「誰が一番たくさんすくえるかってことでいい?」

「いんじゃね?」

「じゃあ、準備はいい? よーいスタート!」

 翔くんのかけ声に、みんな一斉に水槽の中に目を遣る。
 早速ポイを水の中に沈めて、金魚を追いかけているのは、水槽の向かい側真ん中の相葉ちゃん。

「おー、こいつ速いなぁ。」

 なんて言いながら、金魚と追いかけっこをしている。
 その相葉くんの右隣の翔ちゃんは、ポイを顔の横に構え、隅っこにいる金魚を狙っているようだ。

「落ち着け、俺。ゆっくりゆっくり……。」

 と、ブツブツ言いながら確実に一匹目をすくい上げていた。
 そして相葉くんの左隣に腰を下ろしたリーダーは、腕を組んだまま水槽の中をじっと見つめている。

「うーん、コレ。」

 一言発した後、ポイを水に沈めると、一瞬で容器の中に金魚を収める早業を見せた。
 そんなリーダーの向かい側には、黙々と金魚をすくうニノ。

「こっち来なさいよ。」

 にんまりとしながら、金魚たちを自分の容器の中に迎え入れる。
 そして隣にいるあいはというと、泳ぐ金魚たちをひたすら見ていた。

 金魚すくいということを忘れてしまったかのように、ひらひらと揺れる赤に目を遣る彼女。
 少し微笑んだ口元。容器を持つ左手。全てから目が離せない。

 と、あいのポイを持った右手が動く。そっと水の中に沈めた手。
 ゆらゆら揺れる水面の向こうで、その細い手が少し歪んで幻みたいに見えた。

「よし、一匹目ゲットー!」

 その声で我に返る。視線を移すと、金魚を泳がせた容器を手に、自慢そうにこっちを見るあい。

「あ、潤くん、まだすくえてないじゃん!」
「うるせぇな。今から本気出すんだよ。」

「負けないからね!」
「言ってろ。」

 そう言って俺らは笑い合い、水面に視線を戻す。
 逃げる金魚を追いかけて掬おうとするけれど、狙った赤色は、ひらひらと踊るように逃げていく。

 それはまるで彼女のよう。
 いつだって君は、金魚の尾びれのように、優雅に華麗にするりと泳ぐ。

 けれど、それを追いかけている自分も嫌いじゃない。

「潤くん、悪い顔してるよ。」

 あいの向こうから顔を出したニノがにやりと笑う。

「追いかけるのも悪くないなと思ってね。」

 負けじと笑って返す。ニノは一瞬呆気にとられた顔をしたが、すぐに何かを企むように唇の端を上げた。

「追われる方は大変だ。」
「お前だって逃がす気ないくせに。」

 その通りというように笑いながら、俺から視線を動かしたニノは、水槽へ向き直る。
 たった一瞬、熱の籠もった瞳をあいに落として。

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