掛ける準備をしていたらお母さんに呼ばれ、するとこれだ。かれこれ30分はこの調子、この分じゃまだまだ時間がかかりそうで隣に座って物珍しそうに見ていたフゥ太も飽きたようで退屈そうに足を揺らしていた。
「ねぇママン、僕ナオ姉と遊びたいよぉ......」
「あら、今日はダメよ。」
子犬のように可愛らしい目をお母さんに向けるとふふっと勿体ぶるような笑みを返されフゥ太は首を傾げた。
「ナオちゃん今日はデートなのよ。」
きゃっと一人ではしゃぐお母さん。え〜と驚くフゥ太に違うよと訂正を入れてもういい?とお母さんに聞いてもダメよと即答され髪をいじられらただけだった。
そしてさらに30分後。
「......こんな感じかしら?何かもうちょっと...こう、欲しいのよねぇ...」
ぶつぶつと独り言を言うお母さんは壁時計を見てこれならもうちょっと早く起きてもらえばよかったわと呟いた。
「時間はまだ余裕だよ。これ以上遊ばれるのは嫌だけど...」
待ち合わせの時間まで1時間以上余裕があり、駅まで歩く時間を入れてもかなり空いている。するとお母さんは次はお洋服ね!と自分の部屋から紙袋を持ってきた。
「ねえナオちゃん、今日はこのお洋服着けない?」
そう言って見せてきたのは肩の周りがシースルーになっている白色のノースリーブワンピース。
「お母さん……これどうしたの……」
「今日のデートでナオちゃんに着て欲しくて買ってきたの!」
「なんで?!!」
「だってナオちゃんったら制服かジャージしか着けないじゃない。」
そりゃそうだ。週のほとんどを学校と雲雀の手伝いがあり制服で、それ以外はランニングや体を動かすために動きやすい格好をしているのだから。
「お母さんこの日のためにかわいいお洋服たくさん買ったのよ!それに、スズちゃんと遊びに行く時もジャージを着るつもり?」
「うっ……それはしないけど……」
「姉ちゃん何してんの?」
大量の服を渡され痛いところを突かれて沈んでいるところに弟の綱吉が起きてきた。
「助けてツっ君!!」
「なっ!?はあっ?!!?!いきなりなんだよ……って姉ちゃんその格好どうしたの?」
「ナオちゃんは今からデートなのよ。ね、ナオちゃん!」
「だから違うってば!!」
姉ちゃんがデート……と勝手にショックを受けてるツナに誤解だと説明する。そしてお母さんに着せ替え人形にされていることを伝えると、
「俺姉ちゃんがジャージ以外の服着てるの久しぶりに見たかも……」
と言われた。
「ひ、……酷いわツっ君!!!ツっ君のためにいろいろ頑張ってるのに!!!」
「何言ってるかさっぱりわからねーっ!」
心に突き刺さる一言を言われたことで浮かんだ涙に対しても大ゲサだなー、と心ない言葉。馬子にも衣装ってヤツだな、とからかっていたリボーン君ですらビアンキと一緒に慰めてくれた。
01
お出かけしよう。