驚いた事に花京院と名乗ったこの人は純日本人らしかった。
承太郎に比べて背丈は劣るものの、それでも180はあろうという身長やガタイにてっきり外国の人かと思っていた。
承太郎を含めこれで日本人は三人。この三人で話すときは基本的に日本語になるだろうという事だった。
ジョースターさんも少しではあるが日本語を解しているようだから、幾分か同行が楽になるだろう。
もう一人アヴドゥルという男性が同行していたのだが、今は亡くなっているという話だ。それだけこの旅が危険なのだと今一度釘を刺された。
同行、といえば。この旅の目的を拝聴させてもらった。なんでもDIOという人間だか吸血鬼だかが首から下がジョースター家の人間だとか、ポルナレフの妹の敵の上司だとかいう話だ。
後者はそうにしても前者に関してはにわかに信じられないが、そうなるとスタンドの存在も信じられない事案になることから、頭で理解はしなくともその事実を飲み込むことにした。
スタンドについても軽く話をしてもらった。何でも精神のヴィジョンだとかなんとか。このスタンド、発現した時は全く分からなかったけれど段々とこの体になじんで行くように私の思考には使い方が浮かぶようになった。
最初はただただ水の中で素早く泳げるだけかと思ったけれどどうやらそうじゃあないらしい。
私のスタンドは水を主とするスタンド。攻撃に特化しているように思える。実戦で使ってみないことには分からいのだから断言は出来ないのだけれど。
という事を承太郎に話してみたら鼻で笑われた。少し怒ったような仕草をしたら少し笑って拗ねんじゃねえよと言われたから、私もそれにつられてクスリと笑ったら花京院にもう既になじんで来たみたいで良かったとまた笑われた。
同年代同士息が合うのかもしれないのだけれど、そこにポルナレフも少し交えて話すようになった。時折白熱する英語が段々聞き取れなくなってコーヒーを飲みながら新聞を読んでいるジョースターさんの方へふらふらとゆっくり話しに行ったりしたら、優しく構ってもらえた。
時折ジョースターさんは真剣に地図を開いていたりするから、様子を伺わないといけないのだけれど。
敵なんて現れなければいいのに、とも思ったけれど時折送られてくる刺客は私たちにとって大きなヒントを零すかもしれない。ほんの少しの希望だがそこを潰していかないことには始まらないらしかった。
私は特別DIOという男に恨みつらみはないのだけれど、みんながこんなにも必死になっているのだから私も彼らの為に命をも燃やすつもりだ。
なんせ一度死んでいる命。命の恩人達の為に力を惜しむ訳にはいかない。
…なんて、私と承太郎、それから花京院とポルナレフで雑魚寝しているような時に考える事でもないのだろうけど。
何でこんな部屋割りなのだろうかと最初は思ったがそういえばジョースターさんはこれから少し旅の方向性についてまとめてみると言っていた。年上なりの気遣いで私たち若者は寝かせておいてくれるのだろう。
もしかしたら全くと言っていい程身の上が明らかでない私の情報をかき集めているのかもしれない。こんな得体の知れない人間、まず刺客だと疑うのは当然の筈であり、承太郎含めみんな私をどこか警戒している様子は伺えた。旅の核心に迫るような話や、個人のスタンドの話を全くと言っていい程しなかったのもそのせいだろう。
しかし夜はアンニュイだ。物思いにふけるのには適しているように思った。…少しネガティブな方向に思考が向きがちだが。
しかしネガティブな思考をしようものなら耳をつんざくポルナレフのいびきで中断されてなんだかどうでもよくなってくる。ポルナレフはどうやら寝ていてもムードメーカーのようだった。
「何笑ってるんだ。」
みんな寝静まっていたと思っていた時に聞こえたその小さい声に少し動揺する。隣の布団で寝ていたと思っていた承太郎はどうやら起きていたようだ。
「起きてたの?」
小声で様子を伺うと、帽子を外した承太郎(そういえば初めて見る)がうっすら目を開けてにやりと口角をあげてからずっとな、と言ってみせた。もしかしたら私が百面相しているところも見ていたのかもしれない。
それが恥ずかしくて、おやすみ!と吐き捨てて布団にくるまる。
承太郎はクールなイメージだが、時々私をからかうのはそれくらい私に何か興味があるのだろう。例えば彼は海に興味があると世間話の時に小耳に挟んだからそれで私の能力について興味があるというのが一番の心当たりだ。
それはそれでなんだか残念だなあとか意味の分からない感情は放っておいて、次の日にはもしかしたら襲われるかもしれないし、下手をしたら今夜中にだって襲われかねない。体力を回復させるためにゆるく瞼を閉じた。
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