チームワークの欠片もない奴をうちの部に入れるわけにはいかない。
チームメイトの意識を自覚するまで入部届けも受け取らないし、もちろん練習にも参加させない。
そう言って澤村は二人を体育館から追い出した。
「まあ、バレーはチームプレーですからね」
練習が終わりドリンクボトルを回収していると、菅原が「手伝うよ」とタオルを回収してくれた。
どうやらもう一人のマネージャーは今日休みみたいで、碧は一人で後片付けを行わなくてはいけない。
と言っても数十人分とかではないのですぐ終わるのだが、碧は菅原の行為に甘えることにした。
彼は何かと気を使ってくれる。
こんな成りをしている碧だから、男子からも女子として扱ってもらえなく普通に力仕事とか頼まれる。
それにはもう慣れっこなのだが、バレー部は(とくにこの菅原は)碧を女子として扱ってくれることが多い。
帰りは家の近くまで送ってくれるし、重そうな荷物は代わりに持ってくれる。
遠目から見たら女性っぽい優男の手伝いを率先して行う少年、というなんとも薄い本が熱くなりそうな展開に見えてしまうのが困り者だ。(実際に菅原は同姓愛者なんじゃないのかと噂が流れた)
「ありがとうございます菅原さん。後は私やるんで、あっちの方手伝ってあげてください」
ボトルを給湯室まで運び終えると、菅原から持ってきてくれたタオルを預かり頭を下げる。
「どういたしまして。じゃあオレ体育館戻るから、何かあったら呼んでね」
菅原はそう言って微笑むと、碧に背を向け給湯室から出ていった。
きっと普通の乙女だったらあの笑顔と優しさにときめくのだろう。
菅原はモテない訳ではない。(男子部員の中では多分一番モテる)ただ碧が異端すぎて、その輝きに隠れてしまっていると言うかなんと言うか、なんとも不憫な話だ。
シンクの蛇口を捻ると、途端に冷たい水が溢れ出て碧の手の体温を急速に奪っていった。
冷たさで少し痛みを感じるが、そんなことは気にしない。
菅原のその魅力に気がついているのはきっと自分だけだな、と優越感に浸る碧に、その痛みは寧ろ好都合だ。
この赤くなった冷たい手を彼の視界に入れれば、きっと彼は両手で包み込んで自分の体温でそれを暖めてくれるだろう。
菅原孝史はそういう男だ。
誰にでもこうなのか、とも思ったが、碧以外には結構ドライらしい。(澤村情報)
折角なのでその好意に甘えさせてもらっている。(その好意に下心が含まれるのか定かではない)
キュッ、と蛇口を閉めるとポタリと一つ名残惜しそうに水が滴った。
人は彼女を王子と呼ぶ
私は王子、みんなの王子
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