息を飲む。初めて私は人とまともに対峙し、傷つけた。
これは私たちの目的の為だ。仕方が無いのだが、しかしやはり初手ともなると息が詰まるような思いだ。
彼女がどのような人なのかは分からなかったが、DIOからの命令で私たち(この時点では正しくはジョースターさん達になる)を殺しにきたのだという事は明白ではあった。彼女らはプロなのか宗教じみたソレからなのか、私でも分かる殺意をむき出しにしてきたのだ。返り討ちで入院、というのはジョースターさん達にしては少しリスクが残るという状況なのだそうだ。

そういう事をまともに口に出しているみんなに少しゾッとしなかったのかと問われれば勿論したに決まっている。
なんせ一番リスクが少ないのは殺してしまう事だと口にしているようなものだ。
勿論人殺しをどうとも思っていないという訳ではないだろうし、彼らは敵であれ死を悼むだろう。
その証拠に今までは多少のリスクを覚悟の上で出来るだけ死ぬか死なないかの重傷にして病院に送っていたという話を後で花京院から聞いた。
彼やポルナレフも元々は敵側に居たと聞いたが今は元気に同行までしているのだ。

しかし、やはりその死ぬか死なないかというレベルで人を痛めつけなければいけないという状況に精神は削られていたように思う。

特段私のスタンドは直接を人を殺すというものではなかった。
水鉄砲のように水を圧縮させて弾のように飛ばすと、豆腐みたいに人(この時はゾンビだったのだが)の肉はこそげ落とされていったのだが。
それに水素を抽出して簡易的な爆弾を使う事も出来るようだった。あくまでこれは最終兵器にとっておこうと私が勝手に決めたから、今まででは使った事は無い。

しかしこのままでは皆の足手まといになってしまいかねない、といつもより少し多く食事をとってみたりしたのだが睡眠時間は段々と減っていっていたように思う。
心なしか少し脂肪があったお腹がへこんだかもしれない。これは常に彼らと共に旅路についているからというのもあるのだろうけれど。
あとはうだるような熱さに弱くなった。すぐに気を失いそうになった。しかし気力だけを振り絞ってなんとか今は耐えしのいでいるがいつ倒れるか自分でも分からない。けれどそんな事で仲間達に迷惑はかけられない。

傷つけたのは老婆だった。エンヤというように名乗っていて、私たちに優しい言葉で囁きかけて殺す予定でいたようだ。
途中ポルナレフが何事かさせられたようだがここでの明記はよしておこう。彼が便器をなめてしまっただなんて面白い事態は。
老婆は気絶させられている。目が覚めたら何か吐くだろうという事だった。

老婆の頬には一筋赤い線がまるで意図的にペンで引かれたようについていた。それをやったのは私だ。弾丸が彼女の頬を擦った。私はそれを見て息が苦しくなる。まるでそれは私が深海に居た頃のような息苦しさだ。人が死の間近に居ると共鳴するようにこのようになってしまうのは改善しないといけないと心で強く思う。

  
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