02

althaea0rosea

今日はチリさんの家に初めて入った日でもあり、そして「あれ?私ってべつにタチもいけるくない?」と自覚した日でもある。

「ほんまに大丈夫なん……?うちのことはどうでもええけど、自分に無理させるのだけはほんまに嫌やねん」
「それ、まるごとお返ししますよ。ていうか、私全然無理してません!もともとそっちの方にも興味があったので……後ろめたさとか、考えないでくださいね」
「あんたほんま……ええ子やな」

さて、私が持っている性の知識といえば、ベッドで寝てたら男の子が勝手に色々リードしてくれるっていう、なんというかものすごく無責任なものだった。実際、興味がなかったのだ。実践もなかったし。
けれど、チリさんとお付き合いを初めてからは自然と女の子同士のえっちについて考えるようになり、密かにお勉強をしていたのである。……えっちなビデオで。

「ゆっくり、やっていきましょう」
「せやな……」

ビデオの中で、はだかの女の子の上に乗っていた、いわゆるタチの女の子。
自分の体もとってもえっちなのに、使っていたのはほとんど指だけで、自分だけ服を着ていたし、声を出して喘ぐネコの女の子を見て、楽しそうに笑ってた。

「自分で触ったこと……ありますか?」
「まあ、少しは」
「わたしも。……チリさんのこと、考えながら、してました」
「……もう始まってるんか?これ」

は、始まってますけど!?
チリさんのシャツを脱がそうとする手を止めて見上げたら、既に恥ずかしそうな顔をしているから、こっちまで恥ずかしくなってきた。やめて、そのかお。

「脱がしますよ」
「……チリちゃんも、脱がしたほうがええの?」
「うーんと、……好きにしたらいいと思います。嫌がらないなら、なんでもありです。たぶん、そういうものです」
「じゃあ脱がす」

は、はい。シャツの裾を掴まれたので、両腕を上にあげてバンザイした。そのまま豪快に脱がそうとするチリさん。でも一定のところまであげたあと、すぐに元に戻された。え?
チリさん、めっちゃ驚いてる。

「ノーブラやんけ!?」
「いつも夜はつけてなくて……」
「はぁ、ビビった……そうなんや、自分大きいのに。ああそか、風呂上がりでタオル首からかけとったから、気づかんかったわ……」
「チリさんは、してるんですか?」
「いや、めんどいから直に着とる」
「じゃあおあいこじゃないですか」

なんなんですか、今の会話。二人しておもしろおかしく笑いながら、気を取り直して下着以外の服を脱がしていく。
綺麗な体……暗い中の間接照明の光が、余計に色っぽい雰囲気を演出してる。色んなところが私より長くて細くて……布を無くして恥じらうチリさんが可愛くて、いちいち抱きしめたくなる。

「チリさん、かわいいですね」
「……あんたも」
「えへへ。抱きしてもいいですか?」

コクリと頷くチリさん。距離を縮めて背中に腕をまわすと、チリさんも同じように抱きしめ返してくれた。
肌と肌が触れ合うハグは、心が安らぐってどっかで聞いた。実際、チリさんは温かくてすべすべしてて、ずっとこうしていたい……。

「……なぁ、こないな時くらい、敬語やなくてええのに。ていうか、もう外におる時も気にせんよ」
「ふふ、そうですか?でも、敬語にも外すタイミングっていうものがあるんですよ」
「なんや、それ」
「今にわかります」

首を傾げるチリさんを見つめて、キスをした。いつも人に隠れてこっそりしていることも、今なら人目を気にせず好きなだけ楽しめる。
いつも、チリさんの方から「しよ」なんて言われて廊下の隅に連れ込まれることが多かったから、私からするのは新鮮だった。
本当は……ずっとこうして欲しかったんだろうな。目を閉じて私からのキスに精一杯応えてくれる。そんなチリさんが、かわいい。

「ん……、こそばゆい……」

頭を撫でたり、ピアスだらけの耳を触りながら……片手はチリさんと手を繋いで、ぴったりくっついて、しばらくそうして触れるだけのキスをし続けた。

それから、だんだん手の位置を変えて、チリさんの小さくて可愛い胸にぴたっと手を添える。優しい手つきで周辺を撫でたら、それだけで肩が震え、体をくねらせている。
両手とも同じように添えて、だんだん中心に近づくように親指でなぞっていく。そしたら、チリさんは私の腕を弱々しく掴んできた。

「……はぁ、なんか、変な感じ、する……えぐい緊張しとる……うち、だけ?」
「私だってそうですよ。……嫌になったらすぐ言ってくださいね」

言いながら、だんだんとぷっくり浮き出てきた先端を指でつまんだ。優しく優しく。
人間はみんな弱いところだと分かっているから、とても慎重になってしまうけれど、くりくりとほぐす様子をチリさんがじっと見下ろしながらところどころ息を漏らすから、ちゃんと感じてくれてるって分かって、嬉しい。

「……ん、……っ……」
「チリさんの声、かわいい」
「……」

口、閉じちゃった。褒めたとたんに。
まあ私も慣れたように触っているけど、内心はド緊張ものだったから、今は愛撫に集中することにする。
うわぁ、そいえば自分もほぼ裸なんじゃん。そう思ったら急に恥ずかしくなって、手の動きがしどろもどろになる。
それをごまかしたくて、了承も得ずにチリさんの体を押し倒した。「おわぁっ」とかわいい声でびっくりするチリさんの上に覆いかぶさり、突然のいたずらの言い訳というか言い逃れをする私。

「な、なんや急に?」
「き……キスを、します」
「はっ?ええ、けど……」

キスならさっきもやったやろ?……という目をしたチリさんに少しずつ顔を近づけて、口付けた。
唇ではなく……胴体に。肩や、胸や、お腹にキスをする時は顔が見られないから、なんとなく気が楽かも……って思ってのことだったけど、やってることがふつうにえろい行為なことに気がついて、どちらにせよ体が熱くなる。

「そ、……そっちかい……」
「ふふっ、あはは。期待、したんですか?」
「べつに……」

こんな時でもちゃんとツッコミを入れてくれるチリさんに思わず吹き出してしまう私。
その流れで、さっき指で馴らした胸の突起を思い切って口に含んだら、上からまた「ひゃあっ」と驚く声がした。反応がいちいちかわいくて、もっともっといたずらしたくなる……。

「あー……っ、それ、やばいわぁ……」

ちゅ、と軽く吸い付いたり、先端で舌をちょっと動かすと、私の頭に手を置いて、甘い声を出すチリさん。たしか、こうやってたっけな……とビデオで見たことを思い出しながら、口をつけていない方の胸はしっかりと手でかわいがった。

「……ん、……ん、……」

そんな感じで身体中にいっぱいキスをしながら、同じように手で太ももの際どいところを撫で続ける。ふとチラリとチリさんを盗み見れば、とっくにとろけた顔をしてゆっくりと瞬きをしている。
かわいい……。それに、早く次の段階を待ち望んでいるように見えるのは、私の思い込み?いやぁ……そんなこと、ないよね?そろそろ……いいかな、いい、よね?
そう判断した手が、そっと下着の上からチリさんの秘部に触れた。

「……あ……、そ、そこ……っ」

ぬれてる。
下着越しにも分かるくらい、少し触れただけで分かるくらい。ぬれてる。えっちだ……。

「かわいい……」

指を上下に動かすと、チリさんの綺麗な足が膝のところで折れ曲がって、間に座っていた私はしっかり挟み込まれてしまった。
そんな弱々しい顔で抵抗しても、意味ないですよ。と、笑いかけながら、お構い無しに片手で触り続けてみる。
さりげなく足を押さえつけるように腕を広げて、チリさんのあられもないところを指の腹でこすったり、たまに手のひら全体で撫でつけたり。

「……っ、その手つき……いややわぁ……」
「嫌、ですか?」
「…………う、い、いややないけど……」
「も〜。どっちなんですか。かわいい」

私の手で体を熱くするチリさんを見ていると、もう緊張を通り越して、私は勢いのままに行動していた。もちろん優しくするのは忘れずに。
はぁ、と自分でも息が漏れる。しばらくその柔らかい感触を楽しんでから、尋ねた。

「……いい、ですか?もう……」

これ、脱がしても。

口を閉じまま渋るチリさん。しばらく返事を待ったけど、沈黙したままだったから、都合よく捉えてショーツの横に指を引っかけた。

「……脱がしますよ」
「……あ〜……う〜……」

自分の顔を腕で覆い、変な声を出すチリさん。恥ずかしがっているだけで、嫌がっているわけではないようだ。
ぬ、脱がすぞ〜……。両サイドにひっかけた指をで少しずつずらしていく。あ、この……脚の中途半端な位置で止まった、どこも隠せてない下着、えっちだ……と思いながら、片方ずつ脚を抜いてベッドの端にそっと置いた。

「チリさん、……はだかんぼ」
「……そゆことは、言わんで、ええねん……」

今の私、たぶんすごい顔してる。
チリさんが自分の目を隠しててよかった……と思いながら、すぐに閉じてしまった両足をぐいっと広げて、さっきのように間に入った。

チリさんの……これまで人前に晒したことのないというそこは、きれいで、ぷっくりしていて、見てわかるほど濡れている。……同時に、自分の同じところも同じくらい濡れている感覚に気づく。
今の私も、下脱いだらやばい。

「触っても、いいですか?」
「ん……どんと、来や……」

言葉だけでは強がるチリさんに微笑み、おそるおそる手を伸ばして、触れた。

「ひゃ、っ……」
「……かわいい……」

当然、布地越しの感触とは全く別物で、愛液のぬめりとした質感も相まって、触っている私の方がぞわりと身震いしてしまった。

「やわらかいです、チリさんのここ……」
「ぅ、……そ、そう……っ?」
「痛く、ないですか?」
「ん……いたくは、ないん……やけど、やばい……」

わたしもやばい。自分のを触る時ときは違って、自分が直接感じることはできないのに、なんでか気持ちよくなってる。
だって、チリさんが私の指で気持ちよさそうにしていると、嬉しいのだ。二本の指を滑らせ、十分に慣らしていく。ぬち、ぬち。わざと音を立てているわけじゃないのに、ぬれぬれのせいでいやらしい音が鳴る。えっちなチリさん。

「……はぁ、っ、……これ、いつまで、続くん……っ?」
「んと……焦らしてるつもりはないんですけど、私も初めてだから、分かんなくて……。逐一教えてください、チリさんは、どうしてほしいですか?」
「そ、そんなん……、言葉じゃ上手く、出てこんわ……っ」

なんか、ちょっと余裕そうだ。

「じゃあ、……もう、ここ、触りますよ」

もっと、強い何かを欲しがっているように見えたから、今までは避けていた上部につぅ、と指を滑らせた。粘液をたっぷりすくいあげるように……そして……遂に、指が蕾に触れると、チリさんの足が少し持ち上がって「あ、あ……っ」と分かりやすく声を出す。

「そこ……っ、あかん〜〜〜……」
「きもちいい、ですか?」
「……う、……っ……き、きもちぃ、」

チリさんが若干上半身を起こしたことで、涙目になった赤い顔が視界に入る。か、かわいい……。かわいすぎてはげそう……。私自身恥ずかしい気持ちもあったけど、そうも言っていられなくなった。
そのかわいい表情をもっと近くでよく見ようと、私は手は離さないようにしたまま、膝立ちでよいしょ、よいしょとチリさんの横側に移動した。お顔、見せてくださいな……。そしたら予想通りと言うべきか、腕で顔を隠されてしまった。

「な、なんで近寄って……くんねん……っ、恥ずいやん……、あ、……っ」
「私は……なんかもう、恥ずかしい気持ちとかなくなっちゃいました。えへへ」
「そ、そんなんズル……っ、んぁ、……」

だって、チリさんがあんまりにも顔を赤くして恥ずかしがってるから。
枕を握りしめ、大きく口を開けて、はぁはぁ息を切らしながら、私の指の動きに気持ちよさそうに体を縮める彼女は、どこからどう見てもおんなのこだった。
かわいい。本当に、なんで、こんなにかわいいの。
普段のキリッとした目つきで仕事をこなす四天王の面影なんて、今はもうどこにもない。
私が……こうしたのだ。私が彼女をこうしました。チリさんに触れられる私だけの特権だ。

「どう、ですか?ここ、とか……」
「そ、そこ……、きもち、……それ、もっとしてて……っ」
「ふふ、おねだり、かわいい」
「……っ、はぁ、はぁ……ん、……」
「チリさん、かわいい。かわいい……」

こんなの、こんなの、写真に撮っていつでも見られるようにしたい……!
でも……初回からそんなことをしたらさすがに怒られそうなので、自分勝手な欲望は押さえつけて、ただひたすらチリさんのいやらしいところを愛撫する。
場所を移動したので、横から胸や、肩や……今度はちゃんと顔にも。ちう、とキスを落としていく。

「ぁ、っ……あぅ……も、だめや……っ」
「いきそう……ですか?」
「ん、……っ……も、いく……っ」

顔を隠すのとは反対の手で、私の方へ手を伸ばしてくる。その手を恋人繋ぎでしっかりと握って、同じ速度で手を動かし続けた。

「チリさん、好きです。すき、すき」

行為に及ぶ前に抱いていた、私にできるかな、という不安はもう無いに等しい。
私の手で初めていかされる瞬間、チリさんは……私の名前を呼んでくれた。

「あ……っ〜〜〜!……っぁ、あ……」


指を離し、ビクビク震える体を優しく撫でつける。達する瞬間に力強く握られた手の力は、すぐに弱々しいものに変わった。

「はぁ、はぁ…………、いって、しもた」
「チリさん、かわいい〜〜〜〜!!!」

大きく息を切らすチリさんに、私はガバッと抱きついて「ん〜〜〜っ」と頬ずりした。かわいい、かわいい。愛おしい気持ちがだいばくはつしそうだ。チリさんがいく瞬間、私ちゃあんと見ちゃったもんね。
そんな私に「なはは……」と笑うチリさん。そのままネッコアラみたいに抱きしめてひっついた。もう離したくなくなっちゃう。
しばらくそのまま、チリさんが落ち着くまで寄り添いあった。

「もうこの辺にします?それとも……」

数分経って。チリさんの顎の下をつつつ、と撫でながら声をかけた。耳元で、わざと、吐息混じりに……。

「もっと……してほしい?」

昨日までの私なら、恥ずかしくて絶対にこんなことできなかったけれど。
もう、私は“こっち側”に立てるってこと、ある意味チリさんに分からせられてしまったようだ。
チリさんは途端に顔を真っ赤にしてきゃーきゃー騒ぎ出した。

「ず、ズル〜〜〜!なんや、その、聞き方っ……そんなん、自分、アレやんっ、あれ、もうっ」
「どっちなんですか?」
「……もっとして、ほしい、デスワ」
「ふふ、わかりました!もう、チリさんかわいいんだから!お願い聞いてあげるしかないじゃないですか!」

私の問いかけに両手で顔を隠してしまうチリさんの頭をよしよしと撫でて、起き上がった。もうここまで来れば羞恥心も薄れてきたようで、すぐに「あんたには適わへんわ……」と脱力して私の次の行動を待っていた。
チリさんは一回気を許したら、急に警戒を解いて懐に入れてくれるようになるんだよな。かわいいな……。

「なか、いれたことあります?」
「……指なら、まあ」
「じゃあ、一本だけ……いいですか?チリさんが良くなるとこ、もっと見たい」
「な、なんや自分、ノリノリやんけ……実はほんまに才能あるんやないの……」
「そうですか?でも、実際すごく楽しいです。チリさん、かわいいんだもん」

一度体勢を整えようと、立ち上がろうとしたところで。
ふわふわした気分のままでいたから、おっとっと、よろけてしまった。ちょうどチリさんの腕と体の間に足をついたからよかったけど、そこにはチリさんのながーい髪の毛がチラ見えしていて、思いっきり踏みつけてしまった。

「あ、チリさんの髪の毛ふんじゃった」

可愛いネコちゃん、ふんじゃった。

「痛かったですか?」
「ううん。へいきや」
「よかった……ふふっ」
「何わろてんねん……」
「私、今……すっごい楽しくて」

気を取り直して、初夜からさっそく第二ラウンドに入ろうとする私たち。明日のことなんて考えてない。今が、すごく幸せだから。

眠りにつく前、チリさんのなつき度はたぶん最上級に達していた。

「……な、もっと、かわいがって。チリちゃん、あんたになら、なにされてもええ。……好きやねん、他の誰よりも」

私がチリさんを大好きなように……チリさんも私のことを想ってくれている。こんなに顔がニヤけることがありますか?
心の底からそう実感出来る、そんな夜だった。

「もちろん!たくさんかわいがってあげます。チリさん、かわいい。かわいい、かわいい、かわいい、かわいい」
「そ、そない一度に言わんでも……か、勘弁してぇや……」



さっき、ネコ同士が集まったらどうなるって言ったっけ?あの質問、少し正確性が足りなかったから修正させて下さい。

正しくは、

Q.バリネコとネコ寄りのタチが集まったらどうなる?……でした。

A.なーんだ、ハッピーエンドじゃない!


02
- back -
top