気づいてお願い気づかないで
title by 確かに恋だった
□ side S
いつの間にか彼女を目で追ってしまっていること気付いたのはいつだろう。そんなこと、もう覚えていない。だって考える前に勝手に動いてた。こんなことは初めてで自分の気持ちに戸惑う。でも、どこかで納得している自分もいた。俺はあいが好きなんだ。認めてしまえば簡単で、とてもやるせない。
だって俺は気付いてしまった。他にも君を見ている人がいることを。そして、君が誰を見ているのかも。
俺たちの空気が変わった。そう思ったのはつい最近。ニノも松潤も、想いを隠せなくなっている。それに引きずられるようにあいの顔からも笑顔が消えていった。もちろん3人ともプロだから、仕事に私情を持ち込むことはしない。その面で、俺は彼らを信用している。
でも、ふとした瞬間に、抱えようもない大きな気持ちを持て余して苦しむ姿を見ると、どうしようもなく心が苦しくなった。
だから俺は思考を巡らせた。あいを好きな気持ちは本当だ。誓って言える。きっと誰にも負けないくらい想ってる。この腕に抱きしめたいし、ずっと離したくない。名前を付けるとしたら恋慕。心を奪われていると自覚している。
とは言っても、何を差し置いても俺のものにしたいかと問われれば、即答することはできない。だって君が誰を想っているのか知っているから。
俺の気持ちは毎日揺れ動き、その度に思い知らされる。君が大切だと。心を決めきれないまま、時間だけが悪戯に過ぎていった。
そして今、ニノからみんなへ想いが告げられた。とうとうこの時が来たかという気持ちと、ついにこの時が来てしまったかという気持ちが混じり合い、なんとも言えない感覚になった。
整理できない頭の中に、時計の音だけが大きく響く。目の端に入ったのは、固く手を握りしめるあい。
瞬間、理解する。あぁ、俺は彼女を守りたいんだと。辛そうな顔じゃなくて、ふんわりした笑顔を浮かべていて欲しい。
認識してしまえばすることは自ずと決まってくる。ニノの覚悟を問うことだ。俺だけじゃない。松潤や相葉くん、智くんだって。俺たちの想いの分まで、抱えてくれるのか。それを問うまでだ。
普段よりも鋭くなった声に怯むことなく、真っ直ぐ目を見つめ返したニノ。その様子にどこかで安堵した自分がいた。
だってあいが好きなのはニノだから。どうか素直になって。想いを通わせて。
すぐに立つことが出来ないあいの腕を引っ張り上げる。玄関先まで送って、少し距離を取る。相葉くんとあいが話しているのをボンヤリと見ていた。
あいの手を離して、相葉くんが足早に車へ向かう。真っ赤になった目は見ないふりをした。だって俺だって同じ瞳をしていると思うから。
玄関先で立ち竦む彼女の元へ足を運んだ。頬を伝う一筋の涙を、人差し指でゆっくりと拭った。
「ずっと側にいるから」
君を想うと狂おしいくらい痛む胸。流れる涙に、呆れるほど跳ね回る鼓動。気づいてお願い気づかないで。俺がこんなにも君を好きなこと。こんなにも君を愛していること。
「俺たちは6人で嵐だから。」
何よりも嵐を大切にしているあい。そんな嵐が自分のせいでぎくしゃくしていることで、ずっと胸を痛めていた。なら、それを取り除くのは俺でありたい。
「ニノとあいの関係が変わっても、俺たちの関係は変わらないよ。」
本当は変えたかった。俺が君を守りたかった。でもどうか気づかないで。君の心を守りたいから。
右手であいの頭を優しく撫でる。俯いた彼女の下に、涙が零れて染みが広がった。
最後に二回、ぽんぽんと頭を叩く。おめでとうはまだ言えないけど、幸せになってと願いをこめて。
そして言葉もなくその場を離れる。凄く情けない顔で智くんに笑いかけ、エレベーターは使わず階段を駆け下りた。
途中の踊り場で足を止める。ここまで来たらもういいかな。
今は自分のためだけに泣こう。俺にとって大切だった想い。それは手放すしかなかったのかもしれない。それでも、と食い下がる自分もいるんだ。
ホントは気づいて欲しかった。俺の気持ちに応えて欲しかった。
だからこみ上げる嗚咽に隠して唇に乗せる。
「あい、愛してる。」
いつかこの想いは形を変えるだろう。それでも今だけは君への想いに素直になった。
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