部活も終わり、部員たちのドリンクボトルを回収しているとパチリと目があった。
「えっと、月島くん」
「はい、月島です」
碧の事を見ていたのは今日入部したばかりの月島で、彼女のことを観察するような目でジッと上から下まで穴が開くほどに見ていた。(現在進行形で見ている)
見られることには慣れているが、こう近場からじっくり見られるのには些か抵抗がある。
まるで動物園の動物にでもなったようだ。
「私に、何か用かな?」
「…やっぱり」
碧が口を開くと、彼は手を顎にかけ少し下の位置にある彼女の顔をまじまじと見つめた。
「御輿さんて、女子ですよね?」
「え?」
それは意外な言葉だった。
碧はまだ自分が女だと弁解していない。
その場合大体が男性だと誤認識しているので、こんな言葉を聞いたのは生まれてはじめてだ。
「そう、だけど…」
初めての出来事に動揺を隠せず、まるで不審者を見るような視線を彼に向けてしまった。
悪いことをしてしまったかもしれない。
月島の『御輿さん女性ですよね』発言に、彼と一緒にいた山口は驚いていた。
彼は碧が女性だと気がついていなかったようで、月島と碧を忙しなく交互に見ている。
「よく分かったね。初対面の人は大体間違えるのに」
自分で言っていて何だが悲しくなってくるが、事実なのでしょうがない。
この容姿、更にはこの身長なので女性だと思う方が難しいのだ。
「だって、体型とか仕草とか女性っぽいじゃないですか」
最初はそっち系の人かと思ったんですけど、と月島は軽く笑うが碧は笑い事ではない。
彼がその考えで自分のことを見なくて良かったと、心の底から安心した。
「まあ、見た目は完全に異名通りですけどね」
異名とはきっと『王子』のことを指しているのだろう。
彼は自分のことをフォローしたいのか貶したいのかよく分からない。(でもきっと貶した時の方がいい笑顔だったので性格は良くないのだと思う)
「1年の間でももう知れ渡ってるんだ…」
「1年の間、ってか僕の中学でも有名でしたよ『烏野高校の王子様』は」
中学でもか、と碧は驚いたが、そう言えば下校中に知らない制服の女子からプレゼントや手紙を貰うことがあった。
その中には中学生もいたのかもしれない。
相手が中学生ってだけで、何だか悪いことをしている気分になってしまう。
「じゃ、僕戻りますね」
失礼します、とペコリと頭を下げる月島に、碧は少し控えめに手を降るとドリンクボトルの入ったカゴを持ち直し給湯室へと向かった。
春の王子は些か憂鬱
それは懐かしいあの日
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