御輿碧は高校に入ってから昼食というものを持ってきたことが数えるほどしかない。
「ねえ碧くん、昨日クッキー作ったんだけど、よかったら食べて」
「御輿くん、お弁当作ってきたから食べてくれると嬉しいな」
「碧くん和菓子好きだよね?これ、美味しそうだから買ってきたんだ。あげる」
「ありがとう、美味しくいただくよ」
Spring 's melancholy
「あ、」
「…ちわス」
昼休み、自動販売機に飲み物を買いに教室を出たら恒例のプレゼントラッシュに遭遇した。
碧が昼食を持ってこない理由がこれだ。
最初はお菓子の差し入れが多かったけど、最近はお弁当の差し入れも多くなってきている。
昼食を持ってきてしまった日には、なかなか消費できずにダメにしてしまうので(実際何度か傷ませてしまった)それ以来昼食を持ってくることはやめた。
それでも両手いっぱいになってしまう差し入れに、碧一日あたりの制限を設けようかと頭を悩ませる。
そんなこんなでお目当ての自動販売機にたどり着くと、そこには見たことのある少年がちょうど出てきたジュースを取り出しているところだった。
碧の視線に気がついたのか、少年がこちらを振り向くとハッとしたような表情をしてペコリと頭を下げる。
「こんにちは影山くん」
自分に近寄る碧の姿に、影山は少し驚いた。
「ホントに女子だったんスね」
「え、冗談だと思ってたの?」
目の前の人物が身に付けているスカートは、自分が一度も履いたことの無い女性特有の衣類だった。
歩く度にヒラヒラと揺れ、下着が見えるか見えないかギリギリのところをさ迷う。
性にはあまり関心の無い影山だが、これはとても官能的で思わず喉がなった。(もしかしたらギャップというやつに毒されているのかもしれない)
「そういえば、土曜日に他の1年生と試合することになったんだって?」
「はい、」
今朝、朝練が始まる前に澤村から伝えられた。
チームワークの意識を見せつけるためには、やはり試合で勝利するしかないと日向と影山が二人で考えたらしい。
じゃあどうせなら技量を見るために残りの1年生と試合をさせようと、これはキャプテンである澤村の考えだ。
負けたら当然彼らにペナルティが課せられる。(彼らというか影山に)
影山は中学時代『天才セッター』と言われてきたらしいが、3年が現役でいる間、影山はセッターとして扱わないというのがペナルティだ。
烏野にもちゃんと正セッターはいるし、影山なら他のポディションでも大丈夫だろうと判断したかららしいが、影山はどうも納得していないようだった。
「頑張ってチームプレー見せてね」
「っス、失礼します」
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