ヌケサクがぶつぶつ言いながら部屋の中央の棺桶に手をかける。
彼が言うにはこの中でDIOは眠っているのだろうと。
…しかしさっきまで階段の上にいた人間がのうのうと棺桶で眠るだろうか?
周りに警戒するも、ジョースター家の血をひかない私は本能的にDIOに感付く事は出来ない。
ヌケサクがフタを動かす。それに固唾をのむ。一度たりとも目を離したら死ぬような気がして目が乾くのも忘れてその一挙一動に注視する。
なのに、瞬きさえしていなかったのに。

「…オレ?」
『ッ!?』

その棺桶で血まみれになっていたのはヌケサクだった。
まるで瞬間移動したかのように一瞬のモーションもなく棺桶で輪切りにされたヌケサクはそのまま日光を浴びて塵になってしまった。

「野郎、面白くなってきたぜ…」

「今、ヌケサクが棺桶に入った……いや、入れられた瞬間を見たか!?」
「いや!…しっかり見ていたのに見ていなかったッ」
「私もです。瞬きさえしていなかったのに確認できませんでした」
「ポルナレフの言う通りこれは催眠術でも超スピードでもない……」

催眠術でも超スピードでもないのに起こりうる超常現象、その正体に私たちならばひとつ心当たりがある。
そう


「まさか…スタンド…ッ」

自分の口から出た言葉も信じられない、いや、信じたくないというのが正しいのかもしれない。
そんな、一瞬で人を殺せるようなスタンドがこの世に存在していいものか。
そんな、完璧なスタンドが…

「恐らくそうじゃろうな。しかし、ここで止まっていられるほどに時間に猶予はない。」
「日が完全に暮れちまったらそこからはもう奴の手中だ、日を改めるか…」
「日が暮れる前にDIOと戦うか…」

ならばここはもう選択肢なんてあって無いようなものなのは明白だった。
皆一様に口を閉ざし、これから始まる地獄のような戦いに思いをはせた。

「…ポルナレフ、名前、花京院」
「やめてください、私は…身寄りの無い私を拾ってくれた承太郎…それから、快くそれを迎えてくれたみんなにとっても感謝しています。逃げるなんて事絶対にしたくないんです。ここからの戦い、絶対に勝ちますよ」
「僕はこのスタンドがあったので友達が今まで居ませんでした。でも、皆さんに会ってからそんな生活が夢だったかのようで…いや、これは不謹慎だな。けれどそのくらい良い旅だった。やりましょう、DIOを」
「俺もだぜジョースターさん。そんな薄情な事言うなよ、50日も行程を共にした仲間だろ」
「お前たち…」

既に日は沈みかけ、空は赤みが買っている。私たちの時間は刻々と減っているのだ、悠長にしている時間は無い。

「行きましょう、ジョースターさん。みんなも」

  
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