日光を乱反射させる海を花京院と眺めながら話していると、どうやらあの彼は本物のアヴドゥルだという話だ。
私は騙されていたのかと悲しさ半分と呆れや諦めや憤りが混ざったものが半分という心持ちでいたのだが、どうやらポルナレフにもその話はしていないらしく、今も鶏に餌をやっていた彼の事をアヴドゥルの実父だと思っていることだろうという事らしい。
というのも、彼の少しの行動で彼は本当に死にかけたらしくそれを反省させるためのきつい灸らしく、それにしてはきつ過ぎるとポルナレフに同情しなくもないが花京院達の行動も間違いではないだろうと思った。
遠くで煙草を吸っている承太郎も勿論アヴドゥルさんが生きている事も知っているらしい。
「承太郎も僕も途中ですこし笑いそうでね。ポルナレフがショックで固まっていて助かった。冷静な時のポルナレフだったらきっと気付かれていただろうから。」
愉快そうに大きな口を三日月にして笑う花京院は年相応でいたずらっ子のようだ。
けどショックで固まるのも計算の上なんでしょ?と問うとまあね、と言う辺りは策士なのだろうなと思うのだが。
折角海に囲まれているのだから一度スタンドをしっかり見せてくれと承太郎や花京院に懇願された。
確かに見せない義理はないか、とスタンドをしっかりと発動させてみることにした。
エンヤと戦った時は申し訳程度の攻撃で指から少し強力な(と言っても結構な威力なのだけれど)水鉄砲を撃ったくらいしか出来なかったものだからどうせだから試し撃ちも兼ねようと思う。
しっかり発動させるとなると強制的に足はヒレになってしまうらしい。動くには匍匐前進するしか無いというのがいかにも厄介だ。
最終的に承太郎に軽々と持ち上げられ海に入った訳だけれど、流石元々海で発動しただけあってかなり居心地が良い。
少し適当に泳いでみると想像よりもずっと軽やかな移動が出来た。陸で動くのとは大違いで、スタンドを発動する時は常に海だか水だかの中に居るべきじゃあないのかとさえ思う。
試しに拳銃を作ってみると、殺人用と言ってしまうと私の何か大事な物が壊れてしまう気がしたが護身だと思えば十分すぎる威力のものが出来上がる。鉛で出来ている本物の拳銃と変わらないくらいの威力だと思えば良さそうだ。
「こんなもんかなあ。もう少し大きいものも作れそうだけど…これ以上やると周りの魚が死んでしまいそう。」
手の内にしっかりと握り込まれたハンド・キャノンを水に還す。すると先ほどまでの鉄の感覚が嘘のように消えてしまうのだからスタンドとは不思議なものだ。
承太郎と花京院を振り返ると二人は少し面食らったような、何かに感心するような、微妙な表情を浮かべているものだから私もそれに釣られて微妙な表情になってしまう。
何か私は彼らの嫌な思い出でも思い起こすような事をしてしまったのだろうかと不安になってしまう程だ。
「あの…」
声をかけるといち早く我に返ったのは花京院だ。はっとしたように少し背筋を伸ばしてから一つ咳払いをして口を開く。
「ああ、ごめん…。君みたいな華奢な女の子がそんな拳銃を撃ってるなんて、なんだか不思議で。」
ごめんね、ともう一度花京院は苦く笑いながら私に謝る。
ああ、確かにそうだ。普通女の子でしかもセーラー服を着ているような女の子は銃なんて持たない。
「だがオメー…そこまで装飾もしっかり具現化出来るってのはどういう事なんだ。」
いつの間にか承太郎も我に返ったのか私に問う。その視線は刺すようで、私に何か疑問を抱いているような風だ。
もしかしたら元軍人なのかもしれないなんて思っているのかもしれない。勿論私はただの女子高生である…はず。少なくとも本物の銃に慣れていないし、そもそも触れたことさえ無い。
ただ少し拳銃に興味があった時期があっただけだ。中学生…中学二年生くらいの時に少し銃とか鎖とか、そういうものに憧れただけだ。ぐっ…頭が!
「ちょっと拳銃がすきだったダケダヨ」
顔の半分を海につけて、ぶくぶく泡を立てながらそう答えると承太郎は合点いったのかそうか、と短く言って元の仏頂面に戻る。
花京院は小さく笑っている。彼もそういう事があったのだろうか。あったのだろうな。
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