作戦を簡単に言うとこうだ。
承太郎とポルナレフ、それから私と花京院とジョースターさんでDIOを挟み撃ちにする。
DIOの位置は承太郎とジョースターさんが大まかに把握できるようだ。

DIOをどうにかおびき寄せて接触、決めていた位置に誘導する。
そしてその誘導した先はスナイパーの格好の餌食になれる場所という訳だ。
そのスナイパーとはもちろん私。人の居ないビルの屋上、ライフルを寝姿勢で構える事で下半身が魚になるデメリットを解消。
完璧な作戦だ。
先に私はその所定のビルで待機、後はDIOが来るのを待つのみだ。

空が赤から群青へと変わる時間。待ち始めて少し時間も経った。
遠くで何かと何かが大きくぶつかるような音が聞こえる。花京院達が回ってきている方角だ。
うまく接触できたのだろう、着々とこちらへ向かっている様子がわかった。

強く吹き付ける風は私の髪を大きく乱す。これでは弾道も見えづらいがそこは私の腕の見せ所だ。
細くのびる銃口は気休め程度のサプレッサーを通してまっすぐに大通りを見据えている。スコープを覗き込むと、遠くから鳴る爆音に足を止める人や踵を返して来た道を戻る人が捕らえられる。
爆音は着々と近づいてきている。手が汗ばむ、喉が張り付くように痛い。

私の一発でDIOをしとめられれば万歳三唱、そうでなくてもフォローはあの強い仲間達だ。
一応と弾丸は銀製のものをどうにか模倣することにした。基が水なのだから、見た目だけしか変わらないのだけれど。
細く長く息を吐き集中する。すぐそこまで爆音は迫っているし、危険を察知したのだろう一般市民は道路に姿を現さなくなっていた。

結局記憶が戻る事は無かった。思い出そうとするたびに喉元がひやりと冷えて吐き気が押し寄せてきた。
そのたびに承太郎は私を気遣わしげに伺ってきてくれたし実際気を揉んでいたように思う。
純粋に嬉しかった。好きだと思った。

ホテルでの会話をぼんやりと思い出す。そうだ、事の最中に私は言ったのだ。
「この戦いが終わったら、承太郎の家に居させてくれないかな」
と。
迷惑をかけるのは百も承知だが私にはそれしか思い当たらなかった。
何せ一文無しなのだ。
そうしたら承太郎は短く「そうだな」とだけ返したのだった。
その一言だけで私はとてつもない幸福感に覆われて、恋慕をより強くした。
もしかしたらあの夜は一生忘れない思い出になるのかもしれない、そう思うほどに。

「…来た」

周りの音が聞こえなくなる。それは集中によるものだ。
視界にだけ精神を使う。
巻き散る煙、一番に見えたのはジョースターさん。そのすぐ後ろには花京院。
ジョースターさんは何か口を動かしている。DIOと会話しているのだろう。
そして見えるのは黄色い影。DIO本人だ。
しかしここですぐに引き金を引くわけにはいかない。
タイミングを待つ。向こうから合図が出てからタイミングを図る。

花京院から合図が来た。ほんの少しの手のしぐさ。
もしかしたらDIOはそれに気がついたかもしれないが、気がついたところで私の位置はわからないだろう。
必要なところ以外の自分の周りには水を張り、光の屈折による視覚の霍乱、迷彩化がされているからだ。
たぶん、口頭で場所を伝えてある花京院達ですら『そこに居る筈である』以上の認識は持てないだろう。

「…」

じっとその時を待つ。あまり長く待ちすぎては機を逃す…が、外すわけにもいかない。
弾道が見られてしまえば終い、ジ・エンド。

引き金に指をかけ、少しだけ力を入れる。あと少し、あと数秒…

(今ッ)

銃の反動を肩に感じる。
1発目、狙ったのは足の甲。少しでも動きを止めて、次の瞬間に2発目に急所を狙う。
着弾を確認する前にリロードをしてすぐに2発目に取り掛かる。
1発目は無事DIOの足の甲に着弾。奴も不意な攻撃には弱いのか、あたりを見渡している。
そして2発目。弾道は完璧だ、DIOの首…チョーカーど真ん中。
彼はまだ首と体のつなぎ目が完全に治癒していないのを私は知っていた。あの暗闇に包まれた館で、月光に照らされたあの四肢は目に焼きついて離れない。
ならばそこを狙うべきだ。きっと、彼の弱点はそのつなぎ目だろうから。






  
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