体調もまだ完全には回復せずに時折みんなに支えてもらいながらも旅路についた。
セスナが墜落したり花京院が暑さにやられたりもしたがそれでも誰も欠けていない。

ジョースターさんが船をチャーターした。一体どこへ向かうのか地理が苦手だった私は全く分からないままでいる。
承太郎がジョースターさんに同じような事を聞くと人に会いに行く、との事だった。
ホリィさんが死んでしまうまでタイムリミットがあるのにこんな事をしている暇はあるのだろうかと思うが、策士のジョースターさんの事だ。何か理由があるのだろう。

ちなみにその話は私がこの間倒れてからごはんを頂いている時に初めて聞いた話だ。
不本意ではあるのだが、敵スタンドに攻撃された事である程度信頼をされたのかもしれない。皮肉な話ではある。

強く当たる潮風に前髪が崩れる。もう何度手櫛で整えたか分からないけれど、ジョースターさんがそろそろ着くぞと島を指差して言うからもう整える必要もないだろう。船のスピードが徐々に遅くなった。


砂浜から少し進むと人の声がうっすらと聞こえるようになった。
私以外もみんな聞こえているようで、ちらちらを周りを伺っている。
唯一承太郎とジョースターさんは一点も見つめていて、もう既に声の主を見つけているような様子だった。

「アヴドゥル…?」

ポルナレフもその人影を見つけたようだ。
私もそれに少し遅れて人影を認識すると小首を傾げる。当然と言えば当然なのだが、全く見覚えの無い人物だった。少しくすんだ生壁色をした髪をいくつかにまとめ、後れ毛をひとつにまとめている。肌は褐色でどこか中東あたりの人間なのだろうかと思わせる風貌だ。

と、ここまで思ってポルナレフのあげた声を思い出す。アヴドゥル?おかしい、彼は亡くなったのだと私は聞いたのだが。
鶏に撒き餌をしている人物はジョースターさんの知り合いらしい。私たちをちらりと振り見て今まで数日間で見ていた中で一番の真剣な表情を作ってみせた。

「あの人はアヴドゥルの父親だ。ワシが一応話をしてみるが…どうなるかは分からん。」

もし実の息子が旅の最中で死んだとなれば、私たち一行は家族の人達にとっては疫病神以外の何物でも無いのは確かだ。
そんな人間が自分の住んでいる島に一同に会して自らを訪ねてくる、なんて悪夢極まりないという所だろう。

それでも、とジョースターさんは彼に話をしに行くと言う。
私たちに背を向けて話しかけに行くもアヴドゥルという方の実父は声を荒げて拒絶した。当然の結果ではあるのだが、ポルナレフが特にショックを受けているようだった。

彼とアヴドゥルさんはきっと仲が良かったのだろう、と感じさせられるような場面でこちらもずきりと心が痛んだ。

  
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