「ちょ…」
落ちました。ええ、それはもう見事に。
目の前にテレンス・T・ダービーと名乗る男が現れたと思ったら色々とあって穴に転落するハメになっていた。
承太郎を落とそうというもくろみだったのだろうが、承太郎のすぐそばに居た私も巻き込まれてしまったようだ。
ジョセフさんと花京院も同じように落ちることになったのだが、残っていたアヴドゥル、ポルナレフ、イギーに何やら言葉を発していた。
きっと三人には私たちよりもDIO討伐を先行させてくれと言ったのだろう。
「っつー…、ってあれ…ここ………海がある」
「この潮風…」
「……ここは一体…」
口々にこの不思議な空間に意見する。
真夏の小島、御丁寧にヤシの木まで生えているのにそのど真ん中にあるのはテーブルとゲーム機、それから本棚と扉。
これは一体どういう事なのだろうか…。
私たちが現状を把握するのに悪戦苦闘している中、テレンスは薄く笑いを口元に浮かべ執事然としている。
「なにかお飲みになりますか?もちろんこの飲み物類は本物です。毒も入っておりません」
小さいテーブルには瓶に入った飲み物とコップがいくつか置かれている。
とは言われたものの、敵からの物なんて口にする気なんて起きない。
「館の中か?ここは?」
真っ先にジョセフさんが口を開く。
やはりジョセフさんは機転が利くからこういう時にとても頼りになる。
「そうです」
それに対してテレンスもどこ吹く風という様子で眉一つ動かさず対応する。
「…館のどこだ?」
「それは言えません」
「地下か?」
「そうかも……」
「そうかもって、あんまり自信無いのかな」
「そうかも……」
「冗談言ってる場合じゃあねーぜ、お前ら」
小声で話していたらすかさず承太郎がツッコミを入れてくる。うーん、爽快。
そうこうしているとジョセフさんがドアを開く。
しかしそのドアは某アニメよろしくどこか他の空間と繋がっているなんてことは無かったようだ。
「『スタンド』か?この幻覚は?」
「そうです」
「きさまのスタンド能力か?」
「ちがいます」
「DIOのか」
「ちがいます」
「YESかNOかでしか答えられないのかな、あのひと」
「そうかも…」
「……」
「誰のだ?」
「いう必要はありません」
「SPW財団の情報によるとあと2、3人のスタンド使いがいるらしいが、そうか?」
「言う必要はありません」
そんな押し問答が続くものの、やはり得る情報は無いようだった。
テレンスも嘘はついていないと言うし、今はそれを信じるしかないようだ。
そうしているとテレンスは近くの棚を開けて何かを取り出した。
大切そうに持っているそれは小さい人間の形をしているようで、ぬいぐるみか何かなのだろうがとても不気味だ。
嫌な予感がする。…そう、確か兄は人の魂をコインに変えるスタンドだったような。
「ねえ、これって…」
「ああ……こいつ、まさか……」
そのまさかだ。なんてことだろうか。彼のスタンドは魂を生きたまま人形に押し込めるものだと言うのだ。
しかもその人形はうわごとのように言葉を喋る様になる。
そんなものが近くにあるだけでノイローゼになりそうなものだが。
・・・
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