「ありがとう」
とにかくこの好意を無駄にしたりおちょくったりしたら、間違いなく彼は不機嫌のどん底に落ちるであろう。(それはもう試合に支障が出るくらいに)
「キャー!!及川さーん!!」
「やっと来たぁー!」
碧が受け取ったジャージを羽織りベンチに腰かけると、女子達の黄色い声が上がった。
すでにコートに入りポディションについた部員達が何事か、とそちらを一斉に見る。
そこには3分ほど前に碧と別れた青城の王子様の姿が。
そういえば以前、澤村と菅原が「碧が来たらすぐ分かる」って言ってたのを思い出した。
その時はよく分からなかったけど、今なら分かる。
チラリ、と碧はコートを見ると、案の定イケメン嫌いの田中がすごい顔で及川を睨んでいた。
影山も彼を睨んでいたようだが、(彼は常に何か睨んでいる印象があるから定かではない)少し焦っているようにも見えた。
及川はそんな影山に気がつくと「元気に『王様』やってるー?」と、先程の爽やかな笑みとは違い、明らかに嫌みの隠った笑みを彼に向けた。
影山はそれに憤慨するわけでも不機嫌になるわけでもなく、ただただ、これから目の当たりにするであろう彼の強さに身を強ばらせる。
ピーッ!
そんな彼の不安を煽るように、第三セットを告げる笛が鳴った。
キュッキュ――
――ダンッ!!
キュッ――
及川の煽り(決して彼を煽っていたわけではないが)が効いたのか、イケメンへの憎しみと妬みを込めて田中がいつも以上に点数を稼いでいる。
それに負けじと日向も点数を稼ぎ、影山と月島の長身コンビ(これを本人たちの前で言ったら怒られそう)もいい仕事をしている。
しかしこの二人は『青城を相手にしている』と言うよりは『互いを相手にしている』と言った方が正しいかもしれない。
結果論的には良しだが、どうしたものか、と碧はそんな二人を見て苦笑いを浮かべた。
烏野優勢のまま試合は進み、ついにマッチポイントとなった。
青城は勿論苦い顔をしているが、烏野もそんなに点差が開いているわけでもないので油断はできない。
それにまだ、彼も来ていない。
「あらら〜ピンチじゃないですか」
首筋を伝う汗が凄く官能的だ、なんて何も知らない女子は思うかもしれないが、碧は正直言うと『菅原のが官能的だ』と脳内で決着をつけ隣にいる彼をチラリと見る。
「どうした?」
「、なんでもないです」
まさか目が合うと思っていなかった碧は、咄嗟にその視線をコートへ移動させた。
少し不自然だったもしれない、と頭を抱えたい駆られるが、そこは拳をつくりグッと堪える。
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