「はい、お次は……。」
「いぇい! いってきまーす。」

「ふふ。ニノの楽しみ。」
「また、そうやってハードル上げるようなことを……。」

 嬉しそうに笑う智くんに恨めしげな視線を送り、ニノが前に出る。
 「行きますか。」と花束を左手で無造作に持ち、足を進める。

 そして、挑むように見つめるニノが、私の前に立った。


□  side N

「それでは、よーいスタート!」

 翔ちゃんの声で気持ちを切り替える。これは一種のお芝居の世界だ。
 そう考え、演じようとしてもいつもよりぎこちなくなる。
 これもあいのせいかなと、小さな笑いが零れそうになるのを堪えた。

 視線の先には挑発的な笑みを浮かべるあい。
 面白い。受けて立とうじゃないか。

 あいの宣戦布告を受け止め、静かに歩き出した。

「最近どうなの?」
「特に変わりないよ。」

「で、いつ俺のものになるって?」
「え? 突然何言ってるの?」

 俺の言葉の意味が分からないと、怪訝そうな顔をするあいに意識して不敵な笑みを浮かべる。
 早く俺のもとに堕ちておいでよ。

「だから、お前はもう俺のものでしょ?」
「……私はまだ了承してないけど。」

「だってお前、俺のこと好きじゃん。」
「なっ!」

「早く俺のものになんなよ。」

 白いシロツメクサの花束をあいへと差し出す。

(そんなシロツメクサの花言葉は、私のものになって)

 ナレーションが流れ、願いをこめた花束をあいの手に握らせた。

「和也だって、独り占めしたいくらい私のこと好きなくせに。」

 上目遣いで呟かれたあいの言葉に一瞬動けなくなる。

『カーット!』

 その声がかかるやいなや、目と目と合わせて吹き出す俺たち。

「ちょっとちょっと、さっきまで超いい雰囲気だったのに、何笑ってんのよ。」
「息止めて見入っちゃったもんね。」

「いやだって、あいが仕掛けてくるからさ。笑」
「ニノだって、わざと色気むんむんさせてたくせに。笑」

「で、カットかかって面白くなっちゃったの?」
「ん。そういうこと。」

 「ねー。」と笑い合いながら、あいと手をつないで席へ戻る。

「じゃ、ニノにここぞというとこ聞いてみようか。」

 翔ちゃんに聞かれて、自分の中の思いを口にする。さっきまでつないでた手に、あいの微かな温もりが残っていた。

「シロツメクサの花言葉にちなんでね。」
「ちなんだね。笑」

「あいを俺のものにしてやりましたよ。」
「だって、俺のこと好きじゃんって決めつけてたもんね。」

「ニノかっこよかった!」
「ふふふ。リーダーも俺のものになる?」

「もうニノのものだけど? 笑」
「あれ、和也は私のものだったはずなんだけど。笑」

 わざとらしく嫉妬したようなあいの言葉に、みんなで顔を見合わせて笑う。
 あいの腕の中では、さっきのことが夢じゃないとシロツメクサが主張する。

 控えめに、でもホントは主張したい。俺のものになってと。

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