「あれ、あい、いつの間に子ども産んだの?」

 楽屋のドアを開けるととぼけた冗談を言う潤くんに迎えられた。

「なかなか帰って来ないから心配してた。で、その子どうしたの?」
「お母さんとはぐれちゃったんだって。しばらく預かることになったの」

 ニノに経緯を説明していると、後ろから翔くんの声がとんできた。

「受付の人にはちゃんと報告した?」
「もちろん。今探してくれてるよ。見つかったら、部屋に連絡くれることになってる」

 心配げな顔に頷いて返す。

「あらしだー」

 私の後ろに隠れてちょこんと顔だけ出したかいくんが、感激したように呟く。

「こんにちは。嵐だよ」

 かいくんの隣にしゃがんた相葉くんが、くしゃりとした笑顔を見せる。相葉くんの笑顔につられたかのように、かいくんも笑顔になった。

「肩車したげよっか?」

 かいくんが私の顔を伺うように見上げる。不安半分、わくわく半分ってところかな。

「肩車、して欲しい?」

 コクリと頷いた彼の手を相葉くんの手を繋げる。私より大きな手に驚いたのか、一瞬引こうとしたみたいけど相葉くんにきゅっと繋がれた。

「名前は?」

 かいくんの両脇に腕を差し込んだ相葉くんが、ゆっくりとかいくんを上に持ち上げながら聞く。

「あだち かい 五さい」

 小さい声ながらもしっかり返したかいくんに、大丈夫だよという思いを込めて笑いかけた。

「よし、かい。このお部屋をお散歩しようぜ」
「うわぁ。たかい!!」

 さっきまでの怖そうな顔はどこかへ行ってしまったかのように、相葉くんの肩につかまったかいくんは、目をキラキラさせて辺りを見回している。メンバーで一番背の高い相葉くんの上は、きっと見晴らしがいいんだろうなぁ。「ほら、これがニノのトランプだよ」なんて言いながら、楽屋内を散歩している。まるで親子みたいな光景に、私の顔も自然と笑顔になった。

「あいばくん、ありがとう!」

 空中散歩を堪能したかいくんが、満面の笑顔を相葉くんに向けた。その笑顔にやられた相葉くんが、しゃがんでかいくんをぎゅっと抱きしめ「何、これ。可愛いー! またして欲しかったら言いなよ」と繰り返していた。

「あいちゃん、あいばくんのかたぐるま、とってもたかかったよ!」

 相葉くんの抱擁から解放されたかいくんが、たったったと駆け寄って興奮気味に話し出した。少し上気した頬が子どもらしくて、泣き止んで良かったなと安堵した。

「ぼく、ニノのトランプもっと見たい」

 私の服の裾をちょんちょんと引っ張りながら、かいくんがおねだりする。その言葉にニノに目を遣るとフッと小さく笑ってくれた。それはいいよという合図だろう。かいくんと手を繋いで、ニノの座るソファーへ近づく。

「かい、マジック見たい?」

 かいくんの顔を覗き込みながら、ゆっくりと優しく問いかけるニノ。かいくんの頭が上下に何度も揺れ、楽しみだと体中が表現していた。

「じゃあ、かいの好きな数字教えて」
「えっとね、スペードのエース! かっこいいじゃん!」

 あのマークがかっこいいのかな。形? それとも音の響き? どちらにせよ、かいくんがスペードのエースを気に入っていることはよく伝わってきた。

「じゃあトランプに向かって、『スペードのエース』って呼んでみて」
「スペードのエース!」
「そんなんじゃ足りない。もっと大きな声で!」
「スペードのエース!!!!」

 何だかスポコン漫画みたいで吹き出しそうになったけど、かいくんは至って真剣だ。顔を真っ赤にして叫んでいる。

「よし。かいが呼んだから、スペードのエースが一番上に来たぞ。ほら、一番上のカードめくってみな」

 ニノの言葉に、半信半疑でカードをめくるかいくん。

「えー! さっきはハートの5だったのに!! ニノすごいね!!」
「かいが頑張ってスペードのエース呼んだからだよ」

 トランプを持って驚くかいくんの頭をくしゃりと撫でながら、ニノが優しく笑う。その顔がホントに柔らかかったから、胸の中が温かくなった。

「あいちゃん、みた? おれがよんだら、スペードのエースがきたんだよ!」

 ドヤ顔しながら私を見上げるかいくん。後ろでニノがウインクを寄こしたから、私もありがとうのウインクを返した。

「見てたよ。かいくん、すごかったねー!」

 二人で話してると、後ろから声がかけられた。

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