「では、最初のおもてなしに……」

 私が開始しようとすると、翔くんから声がかかる。

「ちょっといい?」
「もちろん。どうしたの?」

「あのさ、俺らがゲストじゃん。だから一つずつあいにして欲しいこと考えてきたの。」
「それを叶えればいいの?」

「さすがあい。察しが良いね」
「大丈夫。無茶なお願いはない……はずだから」

「そうそう。テレビで叶えられる範囲のものって決まりだったからね」
「ホント楽しみ」

 ニコニコする智くんにつられて、私まで頬が緩む。いけない。これからどんなリクエストが出されるか分からないのだから、気を引き締めなくっちゃ。

「一番は俺! お正月っぽい料理をお願いします」

 勢いよく手を挙げた翔くんがリクエストを告げた。

「はいはいっ! 俺も一緒にお願い。お正月らしいお酒が欲しい!」

 相葉くんが続く。お正月料理は元々お出ししようと思っていたから用意してある。

「かしこまりました」

 一礼して準備に取りかかる。事前に準備してあったお節料理と日本酒を、みんなが座る座卓の前に並べた。

「……うまそっ!」

 お重の蓋を開けると、翔くんがごくりと唾を飲む音がした。そこまで喜んでくれると頑張った甲斐があったなぁと嬉しくなる。

「これ、あいが作ったの?」

 智くんに問われて頷く。今日の収録は午後六時から。逆算してお昼すぎからお節作りに取りかかった。時間が限られているから出来合いのものもあるけれど、出来る範囲で手作りだ。

 紅白蒲鉾を使った松葉やちょうちょの飾り切りや、ニンジンで作ったねじり梅は上品に盛りつけた。黄色が鮮やかな伊達巻き、実は私の大好物だったりする。甘めに炊いた栗きんとんに、艶やかな黒が光る黒豆。健康長寿を願う昆布巻と、少しの苦みが美味しい田作り。お節には欠かせない数の子や海老、紅白なますにごぼうも忘れていない。

「さすがだね」

 ほぅと息をはいた潤くんが満面の笑みを浮かべた。嵐のシェフである潤くんからいただいたお褒めの言葉に、私の顔も笑顔になった。

「酒も旨そう」

 用意した日本酒のビンを凝視しながら相葉くんが零した。お節料理に合うお酒ということで、今回は日本酒を準備した。そのまま飲んで美味しい大吟醸に、ぬる燗で飲んで欲しい本醸造のお酒など数本を取りそろえた。お節料理と言っても甘いものから辛いものまで味は様々だ。だからこそ料理にあったものを飲んで欲しいと、数種類を飲み比べて欲しいと思ったのだ。

「これなら料理に合わせて選べるね」

 ニノが嬉しそうに私を見る。意図を汲んでくれた彼に、私も笑顔を返した。

「それじゃ、乾杯しますか」

 智くんの言葉に、それぞれ飲みたいお酒を用意し始める。お酌をしようとする私を智くんが隣に座らせた。

「あいも一緒にするの」
「でも、私にはおもてなしするという仕事が……」

「一緒に乾杯するのが、俺らにとって一番のおもてなし」

 はっきり言い切る智くんと、隣で頷く翔くんの微笑みに後押しされてその場に座った。渡されたお猪口を手に持つ。

「それでは、新年あけましておめでとうございます。乾杯!」

かんぱーい!

 威勢の良い声が上がり、私たちの宴が始まった。

prev / next
better tomorrow