クリケットの試合が催されるコートの周囲には、試合を行う寮のテントのほかにブレイク・ティータイム・スペースがあり、選手や父兄達のために軽食やドリンクが提供されている。設置されたテーブルの上にはサンドイッチや果物、ケーキにクッキー、多種多様のデザートが盛られ飲み物には果汁一〇〇%の搾りたてのジュース。紅茶の茶葉は七種類も用意されている。屋外社交界場の形式を維持し、なんとかこのスポーツ・ウィークに参加しようとする貴族もいる。理由は無論――上級貴族の参加者が多いこと、とくにシュナイゼルが在学中であれば他の皇族が参加する可能性が高まるからだった。
その読み通りと貴族達は、第二皇女と第三皇女の姿を遠巻きに見て来てよかったと思い、なんとかお近づきになろうとしている者が何人かいた。そんな思惑を裏切るようにまだ年若い第二皇女コーネリア、第三皇女ユーフェミアは二人の母を伴い東側の観覧席に最も近いティータイムスペースに身を寄せていた。
「このジャムクッキー、とっても美味しい!」
「ユフィ、あんまり食べすぎると夕食が入らなくなる」
「いやです、おねえさま。食いしん坊は背だって伸びたのよ! ぐんぐん!」
「食いしん坊かどうかは自分でいうことではないぞ」
観客席の一角。絹張りのひさしの下。立派な金糸の髪を纏め上げ扇子を片手に籐椅子に優雅に腰掛けている。広大なコートを眺める南欧の空色を映した双眸がこの世界に血潮をもって産み落とした息子に注がれていた。その姿だけでは白百合のごとく純潔で洗練されている。
そこへ鮮やかなマゼンダの髪を持つ貴婦人が日傘を広げ歩み寄る。どちらも美貌の女性であり若く乙女のように若々しいが、ともに帝国の皇子や皇女を擁する皇妃であった。マゼンダの貴婦人は白百合の貴婦人をみて「あら珍しいこと」と楚々として言った。皇子を出産後、社交界にはめっきり姿を現さなくなった。輿入れした皇宮より実家のある南部・ロングアイランドに長居しっぱなしで戻らず、悠々自適に暮らしている皇妃は時に敵対心を分かち合い、今は同じ子持ちである。貴族階級出身も相まって一定のステータスを保持する者同士、それ以上の争いは無用だと手紙をやり取りする仲に落ち着いた。
白百合の貴婦人は社交界嫌いなのに、どうしてこんなところへ? と小さな嫌味を与えてマゼンダの貴婦人は彼女の隣の籐椅子に腰を降ろしたのだった。
母親の呼び寄せで二人の皇女が白百合の貴婦人のもとへ集い、ドレスの裾を持ち上げた。
「ごきげんよう。さ、ユフィも」
「ごきげんよう!」
「ごきげんよう。コーネリア様、ユーフェミア様。元気いっぱいでよろしいですこと」
白百合の貴婦人は愛の女神が絵画から抜け出てきたのかと見紛うほど人々を魅了する微笑を浮かべた。
挨拶を済ませたふたりの皇女はまた食事の並んだテーブルの方へ駆けていく。
「殿下のご参観にいらっしゃるなんて思いませんでしたわ。貴女にそのような思いやりが残っているだなんて」
「ここは屋外ですよ。慎みを覚えるべきです。……わたくしも一度くらいは母親らしいことをしようと思ったのですよ、いけませんか?」
パコーンと軽やかな打球音が木霊する。
白百合の貴婦人はオペラグラスを持ち上げコートを観察する。コート内中央のピッチには、ボウラーの代わりに設置された奇々怪々な機械が鎮座し、ウィケットに向かって投球するが、その球はランダムで速度や角度が切り替わるらしい。そんな中で打者がウィケットを防御しつつバットを振るには絶妙なセンスが求められるが、見事それを打ち返す選手がケント寮にはいるらしい。
「あら」
「よい選手が相手方にいますわね」
「……そうね。……少々マナーが悪いご様子ですが」
ゲームは打者によって一時中断を迎えている。バウンダリー前でボールがバウンドしたかそうでないか――ピッチ内で審判に掛け合っている少年は納得がいかないのか持っていたバットを持ち上げた。それをテントから上級生が飛び出してきて押さえつけている。
守備についているノーサンブリエ寮の最も外側のライン――バウンダリーに近い野手を務めるシュナイゼルが審判に進言する。
「今のは六点だよ」
「そんなわけあるか! 四点! 審判、審判! 適切な判定を! カメラ審査!」
白百合の貴婦人は弾けるように笑った。
「ふふっ……うふふふ……!」
「なにがそんなに面白いの!」
「ご覧になったでしょ? だってあの彼、打者ですのよ? 攻撃側が……フェアーにうるさいのよ! ご自分の打った球が正確かどうか……ッふふ!」
「ええっ? どなた?」
マゼンダの貴婦人が白百合の貴婦人からオペラグラスを拝借する。
「今、審判を挟んで殿下と口論になっていますわ。あんなに単純で攻撃側が有利なルールに甘んじることを許さないなんて潔癖ね」
「殿下は受け流しておられるんじゃありません?」
「べらべらと口数多く物申される方ではございません。めずらしい、殿下が愉快でいらっしゃるわ」
マゼンダの貴婦人は――それは母親の貴女に対してだからでしょうに、と思った。
息子の子供らしい姿をみて、白百合の貴婦人はかつて自身に辱めを与えた一人の少女の顔を思い出していた。
「……ふふ」
「なあに、気色の悪いお方」
「わたくし、婚約には反対しておりましたのよ。殿下が無理を先に通すものでそうなってしまったの。親不孝者でしょう? ……その後、あの方にお会いした時なんてもう。……実に負けん気で、強情で、このわたくしにはっきりと物申す子だったので意地悪をしてしまいましたわ」
「まあ! なんていけ好かない姑だこと。私達にはおりませんから気が楽で結構ですけれど、あなたが姑なら婚約を破棄するところですわ」
白百合の貴婦人は、躍起になって点数訂正をさせる金髪の少年とその隣でビデオ判定をチェックする息子のシュナイゼルをオペラグラス越しに眺め、小さく笑った。思い出されるのは六年前、まだウィルゴ宮で暮らしていた頃。婚約後の挨拶にカストラリアから王女が訪れた時のことだ。
知恵の回る王女が年下のシュナイゼルを唆したのではないかと宮廷の者達は噂した。儀礼的な晩餐を共にし、皇妃に辱めを与えた娘。一見大人びていて、その子供らしからぬ態度が息子によく似ていた。悪く言えば、娘時代の自身に似ていたから同族嫌悪が芽生え、要らぬ一言二言をかけた。
――『あなたの業績は存じていますよ。ティラナ王女。その齢にして博士号を三つもお持ちだとか』
――『おぼえめでたく恐縮でございます』
――『……素晴らしい才知に恵まれておりますけれど、将来の君主には持て余すものでございましょう?』
――『ふふ。無知蒙昧な王では民が飢えて困窮してしまいますわ』
一瞬、テーブルを挟んでティラナ王女の向こうで食事をするシュナイゼルが制止するかと視線を投げかけてきた。だが王女はかえって首を傾げ、にっこりと笑みを深める。
ウィルゴ宮の食堂内は外が暖かく感じるほど凍りついた。この宮の主人に口堪えは誰も恐れ多くてしない暗黙の了解を無知≠ナあったから突破したのだ。なおも王女のお喋りは止まない。
――『持て余すほどあっても困りません。余った才知は、余ったパンを分け与えるように民に施せます。それが私の目指す君主の在り方です。民の信用とパンを吸い上げてばかりいると太って動けなくなってしまいますものね! 民が助けてと希う時、手を差し伸べられない者は首を刎ねられてしまうでしょ?』
――『ティラナ。デザートにオレンジムースがあるよ』
――『ほんとうに?』
シュナイゼルは母の機嫌の悪さを察知して、話題を変えた。
――よく口の回る娘ですこと。きっと親が甘やかして育てたのね。誰もがみな、自分の話を聞いてくれると信じている幼さ。
それと同時に、このウィルゴ宮を支配する一人の皇妃に羞恥心を与える。この辱めはアカデミーで風邪をひいて首席を取り損ねた時よりも酷かった。
――『私、貴女さまの論文を読んだのです。……得意分野ではないから難しくて』
――『わたくしの解説を賜りたいとおっしゃるのね?』
――『ぜひに』
――『貴女にはわからないわ』
今にして思えばあまりに大人げのない一言だとわかる。その言葉は、誰よりも自分自身が言われたくない言葉なのだから。その時の、王女の衝撃を受けた表情は見ものだった。泣き出すこともせず、静かに食事に戻り、デザートのオレンジムースを震えを誤魔化すように手早く口に詰め込んで。
翌日、女官長がシュナイゼルが王女の客室で寝起きをしていたという話といささか早熟過ぎるのでは?と懸念を零したが、頭脳がそれほど発達しているのであれば関心事もまた多岐に渡るのだろう。シュナイゼルに改めて問い質せば、『ただ一緒に眠っただけですよ』と微笑んだ。
――『あちらの慣例に従い、殿下は十六までお待ち下さいませね』
――『ご承知いただけるのですか? 母上』
シュナイゼル自身から婚約をすると国際通話で報を入れた時、母親が反対したにもよらず、その数日後、婚姻に纏わる条約の署名をした。あまりにも早すぎる決断。未成年皇族にはその父母の承認が必要であり慣例を破ったことはブリタニアの宮中全体を震撼させた。皇帝陛下と謁見し、彼も反対するだろうと思っていたがその時、皇妃は自分がはじめから蚊帳の外に置かれていたのを知った。
――『シュナイゼルとは話がついておる』
――『陛下! あの子はなんと。時期尚早にございます!』
――『無為であるがよい。……次の者……』
何か重要な事柄を見落としている。それが何かは、息子が王女を挨拶に連れてブリタニアへ帰ってきたその次の朝、腑に落ちた。シュナイゼルは父よりも母によく似ている。母親として誇らしく自尊心を高めた。聡明で美しいもの、満ち足りたもの、すべてが息子に継承された。――無自覚だった渇望さえも。
――『シュナイゼル! アルカリ性の土壌と酸性の土壌の境目はどこ?』
庭園の中から王女がよく通る声でシュナイゼルを呼んだ。シュナイゼルは光を浴びた優れた金髪を揺らし、母親から一瞬視線を声の方に向けた。
――『農作物の土壌=Aその性質と栽培方法の分類には、色素は一定化するとあったわ……この国の土壌はプレーリー土で最適なphは六.〇〜六.五の弱酸性から中性寄りで考えるのだけど、我が国では山がちだし栽培効率を考えると……』
――『すみません、母上。……行かないと』
瞬間、明けの明星に住む瞳が星が透けて見えた。年相応にあんな風に輝きを宿したことがあっただろうか。
回廊から庭園に延びる白亜の階段を駆け下り、生け垣の迷路に迷う王女を探しに出る。少年の母親は柱の影、生け垣より高い位置から彼らの様子を見下ろしていた。
――『ティラナ、こっちだよ』
――『ああ! よかった。考え込んじゃってたらいなくなちゃって。一生お庭暮らしになるかと思った!』
ドレスの裾を持ち上げて、ティラナ王女がいそいそとシュナイゼルのもとへゆく。王女より小さな背丈の少年の辛苦を知らぬ柔い手が、アルコール消毒で荒れ、中指第一関節にマメを持つ彼女の手を握る。
――『貴女が国に帰れないとみんなが困ってしまうね』
――『それじゃあ、このお庭に国を作らないと!』
――『みんな入り切らないよ』
――『小人になればいいのよ』
――『その発明をしている間にきみが死んじゃうよ』
――『あなたが国を支えてくれたら、その間に発明するわ』
他愛ないのに途切れることのない、脈々と続く会話。無駄な会話。無遠慮で質の低い話。非効率的で無意味なもの。でもどうしてか、それを羨ましいと感じている。性や愛、権力勾配、忖度、見栄、イニシアチブ――。貴族に生まれ落ちれば――この帝国に生まれ落ちたらば逃れることのできないしがらみ。様々なものに勝利し安定を築き上げたとて、それらに疲れ果てて感情を封じ込めていく。
皇妃は彼を満たしてこられただろうか。与えられるものはなんでも与えてきたつもりだった。彼がもし、母親と同じ渇望を持つならばいったいなにが欲しいだろう。
冴え渡る怜悧な瞳を王女へ向ける。
シュナイゼルの案内によって酸性とアルカリ性の土壌の境目の場に立ち、隠し持っていた試験管に採取していく。彼は黙ってその作業を見下ろしていたが、やがて、しゃがみ込んだ。生まれ持って貴族であるのに、まだ彼女は退屈や停滞というものを知らない。またそれが起き得ることはないだろう。先の話しぶりから少女の目的はおよそカストラリア王国の食料自給率に関する問題を解決したいのだとわかった。中立国である以上、他国の輸入に頼り切りでは成り立たないからだ。放蕩に耽る我が国の貴族達に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいほどだ。
その時、彼が何を思い、何を感じて道を決したのか、その輪郭が捉えられた。
――剥き出しの熱い欲望。純然たる善意の情熱。
言い換えれば、もっと単純な感情。皇妃にはなかったもの。そして、皇紀となってから捨てざるを得なかったものたち。
――花婿衣装よりも先に喪服を纏ったシュナイゼルは、カストラリア・リダニウム国際空港の控室で彼にしては重い口ぶりで言った。
――『王女には先見の明があります。……王冠を支えるために、私に称号を約束した』
淡く柔らかな頬――不釣り合いなほど老成した眼差しが母親に向けられる。王女は一度に両親を喪い激しいショックと自身も火災で重傷を負ったことから国葬の喪主さえも務められずにいる。――また国情を左右する状況であることから箝口令が敷かれたが、王位継承権第一位の王女が危篤状態であると知られるのは時間の問題だった。その次に王位継承権第二位の叔父を立てるかどうかの話し合いで、王宮に救援に向かった首相も火災で死亡し空位であることからシュナイゼルを王女の摂政とし叔父のベルケスが首相の座を埋めることと相成った。
――『わたくしにできることは、なにかございますか?』
母親として何ができるか、そんなことはわかりきっていた。カストラリアの問題に口を挟めるのはシュナイゼルだけであることも。わかりきっていながら、本当にらしくない心配をして。彼ははじめて心の底から微笑んでいるように見えた。
――『あなたには、何もありませんよ。ご心配なく、母上。――過不足なく健やかにお過ごしください』
早い巣立ちだった。寂しさはなかった。
――聡明な王女は太陽の熱に焦がれて飛び去ったが、その翼が溶けだしてイカロスのように墜落してしまった。
二寮は攻守交代し、ケント寮は四八点を先制した。ロイド・アスプルンド作の投球マシーンは自動で働くため、ある意味で公平なハンデ≠もたらした。ノエルは投球マシーン分の人数があぶれることを良いことにして、ブレイク・ティータイム・スペースにこっそりやって来ていた。フェアーな判定劇のせいで無駄にエネルギーを消費したからだ。たとえ有利になる判定でもなあなあで済ますのはどこか不潔で許し難く見逃せなかった。
「はぁ……お腹すいた。……ラッキー」
清潔なクロスの掛けられた長テーブルの上にはご馳走がたくさん並んでいる。果物がどっさり置かれた籠からオレンジを一玉手に取り、皮を剥こうと揉んでいると肩をバットの平たい角でコツンと叩かれた。ノーサンブリエのダローウィンだった。根に持たれているのか相変わらず彼だけはノエルに突っかかってくる。
「貴様!」
「いてっ。いてっ。痛いですって、いてっ……!」
「殿下が汗水を垂らして走っているところ優雅にスイーツを摘むとは不敬であろう! あと守備につけ! ボウラーがあぶれるからって休むな!」
ノエルはすでに始まっているゲーム、ピッチの方に目を向けるとネイビーブルーのヘルメットを被った長身の青年がクリース上を走っている。
――あの人、あんなに走れるんだ。そういえば昨日レガースの紐解いていたっけ。
剥いたオレンジを一口齧ると、背骨の真ん中あたりをバットの角で突かれる。そしてダローウィンはベルトループの部分に指を引っ掛けてぐいぐいとノエルを引っ張った。
「いてっ! このあとチェスがあってお腹空くんですよ。……あ〜! ケーキ! ケーキ!」
「知るか! 行くぞ!」
去り際になって、どうして他のテーブルにもっと美味しそうなものが並んでいるのに気づくのだろう。アップルパイや重めのミートパイ、ベリー系がふんだんにあしらわれたタルト。チョコレートケーキ。遠ざかっていく宝石に手を伸ばすと、視界の端にこの世のものとは思えないほどの天然の白金が映る。絹張りのひさしの下。籐椅子に腰掛けている貴婦人。オペラグラスを下げて、会場を一度見渡した。
「……ん? まさか……アーデリントお義母さまか……!? 皇族も観覧って……でもあの人が、授業参観に来るような親じゃ……」
姫様の代わりに婚約後の挨拶に伺った時、それはそれは酷い目にあった。ただ仲良くなりたかっただけなのに。なにがいけなかったのか、気分を害してしまったことだけはしっかり覚えている。あの時、姫様ご自身で挨拶するべきだと諫言したが、きっとシュナイゼルから母親について教えられていたに違いない。だから当日の朝になってもごねて、結局『わたし』が代理で伺ったのだった。姫様が挨拶していたら、食事中に泣き喚いていたかもしれないと思うとこれで良かったのかもしれない。
「なにブツブツ言ってるんだ?」
「なんでもないです」
ケント寮のテントまで無事強制送還されると、守備につくメンバーの一人が「アストリアス! 守備つけー!」と叫んだ。
一週間前
寮の威信をかけた頭脳戦競技の最高峰――チェス。
その試合はラウンドロビン方式で各寮内で推薦・選出された代表一名が総当たりで勝ち点を狙い首位に一〇〇〇ポイント、二位に八〇〇ポイント、三位に五〇〇ポイントが与えられる。各競技の中で期待値ともに難易度の最も高い競技となっており、例年ノーサンブリエが首位に君臨し、密かに賭けられている予想でもノーサンブリエが勝利を収めると見込まれている。
ケント寮の談話室では上級生を中心に椅子に座るノエルを取り囲み、彼の目の前に置かれた投票箱を今まさに開けるところだった。
「去年は発狂して床に転がる奴、柱に頭をぶつける奴がいた地獄の競技だが――」
「……まさか、みんな……」
ノエルの瞳が何度も左右を巡る。
投票箱の中は不透明だが、彼らの期待の眼差しがそれがYESであると教えてくれている。つまり――ノエルが代表選手であると。それならわざわざ投票せずとも構わないだろうに、これも伝統だといって形式通り執り行った。
チェス競技は七日間・全日通しで行われる試合のため、他種目にも出場していれば疲労感から本領発揮ができず番狂わせが生じやすくなるだろう。すなわち、勝利に拘るのであれば疲労度の低い二番手の人間を代表選手にあてがうほうが勝率が高い。
――それを理解しているのだろうか? 彼らは。
「ああ、言っておこう。ノーサンブリエのチェス・プレーヤーはご想像どおり、シュナイゼル殿下だ」
「……シュナイゼル……」
「そうだ。……ん? どうだ? アストリアス。いけそうか?」
グレーター監督生がシュナイゼルを餌にやる気を引き出そうとしているのがわかった。
「お言葉ですが……私がなんでもかんでもシュナイゼル憎しばかりで動いていると思わないでくださいよ」
「なに? 違うのか? おかしいな……これでいけると思ったんだけどな」
――本当のところは憎いが。
「……スポーツ・ウィークの翌日から数日、特別休暇をいただけるなら引き受けますよ。監督生」
「ほう……それでいいならお安い御用だ」
グレーター監督生は投票箱を真っ逆さまにひっくり返し、中のくじを振り落とした。無記名の票をみて、ノエルは深い溜め息をついた。
ポイント・ウィーク 最終日
「お疲れの様子だね」
「そりゃあ――もう! さっきまでラケット握ってたんですよ? 筋肉痛で痛いし、チェス盤を揺らしちゃうかも」
「不正するとペナルティがつくよ」
「ジョークですよジョーク」
ノエルはゼエハアと荒い呼吸を繰り返し、決勝戦の会場となるチャーチの外にある水飲み場で数分間、犬のように這いつくばって水を飲み続けている。
チェス最終日の決勝とあって、それまでの試合で許されていた服装と普段の制服は封印され、格式高い正装姿である。ノエルはこの暑さのなかエンペラー・スカラーの黒く長いガウンを羽織り胸には理事長から受け取ったばかりのバッジを飾っている。シュナイゼルは黒のシルクハットを抱え、同色のテイルコート、白のウエストコートにボウタイを締めている。
「他種目総嘗めとは恐れ入るよ。しかし、このチェスで首位をとれば我が寮も逆転する」
ノエルの努力の賜物でノーサンブリエは二位に転落した。ついさっき終わったばかりのテニスが効果的で、おかげで接戦を迎えるケントとノーサンブリエの最終決戦となるチェス会場には、当初想定されていた観客数を遥かに上回る人々が詰めかけていた。
選手入場用の北側の入口前で待機していると、「そういえば」とシュナイゼルは何かを思いついた。
「君のご家族は参観されないのかな」
「ん? ああ……うちは放任主義なんで、興味ないですよ自分の息子に」
――そういう人達の息子だから、成り代わり≠ェ可能だったわけだし……。
「仲は良いのかい?」
「……どうでしょう。お世辞ばっかりかな。仮面家族ですよ。……殿下はいらしているんですか?」
昨日クリケットを観戦しているのを見かけたが、あえて知らないていで尋ねることにした。
「本日もいらしているよ」
「本日ということは、先日も?」
「昨日にね。世界チェス選手権でチャンピオンになったことがある人だから、楽しみにしているんじゃないかな」
その情報は初めて知ったが、妙に腑に落ちた。婚約後の訪問で、あの氷のような人とチェスをしたいだなんて口走らなくて正解だったと思った。
北側入口の小窓が開き、審判役のプロスト教授が顔を出した。
「時間だ。準備はいいかね、ボーイズ?」
「Yes, my lord!」とノエルは答えた。隣でシュナイゼルが小さく笑った。
教会中にアナウンスが流れる。
〈これより、チェス競技最終決戦を開催いたします。観覧の皆様静粛に。選手入場――!〉
両開きの扉が開きいて管楽器の入場曲が尖塔を突き抜けるほど高らかに鳴り渡る。
ノエルは歩きながらシュナイゼルに話しかけた。
「……あなたの哲学を拝借しますよ」
「というと?」
「我々≠フ士気を高めることです」
「……なるほど、わかったよ」
木製の祭壇の上に白いレース模様のクロスを下敷きにチェス盤が載っている。ノエルとシュナイゼルはそのテーブルを挟み、中心にプロスト教授が立つとコインを甲に乗せた腕を差し出した。
「白番・黒番はコイントスにて決定いたします。勝者は先手・後手を選択できます」
プロスト教授はコルチェスター学院の紋入りの金メダルを右手で摘んで二人と観客に見せるように掲げた。
「どちらかにコールいただこう――……観客は、殿下の方にご注目されているようだから、お願いいたしましょう」
「では、殿下」とプロスト教授はどちらの面を予想するかを尋ねた。
シュナイゼルは真正面に立つノエルの瞳をみて、数瞬間を置いた。
「表で」
短く答え、プロスト教授は深く頷いた。
「それでは」とコインを宙に高く舞い上がり、金貨が煌々とステンドグラスから射し込む光に照らされながら回転。プロスト教授の手の甲に落ち、右手で覆い隠された。
観客達は息を呑み静かに見守った。
パッと右手を外し、判定が下される。
「表!」
教会中がさざめいた。シュナイゼルはふっと息を漏らし「天が味方したね」と言った。
「白黒の選択権は殿下にございます」
「では、白で」
シュナイゼルはわずかに口角を上げ、勝率五四パーセントの方を選択した。
「先手はノーサンブリエ寮からシュナイゼル殿下、後手にケント寮からノエル・アストリアスと決定となりました。それでは両者、席について!」
二人はほぼ同時に用意された椅子に座った。
対決をするテーブルの脇には長時間のプレイを想定してお菓子類と飲み物が用意されている。審判のゲームの開始を合図し、シュナイゼルがポーンを軽やかに摘み上げる。盤上に最初の一手が置かれた時、観客がざわついた。
「君って人は……駒より先にお菓子を手に取るとはね」
「失敬。私はつい先程まで球に弄ばれていましてね……今度はこの盤上で、腹の虫に弄ばれる番です。ご容赦を!」
呆れたよ、と零すシュナイゼルと、いつものノエルの調子に観客の中でも生徒達から笑いと歓声が上がった。適当ではないかというほどあっさりとノエルは黒の駒を動かし、クッキーを齧った。
「皆様には食べ過ぎと思われるでしょうね。――審判、糖分の過剰摂取はドーピングにあたりますか?」
ノエルの芝居がかった洒落にくすくすと会場に笑いが巻き起こる。審判役を務めるプロスト教授は肩を揺らし口元を押さえた。
「君のジョークも戦術の一つかな?」
「皆様方、殿下の勝利を望んでいらっしゃる。私はこの一週間、死に物狂いであまたの勝利を収めたのに、記憶の片隅にも置いてもらえないなんて哀れとは思いませんか?」
「ここはラジオ放送局じゃないよ、アストリアス君」
「顰蹙を買う覚悟でいうならば、退屈でしょう。全員が全員ルールを理解し楽しめているとは思えません」
「それでは、私達はチェスをしながら曲芸師の真似事もしなくてはいけないのかな?」
「そういうことです」
ノエルは肩を竦めて笑った。
教会の二階席は賓客席として、上流貴族と皇族の父兄の観覧席にあてがわれていた。
階下の祭壇前にて行なわれている試合の様子が、教会内外であってもモニターで中継されている。盤上と手元のみクローズアップした映像に夢中になるのは大人ばかりではなかった。母マリアンヌと異母妹のユーフェミアと共に異母兄のクロヴィスの招待を受けてコルチェスター学院に来ていたルルーシュは今年始めたばかりのチェスと憧れの異母兄シュナイゼルのチェスが見られるとあって非常に興奮していた。
一度もモニターから目を逸らさないルルーシュの隣でユーフェミアは口を開いた。
「クロヴィスお兄様がおっしゃってたの。最近のシュナイゼルお兄様、とっても楽しそうだって」
「あのシュナイゼル兄さんが?」
「そう! 声をあげて笑うんですって」
モニターには白のシュナイゼルと相手方の黒の駒が盤上の上に並んでいる。彼らの軽妙な会話の傍ら、その盤上では熾烈な争いをみせていることを人々は理解できているのだろうか。ルルーシュの異母兄は賢い人だ。チェスの手ほどきをマリアンヌから受けたばかりの頃から、何度挑んでもあのように拮抗に持ち込むことさえ出来ず悔しい思いをしているというのに。
十ほど年の差があるから負けるのは仕方のないこと――ルルーシュは年齢差がどうだとかより、実力差に年齢は関係ないと考えていたから歯ぎしりの頻度が増すばかりだった。
「あっ! ほら、楽しそう!」
ユーフェミア――ユフィの甘く愛嬌のあるソプラノが鼓膜を震わせる。ルルーシュはモニター越しではなく、肉眼で階下の二人を手摺の隙間から見下ろした。シュナイゼルと相手の黒いガウンを纏った少年はチェスと関係のない話をしている。内容は、学院の各授業に関する評価や各教官をいじったもので在学中の生徒やOBでなければわからないような内輪ネタであるため退屈だった。
ルルーシュが無言で二人を睨みつけるのでユーフェミアは不思議そうな顔で傍にいるマリアンヌに尋ねた。
「どうしたの?」
「最近チェスを覚え始めたのよ、この子。だから気になるのね」
「そうだったのね! ふたりはお喋りばかりしているけど、どちらが勝っているの?」
「ふーん……たしかに、おちゃらけてはいるけど……ちゃんと勝負になっているわ。殿下がお強いのは有名だけれど、彼も相当よ」
マリアンヌの言葉にピクリと反応を示すルルーシュ。大きなアメジストの瞳を母に向けた。
シュナイゼルの相手の少年、ノエル・アストリアスは右手に菓子、左手でプレイし、口も動きっぱなしだ。お行儀が悪いにも程があるが、それが彼の持ち味なのか人々を楽しませているからなのか誰も文句を言っていない。
ルルーシュは再びモニターに目をやる。シュナイゼルを倒す方法があるとすれば、彼の思考の軌跡を参考にすると道が拓けるかもしれない――と期待していた。
「ふむ……軽いのは口先だけではないようだ」
「褒められてる気が全くしませんね」
「褒めているよ。……実にエキセントリックだ」
階下でシュナイゼルがノエルのプレイスタイルを評したがその通りだとルルーシュは思った。ぐるぐると相手を取り囲んで、どんな駒でさえ驚きの仕掛けで判断を鈍らせるような読みにくさをしている。常に同時に様々な情報を与え、思考シミュレーションを多層化し複雑にしてしまう。真剣に考えていると始めに持っていた糸を見逃してしまう――といった難しさだ。はっきりしない気持ち悪さ、ルルーシュは苦手なタイプかもしれないと感じた。しかし、その一方でシュナイゼルとて押されているわけでもない。一つの筋道を見つければ着実に潰していく粘り強さがある。
――そして。
最後の一手を打ったところで、ノエルはふっと息を吐いた。
「……ああ、困りましたね。これ以上は動かせそうにありません」
盤面を見下ろしたシュナイゼルは、わずかに目を細める。互いの駒は睨み合い、どちらが攻めても決定打を欠く形。
「引き分けか」
彼は小さく頷き、盤上の駒から手を離した。
審判のプロスト教授の声高に響く。
「決勝戦――ドロー!」
人々の歓声と拍手が教会の中に弾ける。ノエルは席から腰を上げ、うんと軽く伸びをし、笑いながらシュナイゼルに手を差し出した。
「いやあ、殿下に勝つなど到底夢のまた夢でした。引き分けなら――光栄です」
「私もだよ」
シュナイゼルはその手を取り、観客の前でしっかりと握り返した。盤上に残った駒たちは。互いを攻めきれず並び立つ。
それはまるで、二人の関係を予感させるように――。
全日程を終えたノエルの体は伸び切ったゴムのようにくたくただった。
全種目というわけではないが、いずれの競技もノエルの戦略とフォローが入っているし、ポロ、クリケット、テニス、チェスの四種目は出突っ張りだった。空に朱色が滲む頃、教会から出るとそれまで抑えていた欠伸を解放し目を擦った。決勝戦最中に菓子をいくらか摘んだが、それで腹が膨れるわけもなく情けなくも空腹を引き摺っている。
足早に近くの大食堂へと向かう背中を、シュナイゼルが引き止めた。
「なんですか、もう試合終わったじゃないですか、お腹ぺこぺこなんですよ」
「君、試合票を貰うのを忘れているよ」
「もういいんじゃないですか? 競技は終わったんだし……」
「これを届け出て受理されれば正式に終了するよ」
「え? まだすることあるの……」
試合票とは選手がその競技に参加した証明書のことで、ここに審判のサインがなければ無効になってしまう代物である。シュナイゼルはどうやらプロスト教授のサイン入りの証明書を持ってきてくれたのだ。
ノエルは試合票を彼から受け取り、大食堂への道を歩き出した。
「まだ食事をするのかい?」
「頭を使ったらお腹が空くんですよ。今は肉が欲しい」
「大食堂に行けばゲスト用のステーキが残っていると思うよ」
有用な情報を得てさらに足が速くなるノエルのあとをシュナイゼルは追った。
「……なんでついてくるんですか? まだ何か用が? ノーサンブリエはあっちですよ。祝賀会とかあるでしょうに」
「二位に祝賀会はないよ。反省会はするかもしれない。君こそ、寮に戻ったほうがもっと美味しい料理にありつけるのでは?」
ノエルは自嘲気味に笑い飛ばした。
「今寮に戻ったら新聞部と理由のわからない学外のジャーナリストとかが出待ちしてるでしょうね。昨日それで全然寮に入れなくて」
「よかったじゃないか」
「なにも良くはないですよ」
スポーツ・ウィークの一週間、大食堂は夜遅くまで開放されている。料理も外向けに簡素なものではなく、少し凝ったものが用意されていてこの数日間は特別な気分を味わうことができた。監督生は他にもやるべき事が残っているはずだが、指摘したところで彼に立ち去る意思がないことは明らかだった。大食堂の片隅のテーブルでノエルは夕食を、シュナイゼルは紅茶とタルトを食べた。
「見事君は君自身の力で築きあげた。よく励んだね。素晴らしいよ」
「これでノーサンブリエ転寮の件は諦めていただけますか」
「ふふ。いいや?」
シュナイゼルは笑みを深め、砂糖漬けの甘いトリークルタルトを丁寧に切り分けて口へ運んだ。
「スポーツウィークの獲得点は我がノーサンブリエ寮史上、過去最低記録だったんだ」
「自慢しないでください」
「事実を言ったまでだよ。ケント寮が首位を取るのは八年ぶりかな。だから君を転寮させることができれば、今回の差を埋めることができる。ケント寮のポイント地盤は奨学生の数だからね」
「一人でも多くポイント≠引き入れたい。ということですね」
一口にしては大きすぎる赤身ステーキの一欠片をノエルは頬張った。
チェス競技の観覧を終えて護衛と共に大食堂で待つことになったユーフェミアとルルーシュは、異母兄とその相手の少年が一足早く休憩しているのを二人の席から最も近い、南側の入口の入ったところで見つけた。
ユーフェミアはつま先に力を入れて背筋をのばし、少年の肩越しに異母兄の顔を伺った。いつもと違うのは微笑みのなかでも眉が動いていることだった。
「おふたりは、お友達ね」
「ふたりが?」
「私達にはなかなか対等な方はいないから……でも、シュナイゼルお兄様はその方を見つけたのね」
「あれが……友達……?」
日頃親族ばかりに囲まれて暮らす皇宮育ちのルルーシュには、言葉として友達≠ニいうものを識っていても、家族でなければ給仕係でもない、親しい他人の距離感がどういったものなのか理解できなかった。
二人が談笑するその様子をユーフェミアはどこか期待に満ちた眼差しを向けている。その熱視線に気づいたのか、シュナイゼルは「おや」と声をあげ持っていたフォークを皿に置いて立ち上がった。
「……なんだ、ルルーシュとユフィじゃないか。そこでじっと窺っていたのかい? いじらしいね。こちらへおいで」
シュナイゼルの招待に預かり、ユーフェミアは軽快に駆け出しルルーシュの手を引いた。
「紹介するよ。私の弟と妹だ」
ノエルは口元を手早くナプキンで拭い、それを取り払って食事を一時中断した。二人の貴い子供達に向けて、恭順の意を示すために跪き、手を胸にあて頭を垂れた。
「お初にお目にかかります。ルルーシュ皇子殿下、ユーフェミア皇女殿下」
続けてシュナイゼルが二人の弟妹に向けてノエルを紹介する。
「こちらはアストリアス公爵嫡男のアーバンド伯爵だよ」
「存じ上げております。クロヴィスお兄様から聞いたもの!」
「そうかい。クロヴィスが……それでは本日もクロヴィスに案内してもらったのだろうね。楽しめたかな?」
「ええ! とっても!」
ユーフェミアは外出用に誂えられた裾の短いドレスを可憐に揺らした。そのすぐ隣で岩のように硬く微動だにしない黒髪の少年ルルーシュは、敬礼から立ち戻ったノエルを凝視している。
「……どうしたんだい、ルルーシュ」
「チェスを……一局お願いしたくて……」
「チェスを?」
シュナイゼルは身を屈めて言葉を繰り返した。
ルルーシュのお願いにノエルは近くの柱時計に目を遣った。外はまだ明るいが先ほどまでの長い決勝戦のせいですでに十八時だ。
できれば早く寮に帰って、明日の夜のフライトの準備を整えておく必要があったが、これも仕方ないと諦めることにした。
「お帰りの時刻はいつ頃でしょう」
「ユフィ。マリアンヌ皇妃もご一緒かな」
「ええ。さきほど大倉庫の方へ視察にいくとおっしゃっていました」
「では……それまで相手を頼めるかな」
ノエルが大仰に「……Yes, Your Highness!」と敬礼し了承してみせるとユーフェミアがはしゃいだ。
「ありがとう。……君、マリアンヌ皇妃にこのことを伝えて」
シュナイゼルは二人いる護衛の片方に伝言を頼んだ。黙礼し立ち去る護衛を見送り、ノエルはそっとシュナイゼルに耳打ちする。
「控室を借りますか? レクリエーション用のチェス盤がありますよ」
「……君は食事がまだ大量に残っているよ?」
「持ち込みはよろしいのではなかったですか」
「それじゃ、持っていこう。……さあ二人ともいこうか」
先導する異母兄に従い、ユーフェミアとルルーシュが歩き出す。ノエルが食事の皿とカトラリーを乗せたトレーを持ってその後ろにつくと、闘志の滾る強いアメジストの瞳が彼を振り向いた。
「絶対に手加減するなよ!」
「おっと……それは困ったな。私はもうヘトヘトなんだ」
「さっきの試合みたいに、もう一回やって!」
「同じ試合を?」
先頭を歩くシュナイゼルが口を挟む。
「ルルーシュ。彼のトークが聞きたいのかい?」
「それはいい。つまらないから」
「えー! ……ショックなんですけど」
ぴしゃりと容赦のない子供らしい鋭い感想。
字義通りの衝撃を受けるノエルにシュナイゼルは肩を揺らして笑った。