甘いだけのキスをして
title by 確かに恋だった
それはいつもの帰り道。和が運転する車が、信号に差しかかる。青のそれを、スピードを落とさずに通り過ぎた。
「ねぇ、赤信号の間にキスするのってやったことある?」
「ないなぁ。俺車運転する役、ほとんど無いし。」
「だよね。私も無いや。」
そんな他愛もないことを話ながらも、車は順調に進む。窓の外には、オフィスやビルの明かり。灯された一つ一つに、それぞれの生活があることに思いを馳せる。と、スピードが落ちると共に、右手がほんのりとした温もりに包まれた。
温もりの持ち主に目を遣ると、目はしっかり前を向いたまま。でも手から伝わるものがとても優しくて、やわやわと握り返す。そして車が完全に停止すると、小さく名前を呼ばれた。
「あい。」
返事をするために吸い込んだ息は、重ねられた和の唇の中へと消える。一度だけのキスはすぐに離れ、軽いリップ音を残して、もう一度口付けられる。時間にしてわずか2秒。
「……危ないよ。」
「だから2回で我慢してんじゃん。」
何事もなかったかのように言うと、信号を確認してゆっくりと発進する。右手の温もりが遠ざかることに、少しの寂しさを感じたことは秘密だ。
「赤信号も悪くないね。」
素直じゃない言葉に、隣で肩が震える気配がしたから、私の気持ちなんてだだ漏れなんだろうと思った。
自宅につくまで後何回信号機があるかな、なんて考えていると緩やかになるスピード。それを合図に、私たちの手は重なる。止まったことを確認すると、今度は私から口付けた。
蕩けるような微笑みを浮かべる和の耳元で囁く。
「甘いだけのキスをして。」
あの日から半月以上経ったある日。鼻歌と共に楽屋に入ってきた相葉くん。機嫌いいなぁなんて思いながら、携帯ゲームを操作する。どうぶつさんたちの要望に添って、お部屋のデザインと進めていた。
「ニノ、いいもの見せてあげよっか。」
その言葉に、みんなが相葉くんの元へ集まる気配がした。もうちょっとだけ待って欲しい。机の配置が決まらない。
「相葉さん、それどこで手に入れたの?」
「ここ来る前に事務所寄ったら、元さんが見せてくれたから写メった。」
「ニノ、知ってたの?」
「うん。よく撮れてるでしょ?」
和の言葉にたまらず顔を上げると、そこにはカラーで印刷された一枚の写真。
「何でカラーで持ってんのさ!」
「綺麗だったから、一枚貰ってきた。」
そう、それは信号待ちの間に唇を重ねる私たちの写真。ビックリしすぎて動きが止まった私を余所に、彼らの会話は続く。
「怒られなかったの?」
「自重しろとは言われた。」
「いや、それ、怒られてるから。笑」
「でも、ホント、ドラマみたい。」
智くんの言葉に共感するように、5人の目が写真へ注がれる。余りの恥ずかしさに、私はクッションへ顔を埋めた。
その夜、真新しい写真立てが我が家のリビングに飾られるようになりました。
(がっつりチューしてるね)
(でも、全然エロくないよな)
(で、何回したの?)
(と言いますと?)
(家着くまで、何回チューしたんだよ!)
(どうせ、信号で止まる度やってんだよ)
(……)
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