ジョースターさんが襲われた。
エンヤと呼ばれた老婆が目の前で無惨に殺された姿にふらりと視界がよろけ、ぼやけたが承太郎と花京院が間一髪支えていてくれた。しかし承太郎も花京院も出来るだけ老婆から目を逸らしているようにも見えた。
その手の感覚だけを頼りに意識を現実に向ける。ショッキングな赤色を視界から逃がすように声を上げた男性をみやる。
彼はなんだか老婆に向かって話しているようだがこの状態では聞こえているかどうか分かったものじゃあ無い。

ジョースターさんは老婆にかけよって、DIOについて何か知っているだろうと聞き出している。新しく現れた刺客に見せつけるようにDIOへの忠誠心なぞ捨てていることを証明してみせろ、と。

内側から出てきた管はポルナレフが切り刻んだ。切れ端は日光でさらさらと溶けていた。
そして冒頭。ジョースターさんがスタンドによって攻撃された。
というのも地味といえば地味なのだが、本体が傷つけばそれが何倍にもなってジョースターさんへ伝わるというものだった。スタンドは脳内に進入していて、万事休すかと思われた。

承太郎が激昂するが私たちが必死に止めた。彼が結果をよく考えもせず動くなんて珍しいという驚きと、それだけ彼はショックを受けているんだと思うとなんだか悲しかった。
花京院がジョースターさんにひとつ頷くと彼らはポルナレフを連れて走り去って行った。
テレビを探して念写しながら攻撃するのだろう。私は攻撃に水を必須とする。血液中に水が入り込んだともなると危険きわまりない。承太郎の隣で彼が無茶をしないように見張っておかなければ。

「……」

緊迫した空気が私たちの間には流れている。
しかし緊迫した状況なのは私と承太郎の二人だけであって、ダンと名乗った刺客はまるで私たちが友人であるかのような余裕の振る舞いをしている。
大変腹立たしい。一発くらいビンタを浴びせても構わないとも思うが、それがジョースターさんに跳ね返る事を思えばその手も引くというものだった。

ダンは堀をじろりと眺めてから承太郎を一瞥して私にもひとつ視線を向ける。
するとダンは何を思ったのか私の首に腕を回して腕にしまった後に承太郎を見て声を上げる。

「堀か…。この掘…飛び越えて渡ってもいいが、もし躓いて足でもくじいたら危険だな…。向こうの橋まで行くのもめんどくせーし。」

何故急に私を拘束したのか思考が追いつかずに承太郎に驚いた顔をそのまま向ければ、承太郎からも似たような顔を返される。勿論承太郎はそれでもクールなのだけれども。
そんな私たちを見て気を良くしたのかダンは一段と私を腕の中に閉じ込めて悪い笑みを浮かべながら承太郎に命令をしている。
内容も酷いもので、その堀に手足を引っ掛けて橋になれということだった。
承太郎からすればかなりの屈辱だろう。黙りこくっている承太郎に腹が立ったのか、ダンは顔をしかめて自分の足を波止場の杭にぶつける。
この痛みはきっとジョースターさんにも伝わっている事だろう。

それからも承太郎は腕輪を万引きしろと言われたり、靴を拭かせられたりと散々な様子だった。
私は周りに侍らせるような形にされ、少し体を触られたがそれくらいどうってことは無い。承太郎は怪我を負っているのだ。
しかし承太郎は愉快そうに笑って、仕返しが楽しみだとかなんとか口にしていた。
私もメモをとろうかと思ったが紙の類いは持っていない事に気がついた。また今度手帳でも買おうと思ったが金さえ手持ちが無かったのだった。ああ、日本の硬貨はあったか。

そうこうしていたら急にダンの額がぱくりと割れ、血液が噴出する。きっと花京院がやってくれたのだろう。
無惨にも逃げようとした挙げ句に承太郎の足下に跪いているダンに哀れだとしか思えなくなっていたのはさっきまでの怨念が私にもあるからなのだろう。エンヤの時とは全く違う、もっとドス黒いものが腹の底から沸き上がって笑ってしまいそうだ。このうだるような熱さにやられたのもあるのかもしれないし、日頃の疲れもあるのかもしれないが、どこか人に対してとげとげした態度を取ってしまっているような。

その後も女の子に取り憑いたりしそうにしていたようだが花京院はそんなヘマはしないだろうという絶対的な自信から承太郎は堂々としていたし、勿論花京院はそんなヘマはしていなかった。

「ごめん承太郎、承太郎の前に一発私からいいかな?スタンド使わないし。」

事の顛末を静かに見ていた私が急に喋ったので承太郎もダンも少し驚いていたが、承太郎はその後頷いて私の提案を許可してくれた。
私はダンを膝立ちにさせる。それだけでも骨がかなり折れているのであろうダンはキツい、痛いと漏らしていたがお構い無しだ。私はひとつ深呼吸をする。

人より少し長い指をダンの頬に当てて私はにこりと笑ってみせる。ダンはそれに不思議そうな顔を向けたが、すぐに顔色を真っ青にする。そういえば最近痩せたのもあって、指をほっそりした気がする。

「マジでお前ねえわ」

私の声の直後には乾いた破裂音が響き渡った。

  
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