本日も晴天。
昼休みの残り10分、碧がそんな清々しい空の下を歩いていたら、ふと、見たことのある黄色い短髪を見つけた。
中庭の人気の少ない校舎の影、女子と二人で向き合うように立っている。
恐らく、告白であろう。
生憎、覗きなんて悪い趣味を碧は持ち合わせていない。
ただ視界に入ってしまったのは不可抗力だ。
事故だ。
「(だから月島くん、そんな顔でこっちを見ないで)」
碧がそちらから目を逸らそうとした瞬間、レンズ越しの彼の視線とパチリと交差してしまった。
みるみるうちに彼の表情は不機嫌になり、女子生徒に一言なにか告げると、あろうことかこちらへ向かってきたではないか。
必然的に女子生徒の視線も碧の方に向いてしまう。
今度はその女子生徒と目があった。(泣きたくなるくらい気まずい)
取り合えず愛想笑いを向けると、彼女は一瞬驚いた顔をしたあとフイ、と顔を背け反対方向へ走り出していってしまった。(当然の反応だ)
「こんな所で奇遇ですね、王子様」
「そ、そうだね」
いつものごとく張りぼてのような笑みを浮かべている月島に、碧の顔は自然と引きつる。
勿論、そのあとに会話なんてない。
心地よい春の風が二人を包むが、今は不穏な風にしか感じなかった。
「御輿さんて、付き合っている人とかいるんですか?」
「…え?」
すぐに立ち去れば良かったものの、二人ともその場から動かないでいた。
月島は恐らく本意だが、碧はまるで足を誰かに捕まれているように感じてならなかった。
その間どのくらいの沈黙があっただろうか、きっと長くて10秒位だったと思われるが、碧はそれが何分もの長いものに感じて息苦しさを覚えた。
だから意識が少し遠くの方にトリップしてしまい、彼の言葉を理解するのに一瞬のラグが発生してしまった。
「いない、けど、」
ようやく絞り出した声はカスカスで笑える。
言い忘れていたが、彼と二人きりになって緊張しているとかそんなではない。
告白を邪魔されたことならあるが、邪魔してしまった事は初めて故、彼にどう気を使っていいか分からなくなっているから頭がパニックを起こしているのだ。
その返答に満足したのか否か、月島は「そうですか」とその薄っぺらな笑みで口を開くと、彼はそのまま碧の前から去っていってしまったため、碧は小さくなっていく彼の背中をただ見送ることしかできなかった。
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