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『初めまして、パルデアの宝。あなたはこの国における特別保護管理対象に指定されたため、当施設の最高責任者である私の監視下の元、この部屋で生涯を遂げることとなりました』
『……?』
『今しばらくは私が主軸となってあなたの保護観察を担当致します。けれども、そう硬くならず……私のことはぜひ、親の代わりと思って接してくださって結構です』
『……?』
『ふふ、ご安心を。言葉やここでの過ごし方、この世界のこと全て、共に学習して参りましょう。成長を心より願っておりますよ。……あなたの御身に祝福があらんことを』



…………。


『ごきげんよう、なまえ。いかがお過ごしですか?この世界にも慣れた頃でしょうか』
『……ママ。ご本……』
『おやおや。何かものを言う時は、丁寧な言葉遣いをすると印象良く自分の気持ちを伝えられますよ。それと、ご挨拶もお忘れずに』
『……。ママ。おはよー、ございます。なまえ、ご本読みたいです……』
『うふふ、よくできました。ええ、もちろん。そう思って今日はこちらの絵本をお持ちしました。パルデアに古くから伝わる有名なおとぎ話なのですよ。なまえは気に入るかしら?』



…………。
どんなお話だったっけ……。


『ごきげんよう、なまえ』
『……おはようございます、ママ』
『今期の発情期ヒートは大変でしたね』
『……』
『今日は天気が素晴らしいので、気分転換にでもこのパルデアの自然豊かな美しい景色をお見せしたいところなのですが……残念ながらあなたの立場上それは難しく……』
『……』
『代わりに、この私がこれまで目にしてきたパルデアの風景の移り変わりでもお話いたしましょうか。昔と今では随分と景色が様変わりしたもので……。ああ、本日はぜひ横になったまま、安静になさって』



…………。
空高く舞い上がり、上空から見下げたパルデアの景色は、大層美しいものでした。あの方が絶賛していた外の風景をこの目で見た時、まさしく世界がガラリと変わるようでした。


『ごきげんよう、私の 𝕬𝕸𝕺𝕽愛しい子。あなたのような存在が今のパルデアで生まれたこと……たとえ科学の進歩のために利用された結果だとしても、私は誰よりも祝福いたします』


…………。
なぜ、私は今になってあの方の声を思い出してしまうのでしょうか。


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