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その執事、如何様4
"待って!"
私がどれだけ焦って振り返ろうとしても、トシは両腕を掴んで前へ向かせる。
身体を捩ろうとすれば、
「っ…、」
「ほら、紅涙様。ご無理されてはなりませんよ。」
腹筋に響いて、私は動くことを諦めた。
はぁと溜め息をつけば、トシが私の耳元で楽しそうに囁く。
「そう、ジッとしてくださっていれば結構です。」
背筋が撫で上げられるような、ゾッとする感覚に身体が震えた。
後ろで小さく笑う声がする。
「それでは着替えましょうか。」
声と同時にトシの手が私の両脇から前に通される。
後ろから抱え込まれるような形で、トシは私の服のボタンを外し始めた。
1つ目、
2つ目と外れていく。
どこを見るわけでもなかったので、
ボタンが取れていく光景を見ていたが、
徐々に露になっていく自分の肌が見えて。
「っ!」
「紅涙様?」
恥ずかしくて身体を引いてしまった。
引くと言っても、後ろにはトシがいる。
つまりはトシに、より抱え込まれる形になった。
「どうされました?」
耳元で囁かれれば、なお恥ずかしい。
私が何も言わずにいれば、トシは「ジッとしててください」と言って手を進めた。
ボタンは全て外れて。
露になる肌。
昨日の今日だと肌着すらも付けていない。
というか、
いつ眠ったのかすらも分からない私を着替えさせたのは十四郎さまだったので、この状態はよく知っているはず。
服の前が全て開ききっても、
トシは中々次の動きに繋がらない。
また私に羞恥心が戻ってくる。
見上げるように振り返り、トシの顔を窺えば、
「おっと、失礼いたしました。」
わざとらしくニコリと微笑み、
服を完全に私の身体から取り払った。
ここまで堂々と脱がされてしまうと、
恥ずかしさで頭が狂いそうになる。
私はギコちない手で少しでも身体を隠そうと手を胸の辺りに持ってきた。
するとまたトシが小さく笑う。
すぐに耳元へ近付いて、
「何を隠されているのです?」
"今さら隠すもの等ないでしょう?"
そう言って、私の腰にやんわりと触れた。
「っ?!」
急な刺激に、私は息を飲み込んで。
背筋が張った。
「姿勢がよろしいですね、紅涙様。」
厭味な言い方だと用心する前に、背筋を下から上へツツツと撫でられる。
「ッん、」
「おや?どうされました?」
私を覗き込むように笑う。
顔を背ければ、顎を掴まれた。
焦点が合う前に、齧り付くようなキスをされる。
「ぅッ…んッ…」
咥内に割り入ってこようとする舌を拒むように口を開かずにいれば、睨むような顔をしてトシが放れた。
「…何だ?俺を拒んでるのか?」
どんどんトシの顔が、十四郎さまの顔へ変わっていく。
駄目だ、
このままだとまた組み敷かれてしまう。
私は慌てて顔を横に振って、壁に向かって指を差した。
「何?」
トシが機嫌悪そうにその指の先を見た。
そこにあるのは時計。
「あー…、時間ねェな。」
"空気読めよな、近藤さん"と、来客予定者にまで文句をつけた。
ふぅとトシが溜め息をついて、
「それではお着替えの続きをしましょうか。」
と執事の顔に戻った。
私はホッと頷いて、前を向きなおした。
…のも束の間。
「私の手は少し冷たいので恐縮ですが、」
"失礼します"
トシの手が私の右胸に触れた。
「ッ!!」
「紅涙様、これを付けないと服着れませんよ?」
"下着"
また厭らしく笑う。
「ですが生憎、私は付けたことがありません故、慣れぬ作業で時間が掛かると思いますが。」
そう言うや否や、
私に肩紐を通させた。
「んぅッ…」
胸を収めようと、左胸の房を撫で上げられる。
トシは楽しそうに笑う。
「とりあえず、ホックを止めてから整えましょうか。」
付け方を知らないとは思えない発言を頭の隅に聞きながら、トシが右房を撫で上げるのを耐える。
後ろでホックはすぐに付け終わって、トシの手が前に戻ってくる。
「"寄せて、上げる"でしたっけ?」
独り言なのか何か分からない言葉をトシが言って、また胸を触る。
左胸を弄るように手を入れて、房を身体の中心へと集める。
「っ…、は…ぁ…、」
「紅涙様、厭らしい息を漏らさないでくださいよ。」
そう言うと、トシは胸の中心を引っ掻いた。
「ッんッ!!」
「おっと、失礼しました。」
詫びているようには聞こえないと思ったしりから、
「っはァッ…、」
「これはまた失礼。」
再び引っ掻く。
身体が…、
マズイ。
「こっちも整えなければいけませんね。」
反対側に手を掛ける。
同じように胸を弄り、必要のない私の声も漏れてしまう。
「ッ…ァッ…ん、」
「そう言えば、紅涙様。下は履いてましたっけ?」
下?
「履かないわけにはいかないでしょう?」
いや、履いてますけど。
トシは私の返事を待たずに下半身へ手を伸ばした。
その腕を掴んで、"大丈夫"と口を象り必死に言う。
だけどトシは「確かめましょう?」と口角を上げる。
止める私の手を気にも止めずに、トシは下半身へ手を忍ばせた。
「おや、履いてましたね。」
履いてますよ!
と口を動かそうとしたら、「でも」とトシが言い、指を動かした。
それは秘部へと刺激を与えて。
「ッひ、ぁんッ、」
身体がビクリと動いた。
「濡れてますよ、紅涙様。」
落ち着いた言葉とは反対に、指は秘部を刺激する。
なぞるように上下する指が秘部を通り過ぎる度に、声を身体が反応する。
「ッ、ぁっ、…は、っ、ん、トシッ、」
「良かったですね、紅涙様。声、治ってますよ。」
「っんぁ、」
「もっと発声練習しておいた方がよさそうですね。」
指がヌルリとした感覚を伝わせる。
本当に、ダメだ。
このままだと、流されてしまう!
「っ、もう!」
私はトシの手を押さえ退けて身体を動かした。
身体の痛みはやっぱりあったけど、この現状を打破するためならと動いた。
「おや、動けるのに甘えていたのですか?」
「違います!」
「なら手伝いましょうか?」
「結構です!」
私は部屋からトシを追い出して、ようやく着替えをすることが出来た。
それから慌しく準備をして、
「紅涙ちゃ〜ん、今日も美しいねぇ君は。」
「まぁ、近藤さんったら。」
近藤さんは予定時刻にお見えになった。
それが2日後に迎えるクリスマス前の話。
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