容姿の良い二人が並ぶと絵になる。
逆ナンの嵐になるかと思えば、あれ以来一切声をかけられることはなく、有意義に買い物をして過ごしている。
きっと『お近づきになりたい』という範疇を越えて『踏み入れてはいけない聖域』にまで達してしまっているのだろう。
ただ変わりと言ってはなんだが、彼らが入った店には次いで女性客が大量に入店してくる。
見るのはタダだ。
「碧ちゃんていつもどこで服とか買ってるの?」
碧が着ているものは殆どがメンズで(レディースだと丈が足りなくなってしまう)格好は至ってシンプルなんだが一つ一つに気品が感じられる。
及川はそんな彼女の着こなしが気になったのか、隣でシャツを選んでいる彼女に尋ねてみた。
「うーん、大体が撮影のときにそのまま買い取りしてるからなあ…あ、でもよくG●とかは行きます」
今日のパンツはG●ですよ、と笑う彼女が眩しい。
高校生と言えば身なりに気を使いブランドにも敏感になると言うのに、目の前の人物は大衆向けのリーズナブルなブランドを口にした。
顔やスタイルがいいと着るものを選ばないとは本当の事だったようだ。
それから宛もなくブラブラと街を歩く。
目についたカフェに入ったり、雑貨店に入ったり、たまにはプランのないこういった休日も良いな、と及川は隣を歩く碧の横顔をみて頬を緩めた。
「及川さんなににやけてるんですか」
「ん?碧ちゃんが可愛いなと思って」
からかったつもりだった。
ちょっとした冗談のつもりだった。(いや、可愛いのに間違いは無いのだが)
彼女には不意打ちだったのだろうか。
きれいな顔がみるみる赤くなり、思わず言ったこちらも赤くなってしまう。
まるで付き合いたてのカップルのような反応に笑えなかった。
「そ、そういうのは彼女に言ってあげてください」
声が裏返り、こういったことに慣れていそうな彼女の思わぬ一面を見て少しだけ優越感に浸った。
彼女のこんな表情を見れた人間は一体どのくらいいるのだろう。
地球上で自分だけだったら嬉しいな、と柄にもなく思ってしまったりして。
それと同時に自分はこんなにも独占欲の強い人間だったのか、と新たな一面を見つけた。
ほら、見て。
今もたくさんの人たちが碧を見ている。
残念だけどこれは(今は)自分ので、これから先もお前たちに渡す気は無いんだ。
及川はこちらを見ている人たちに心のなかで毒づきながら、見せつけるように彼女の白くて自分より少し小さな手を自分の中に納めた。
「……勘違いされますよ」
「碧ちゃんなら大歓迎」
「(そういう意味じゃないんだけどな…)」
ちらりと握られた手をみると、所謂恋人繋ぎのようなものになっていて、自分の手とは明らかに骨格の違うさわり心地に自分の性別はやはり女で良いのだと再確認した。
しかしパッと見は男性なわけで、つまりは男二人が仲良く手を繋いでデートをしている光景に見えてしまうわけで。
「(ま、及川さんがいいって言うんだからいいか)」
自分の中でそう自己解決した碧は、甘えるように繋がれた手に少しだけ力を込めた。
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